第五百六十話 停戦の日になりました
翌日、軍の基地は緊張に包まれていました。
停戦発効となったこの日に、帝国側が体制の立て直しの最中だとはいえ何かしてくるかもしれないという警戒感です。
そんな中、僕は朝の訓練と捕虜や怪我人の治療を終えるとレンガ作りに取り掛かりました。
治療班は、そこまで仕事がないってのもあります。
そんな僕の仕事風景を見たいって人がいました。
「わあ、凄い高度な魔法を使っているわ。それに、よく工夫して魔法を使っているわね」
昨日前線の基地にやってきたレイアースさんが、僕がレンガの元を作る光景を楽しそうに見ていました。
レンガ作りをしながらどんどんと改良したので、そこそこ難しい魔法を使っています。
でも、そこを一発で見抜くなんて流石は宮廷魔導士ですね。
そして、作ったレンガの元を寝かせている間に、今度は元々作ってあったレンガの元を焼いていきます。
シュイーン、ゴォー!
意識を集中しながら、レンガに均等に火が入るように火魔法を制御します。
無理に温度を上げても駄目だし、かといって低温でも駄目です。
こうして、レンガを焼き終えました。
「レオ君は、集中力もとても素晴らしいわ。これだけの魔力を操るなんて、並大抵の努力ではできないわ。きっと、日々の訓練の賜物なのね」
「ありがとうございます。毎日頑張っていますし、レンガ作りもとっても良い訓練になっています」
「きっと、レオ君が真面目な性格ってのもあるのね。魔法使いは自信過剰なものがいるけど、もう全く違うわ」
何だかここまで褒められるのって、とってもこそばゆいです。
でも、レイアースさんだけでなく一緒に作業していた兵も僕のことを褒めてくれました。
なんでも、僕が一生懸命にやるから負けてられないって思ったみたいです。
僕もみんなの力になれたと知って、とても嬉しかったです。
こうして、昼食までレンガ作りを頑張って、午後はゆっくりとすることにしました。
「うーん、お世話になった人に何かプレゼントあげられないかな……」
「キューン」
「ピー」
みんなで何かできないかなと思っていたら、良いものを思いつきました。
せっかくだから、ピンブローチを作ろうと思いました。
ということで、さっそく広いテーブルがある食堂で作り始めました。
ポチポチポチ。
何だかピンブローチを作るのも久々だけど、僕とシロちゃんはどんどんと作って行きます。
ユキちゃんも試しに作ってみるけど、初めてなのでとても苦戦していました。
そんな中、才能のあるものが現れました。
「ピィ!」
「わあ、ピーちゃん凄い! とっても綺麗なピンブローチができているよ」
ピーちゃんは、脚で押さえたピンにくちばしで摘んだアクセサリーを器用に通していました。
しかも、とてもデザインも素敵で、これなら十分にアクセサリーとして使えます。
ピーちゃんの作ったピンブローチにユキちゃんは悔しがっていたけど、やっていけばきっと上手になるよ。
こうして、どんどんとピンブローチを作りながら午後の時間を潰していました。
すると、兵もやってきました。
「おお、レオは面白いのを作っているな。これが、噂になった黒髪の天使様のピンブローチか」
「確か、持つと幸せになったり告白が成功するってやつだろう? こうしてみると、キチンとしたアクセサリーだな」
夕食の時間になったので食堂に兵が集まってきたけど、みんな僕たちの作ったピンブローチを手にしてしげしげと眺めていました。
女性兵もやってきて、ピンブローチをうっとりしたように見ていました。
「レオ、こいつはどうするんだ?」
「皆さんにプレゼントします。奥さんとか恋人にあげても良いと思います」
「そっか、何だか悪いな」
僕が色々と説明したら、兵もそして一緒にいた治療班の面々も喜んでいました。
そんな中、ある若い男性が僕にあるお願いをしてきました。
「レオ、俺にピンブローチの作り方を教えてくれないか。自分の作ったピンブローチで、王都にいる彼女に告白したいんだ」
「「「おおー!」」」
決意のこもった表情に、周りの人の方が盛り上がっちゃいました。
もちろん、僕も全然オッケーです。
すると、ハーデスさんもこの話に乗っかりました。
「やるなら全力でやって成果をあげろ。玉砕は駄目だぞ」
「はっ、全力で任務に取り掛かります」
兵のやる気のある表情に、ハーデスさんもとても満足そうです。
明日、自由時間に作り方を教えることになりました。
何だか、僕もやる気になっちゃったよ。
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