第二百話 遂に薬屋さんが開店です

 十分な量のポーションも出来たので、薬屋さんが開店しました。

 奥さんは生薬とかを作っているので、主に旦那さんが店頭に立っています。

 僕もシロちゃんと一緒に、接客のお手伝いをしますよ。


「いらっしゃい」

「ポーションを二つ下さい」

「はいよ、ちょっと待ってな」


 コバルトブルーレイク直轄領から別の領地に出稼ぎに行く人が現れ始めたのか、薬屋さんには主に冒険者が姿をみせています。

 ポーションの売れ行きも好調で、時々僕もポーションを作りに後ろに下がったりしています。


「中々忙しいですね」

「開店祝いってのもあるだろう。レオ君の人脈もあるぞ」


 旦那さんが僕に向けてニコリとしながら言っているけど、ちょうど守備隊員がお店に来てくれました。

 僕も知り合いの人に声をかけておいたんだけど、皆薬屋さんに来てくれてホッとしています。


「レオ君が太鼓判を押すだけあって、ポーションの品質もとても良いね」

「守備隊長との相談になるが、定期的に守備隊にもポーションなどを卸して貰えると助かる」


 おお、いきなり定期取引の話が出てきたよ。

 奥さんの作っているポーションは、効果もバッチリだもんね。


「おっ、やっているな」

「あっ、来てくれたんですね」

「薬屋が再開して嬉しいのは、俺等も同じよ」

「俺達はまだこの街にいるから、これからも顔を出すぞ」


 アマード子爵領からの旅で一緒だった冒険者も、薬屋さんに顔を出してくれました。

 とっても嬉しいなと思ったら、そんな雰囲気をぶち壊しにする人が薬屋さんの中に入ってきました。


「おう、邪魔するぜ」

「新しい店だってな」

「みかじめ料が払われていないぞ」


 如何にも不良って容姿と身なりの悪い三人組が、棍棒を片手に薬屋さんの中に入ってきました。

 三人組はニヤニヤしながら、薬屋さんの壁を棍棒でコツコツと突いていました。


「へへ、新しい店を壊されたくないだろう?」

「大人しく従った方が、お互いの為だぞ」

「なに、今までの有り金の三割を渡せば済む話だ」


 三人組はヘラヘラと笑っているけど、どうやら頭の中が空っぽの人みたいです。

 もう一度言います。

 薬屋さんには、守備隊員と屈強な冒険者が三人ずついます。

 更に旦那さんは冒険者だし、僕もシロちゃんも店頭にいます。

 この場合、反撃しても問題ないよね。


「シロちゃん、お願いね」


 シュイーン、バシッ。


 僕がちょっと呆れながらシロちゃんに頼むと、シロちゃんも触手を広げてやれやれってしながら聖魔法で不良三人組にバインドをかけました。


「なっ、何だこれは?」

「う、動けね!」

「俺等を離しやがれ!」


 あっという間に動けなくなった三人組がギャーギャー騒いで煩いけど、守備隊員が冷静に三人組を拘束しつつ応援を呼びに行きました。


「余りの馬鹿具合に、一瞬呆気に取られたな」

「何でコイツラは、俺達の存在に気が付かないのかな?」

「それは、コイツラが馬鹿だからだろうな」


 冒険者も直ぐに動ける様に準備をしていたし、実は旦那さんも何時でも飛び出せる準備をしていました。

 何れにせよ、最初からこの三人組に勝ち目はなかった事になりますね。


「くそ、俺達はあのバーサス子爵の関係者だ!」

「俺達に喧嘩を売って、タダで済むとは思うな!」

「全て潰されて、消えてなくなるがいい」


 おやおや?

 拘束された三人組が、変な事を言い出したよ。

 まさか、あのバーサス子爵の関係者?


「バーサス子爵家って、確かお家取り潰しになったはずだよね?」

「だよな。偽ポーション騒ぎもあって、とっくに無くなっていたはずだ」

「「「はっ?」」」


 僕は冒険者に確認をしたけど、バーサス子爵家は潰れているはず。

 でも、目の前の三人組は嘘だって顔をしているよ。


「この三人組は、かなり怪しいですな」

「きっちりと、問い詰める必要がありそうだな」

「「「あわわわわ……」」」


 あっ、守備隊員が三人組を睨んだら、今更になって三人組の顔が真っ青になって震えだしたよ。

 この分だと、バーサス子爵の名を借りた悪者の可能性が高そうだね。


 ガラガラガラ。


「やあ、レオ君。とんでもない馬鹿が現れたって?」

「あっ、守備隊長さん。この三人組です。バーサス子爵の名前を出していました」

「ふーん、バーサス子爵の名前、ねえ……」

「「「ガクガクブルブル……」」」

「連行して、厳しく尋問をしろ!」

「「「はっ」」」


 薬屋さんに入ってきた守備隊長さんに話をすると、三人組の震えが止まらなくなったよ。

 そして三人組は、あっという間に護送用の馬車に乗せられて守備隊の施設に連れて行かれました。


「何だったんだ、あの馬鹿は?」

「さあ?」


 冒険者も、手を広げて良くわからないって表情をしていました。


「さあ、気を取り直しないとな」

「おお、若いのにやるね!」


 そして旦那さんが気を入れ直すと、冒険者も思わず関心していました。

 こうして、訳の分からない三人組が来た以外は概ね問題なく初日が終わりました。

 因みにあの三人組は色々な街で様々な貴族の名を使って脅迫をしていたらしく、バーサス子爵とは全く関係ありませんでした。

 何でこの街でバーサス子爵の名を騙ったのかというと、あの三人組が本当に何も知らずに適当にバーサス子爵の名を出しただけだったみたいです。

 本当に迷惑な人達ですね。

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