第二百一話 薬屋さんにお泊りします
薬屋さんには初日以降は変な客も来る事なく、生薬も揃ってきたので街の人も冒険者も沢山入っています。
僕もシロちゃんも、店頭に立ちつつ時々裏に下がってポーション作りのお手伝いをしています。
あっ、旦那さんにちょっと気になった事を聞いてみよう。
ちょうど、お客さんも途切れたタイミングだもんね。
「そういえば、何でコバルトブルーレイク直轄領に来たんですか?」
「妻は困っているのを見過ごせない性格でな、誰もコバルトブルーレイク直轄領に行かないんなら私が行くって言ったんだよ」
おお、奥さんは大人しそうに見えるけど積極的な性格なんだね。
僕もシロちゃんも、思わずビックリしちゃったよ。
「とはいえ、ある程度の技術はあるが店舗運営とかの知識はなかったからな。ここに来るまでに、その辺りの知識を叩き込まれたぞ」
確かに、ポーションを作るだけなら僕にも出来るもんね。
お店を経営するってのは僕にもできないし、ポーション作り以上に大変そうだね。
そう思うと、薬草の仕入れ値やポーションの値段決めとかもあるって事だもんね。
「俺はポーション作りは手伝いしか出来ないし、店番がメインになる。だからこそ、しっかりしないとと思ったぞ」
「おー、カッコいい!」
パチパチパチ。
僕とシロちゃんが旦那さんに向けて拍手を送っていると、ポーション作りの部屋から奥さんも顔を出しました。
ポーションの入った瓶を複数持ってきているから、ちょうど商品補充のタイミングだったんだね。
「レオ君、この人をあまり調子に乗らせない方が良いわよ。調子に乗って、失敗する事もあるのよ」
「流石に今は慎重にやっているぞ。昔、色々やらかしたのは本当だしな」
ジト目で見る奥さんに対して、旦那さんも分かっている様に返しています。
何だかんだいっても、二人はとっても仲良しなんだね。
「レオ君は、いつまでコバルトブルーレイクの街にいる予定なの?」
「うーんと、あと一週間はいると思います。お世話になっているお姉さんと、一緒のタイミングで移動します」
「そうなのね。仲良くなったばっかりなのに、直ぐにお別れになるのね」
そっか、僕も旦那さんと奥さんと一緒に過ごせる時間は少ないんだね。
奥さんも、出会ったばかりでサヨナラするから少し残念そうにしています。
「そうだわ、折角だから今晩泊まって行かない?」
「えっ、良いですか?」
「勿論よ」
と言う事で、僕とシロちゃんは薬屋さんに泊まる事になりました。
宿に泊まる事を伝えないといけないので、夕方になったら一旦宿に戻りました。
「折角のお泊りなんだから、楽しんできてね。明日朝は、私一人でも訓練出来るように頑張りますわ」
ナナさんも、笑顔で僕の事を送り出してくれました。
そういえば、ナナさんが一人で毎朝の魔法の訓練をするのも初めてだ。
お互いに、良いタイミングなのかもしれないね。
「わあ、とっても美味しそう!」
「ふふ、ありがとうね。沢山あるから、いっぱい食べてね」
薬屋さんに戻ると、僕とシロちゃんは奥さんの作った料理を堪能しました。
とっても美味しくて、おかわりまでしちゃいました。
そんな僕とシロちゃんの事を、旦那さんはお酒を片手に笑顔で見つめていました。
そして、寝る時は僕が間に挟まって両脇に旦那さんと奥さんが寝ます。
シロちゃんは一足先に、僕の枕元ですやすやと眠っちゃいました。
「この街の人は、とても良い人が多いわ」
「そうだな。貴族相手もしているから芯が強い人が多いし、明るい人が多いな」
確かにコバルトブルーレイク直轄領は多くの人が行き交っているけど、街の人は良い人が多いよね。
「王都では、どんな人が多いんですか?」
「王都はとにかく人が多いから、他人行儀って人が多いわよ」
「それに貧しい人も多いし、生きるのに精一杯って奴も多かったな」
王都がどれだけ大きくて人が多いかは分からないけど、貧しい人も多いんだね。
うーん、僕は王都にはクリスちゃんに会いに行くけどクリスちゃんは貴族のお嬢様だし、チャーリーさんも貴族だもんね。
師団長さんは軍人さんで、王都の街の人とは旦那さんと奥さん以外は会っていないんだよなあ。
だよね。
だ、よ……
「あらら、レオ君寝ちゃったわ。可愛い寝顔ね」
「そうだな」
お話していたら、僕もいつの間にか寝ちゃいました。
いつもよりも、温かな気持ちで寝れたよ。
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