第百九十九話 薬屋さんが再始動するよ

 翌朝、僕とシロちゃんは張り切って薬屋さんに行きました。


「おはようございます」

「レオ君、おはよう。今日は宜しくね」


 早速奥さんが出迎えてくれて、僕とシロちゃんは薬屋さんの中に入ります。

 今日の奥さんは、髪を後ろに束ねていてやる気満々です。

 今日は店舗を開けずに、皆でポーション作りに集中します。

 流石に在庫もないのに、お店を開けられないもんね。


「じゃあ、井戸水を沸騰させるぞ」

「お願いね」


 旦那さんは見た目以上にとても力持ちで、井戸水を沢山汲んできて鍋の中に入れました。

 先ずは、井戸水を沸騰させて綺麗にします。

 その間に、皆で薬草を綺麗に洗います。


「レオ君も、かなり手際良く準備をするわね」

「ポーションを作り始めて、もう一年以上になりますので」

「こんなに幼いのに、もうそれだけの経験があるのね」


 準備をしながら、僕は奥さんとちょっとした話をしました。

 そう思うと、僕もポーション作りはちょっとベテランになってきたのかな?

 そんな事を思いながら、今度は薬草を鍋で煮ていきます。

 おっ、もうそろそろ良い感じに煮詰まってきたよ。

 シロちゃんも、もう少しって感じているよ。


「うん、良い感じに出来ているわ」

「じゃあ、火を止めるぞ」

「お願いね」


 おお、奥さんも僕とシロちゃんと同じタイミングでポーションが出来たって分かったよ。


「奥さんも、魔力を感知してポーションが出来たって分かっているんですね」

「魔法使いの特性って所もあるわね。旦那に言わせると、全く分からないそうよ」

「でも、良いタイミングで薬草から魔力が溶け込んだって分かる魔導具とかがあると便利ですよね」


 あれ?

 僕の話を聞いた夫婦が、お互いに不思議そうな表情で見つめ合っていたよ。

 うーん、僕が何か変な事を言っちゃったのかな?

 すると、奥さんが僕に不思議に思った事を話してくれました。


「ポーション作りは、実は感じ取れって教える親方が多いのよ。だから、品質にバラつきが出るのよ。でも、そういう魔導具があれば、誰でも品質の良いポーションが作れるわ」

「勿論、ポーションだけじゃなくて毒消しポーションで必要な魔力測定をする魔導具も必要だ。だが、確かにその魔導具があれば俺でもポーションは作れるな」


 僕がそんな魔導具があれば良いなって思ったのが、二人にはビックリだったんだね。

 僕はポーション作りをするだけじゃなくて魔導具修理のお手伝いもしているから、そんな事を思いついたのかも。

 あっ、だったら魔導具を扱えそうな人に相談してみるのも良いかもしれないね。


「こんにちは、商会です。瓶を納品しに来ました」


 ちょうど良いタイミングで、ピッタリな人が薬屋さんに来たよ。

 僕は、瓶を納品しに来た人に声をかけました。


「レオ君らしい考え方ね。中々面白そうな考え方だわ」


 たまたま薬屋さんに来たジュンさんに、僕の考えた事を聞いて貰いました。

 ジュンさんは職人さんだから、僕の考えが面白いって思ってくれたよ。


「でも、魔導具の事だから専門家の意見を聞かないとね。帰ったら、相談してみるわ」


 ジュンさんは、他の人に瓶を運んで貰いながらあれこれ考えていました。

 頭の中で、色々と考えているんだね。

 今日は商会に帰らないといけないそうなので、後日職人さんが来る事になりました。


「レオ君の人脈が早速生きたわね。ジュンさんはとても感じの良い人だし、これから長い付き合いになりそうだわ」

「それに誰でも確実にポーションを作る事が出来る魔導具があれば、この国のポーション作りは革命が起こるぞ」


 何だか、とっても面白い事が起きそうだね。

 夫婦もジュンさんも、やる気満々になっていたよ。

 でも、先ずは出来上がったポーションを瓶に詰めないとね。

 皆で手分けして、ポーションを瓶に詰めていきます。


「レオ、何だか面白い事を考えたな。魔導具修理も一段落して、ちょうど暇していたんだよ」


 昼食をご馳走になった後、魔導具修理工房の職人さんが薬屋さんにやってきたよ。

 何だか、とっても良い笑顔をしているね。


「でも、とても難しい事だと思いますよ」

「難しい程挑みがいがあるぞ。それに、魔力を計測する魔導具はあるから、実はそんなに難しいとは思ってもいない。というか、俺等は今までどうやってポーションが作られているかを知らないからな」


 おお、奥さんの心配も職人さんは全く問題ないって言っているよ。

 他業種の人にして見れば、ポーション作りは未知の領域だもんね。

 そして、職人さんはポーション作りの道具をジロジロと見ていました。


「しかし、ポーション作りの道具ってのも、もう少し気の利いた物を使った方が良いな。後で、小道具職人に声をかけてやるぞ」

「何から何まですみません」

「良いって事よ。お互いに、これから長い付き合いになるんだからな。じゃあ、俺は工房に戻るぞ」


 きっと職人さんも、夫婦が良い人だから気を使ってくれたんだね。

 この機会に、職人さん同士のつながりが出来れば良いね。

 この街のポーション作りは、絶対に上手くいくって僕もシロちゃんも思ったんだよ。

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