第百九十八話 コバルトブルーレイクの街に薬師が到着しました

 そして、遂に王都から新しい薬師がやってくる日になりました。

 僕とシェファードさんは、代官邸の応接室で薬師を待つ事になりました。


「そうだ、レオ君にサンダーランド辺境伯宛の手紙を作ろう。あの当主は厳格な人だが、とても真面目だ。きっと、レオ君の事も気に入ってくれるよ」


 シェファードさんも、サンダーランド辺境伯宛の手紙を書いてくれるんだ。

 となると、サンダーランド辺境伯領に行ったら、サンダーランド辺境伯様と軍の偉い人と冒険者ギルドマスターに会わないといけないね。


 コンコン。


「失礼します、王都からの薬師様御一家が到着されました」

「おっ、来たようだな。入ってくれ」


 執事さんが来訪者を告げてくれたけど、どんな人がやってくるのかな?

 僕は、ちょっとワクワクしながらシェファードさんと一緒に立ち上がりました。


 カチャ。


「「失礼します」」


 二人の若い男女が、応接室に入ってきたよ。

 男性は中肉中背の赤髪ツンツンヘアで、女性は金髪のロングヘアでスレンダー体型です。

 うーん、男性の方が薬師なのかな?

 冒険者っぽく見えるよ。

 女性は、シスターさんって感じだね。


「ようこそ、コバルトブルーレイク直轄領へ。私が代官を務めているシェファードだ」

「初めまして、僕はレオです。このスライムはシロちゃんです」

「長旅で疲れているだろう。先ずは、二人とも座ってくれ」


 シェファードさんと僕が自己紹介して、お互いにソファーに座りました。

 すると、女性の方から話し始めました。


「シェファード様、レオ君、初めまして。薬師のミナミと申します。この度は、私どもを受け入れて頂き感謝申し上げます」

「旦那のガンツです。冒険者をしていて、薬師見習いでもあります。妻ともども、宜しくお願いします」


 二人揃って座りながらペコリとお辞儀をしてきたけど、奥さんが薬師なんだね。

 今後の事も含めて、話をする事になりました。


「薬屋は清掃して、いつでも使える様にしてある。ただ、前の薬師が使っていた物なので、どこまで使えるかは分からない」

「過分なご対応、ありがとうございます。実は私は魔法使いでして、ポーション作りに必要な物は最低限揃えてあります」

「それは、こちらとしても有難い」


 おお、奥さんは魔法使いなんだ。

 となると、僕とシロちゃんと同じポーションの作り方をしているかも。

 でも、魔法使いとしても興味津々だから、ちょっと聞いてみよう。


「因みに、どんな魔法が使えるんですか?」

「少しだけ、回復魔法が使えます」

「ほお、回復魔法が使えるのは有り難いな。教会に治癒師もいるが、治療の手があるのは万が一の事も考えられる」


 シェファードさんも、奥さんが回復魔法を使える事に興味を示していました。

 シロちゃんも、ちょっと興味を持っているね。


「旦那さんは、どんな冒険者なんですか?」

「メインは、害獣駆除の討伐や薬草採取をしている。レオ君の様に、大規模な盗賊団を捕まえる事はできないよ」


 でも、害獣駆除や薬草採取をしてくれるだけでも街の為になると思うよ。

 この街の冒険者は、薬草採取とかよりも別荘の仕事とかをする人が多いと思ったよ。

 夫婦はまだ昼食を食べていないそうなので、代官邸で皆で昼食を食べてから薬屋さんの店舗に移動します。

 あっ、よく考えると僕も初めて薬屋さんの店舗に行くね。

 シロちゃんもちょっとワクワクしながら、皆で馬車に乗り込みました。


「わあ、とても良い設備が整っていますわ」

「これなら、直ぐに仕事を始められるな」


 夫婦はポーション作りや生薬作りの部屋を見て、かなりの好印象を得ていました。

 僕が見ても、セルカーク直轄領やアマード子爵領の薬屋さんの店舗と同じくらいの設備が整っていました。

 というか、備品は更に良いものを使っているよ。


「こんな所に金を使うのではなく、まともなポーションを作れって事だな」

「本当ですね。見栄を張る事ばかりしていたんですね」


 シェファードさんは捜査の時に薬屋さんの店舗に入ったそうだけど、改めて溜息をついていたよ。

 豪華な備品も、これからちゃんとしたポーション作りに役に立って欲しいね。

 旦那さんは居住スペースを確認していたけど、こちらも問題ないみたいです。


「では、早速明日からポーション作りを行います」

「僕も、明日は朝から来ますね」


 いよいよ明日から、薬屋さんでのポーション作りが始まります。

 僕もシロちゃんも、ちょっとワクワクしているよ。

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