第五百五話 僕の武勇伝?

 翌朝、僕たちはお隣の子爵領に出発するためにバーボルド伯爵家の屋敷の玄関に集まりました。

 ネストさんたちも、見送りをするために集まっています。

 ちなみに、子爵領までは半日もかからずに到着する予定です。


「モニカ様、レオ君も道中は気をつけて」

「わざわざ、お見送り頂きありがとうございます」

「ダンビルさん、シャンティさん、シークレア子爵領で、また会えるのを楽しみにしています」


 ネストさんは忙しいので、シークレア子爵家の結婚式にはダンビルさんとシャンティさんが参加する予定です。

 ネストさん曰く、将来当主になるための訓練だそうです。

 アレックスさんと、同じことをするんですね。

 そろそろ出発時間なので、僕たちは馬車に乗り込みました。


「では、また帰りに会おう」

「「「いってきまーす!」」」


 僕たちは、馬車の窓からバーボルド伯爵家の方々に手を振ります。

 こうして、またまた馬車旅が始まりました。


 パカパカパカ。


「「「くー、くー」」」

「あらあら、仕方ないわね」。朝早かったからね」


 馬車が動き出して直ぐに寝てしまったクリスちゃん、マヤちゃん、ユキちゃんを、モニカさんが優しく撫でていました。

 そして、ここぞとばかりにウェンディさんがユキちゃんを膝枕して寝かせていました。

 ユキちゃんの毛並みは魔性のもふもふなので、みんな撫でたくなりますよね。

 護衛もついているけど、道中は本当に何も起きることなくお昼前に子爵領に到着しました。


「ここでは、宿を取っているわ。安全なところだから大丈夫よ」

「あれ? モニカさん、子爵家の屋敷には止まらないんですね」

「この子爵家とお隣の男爵家とは、そこまでの付き合いはないのよ。だったら、その領地にお金を落とした方がよっぽどその領地のためになるわ」


 おお、何というかとっても貴族的な考え方ですね。

 ちなみに、この後モニカさんが子爵に挨拶に行くそうなので、僕たちは宿の周辺で買い物をする事になりました。

 護衛もいるし、僕もシロちゃんもいます。

 ユキちゃんも、みんなを守るぞと張り切っていますね。


「うーん、これとこれとこれにしよう!」

「私は、これ!」

「じゃあ、クリスが買ってあげるね」


 僕たちは、雑貨屋さんで色々なアクセサリーを見ていました。

 クリスちゃんは、前に一緒にやった冒険者活動の報酬でマヤちゃんに何かを買ってあげるみたいです。

 お姉ちゃんに任せてと、とても張り切っています。

 ウェンディさんとアレックスさんも、アクセサリーを手にとって品定めをしています。

 僕とシロちゃんは、周囲を警戒しつつ買い物をしていました。

 すると、僕たちというか僕に近づいてくる人たちがいました。


「おお、レオじゃないか」

「あっ、おじさん久しぶりです」

「ちょっと久々だな。はは、お貴族様って格好だな」


 僕に声をかけてきたのは、アマード子爵領からコバルトブルーレイク直轄領まで一緒に旅をした冒険者のおじさんたちでした。

 シークレア子爵領からバーボルド伯爵領までの旅でもこの子爵領で会ったけど、まだこの町で活動していたんですね。

 でも、他の人たちはこのおじさん誰って表情をしていました。


「えっとね、この人たちは僕がアマード子爵領からコバルトブルーレイク直轄領まで一緒に旅をしたんだよ」

「「「おおー!」」」


 僕がみんなにおじさんたちのことを説明したら、みんなもの凄く興味を持ったよ。

 そんな中、クリスちゃんが一歩前に出ておじさんたちに質問しました。


「おにいさまが、クリスを治療したことも知っているの?」

「おお、あの時のお嬢ちゃんか。馬車乗り場までは一緒で、そこからは宿に行ったんだ。そうしたら、黒髪の魔術師が大貴族の令嬢を救って悪い貴族を捕まえたと町中が大騒ぎになったぞ」

「そーなんだ!」


 クリスちゃんはニコニコしながら返事をしていたけど、町中で大騒ぎになっているなんて知らなかったよ。

 雑貨屋さんの前でお喋りしてはなんなので、高級宿のロビーに移動してお茶を飲みながら話をすることになりました。

 すると、ナイスタイミングでモニカさんが子爵領から戻ってきました。


「あらあら、何か楽しそうなことをしているわね」

「モニカお母様、おにいさまと一緒に旅をした冒険者さんだって!」

「あらあら、本当に楽しそうなことになりそうだわね」


 モニカさんも、興味津々って感じで席に着きました。

 そして、おじさんが道中のことを実演を交えながら話していました。

 特に、僕とシロちゃんでゴブリンキングを倒して村を救った話は大盛りあがりでした。

 いつの間にかホテルのロビーにいた人も集まってきて、おじさんの話を聞いていました。

 うう、本人を目の前にしてそんなに熱弁されるととても恥ずかしいです。


「レオのことを知っている冒険者だったら、もっと偉くなっても当たり前だと思っているぞ」

「そうですわね。既に功績が溜まっているので、爵位が上がるのも時間の問題ですわ」

「そりゃ楽しみだ。レオが領地持ちの貴族になったら、知り合いの冒険者はこぞって行くだろうな」


 そして、何故か僕がもっと出世すると言う話で、おじさんとモニカさんが意気投合していました。

 うう、僕は普通の冒険者で居たいですよ。

 モニカさんは堂々とした態度のおじさんたちをとても気に入って、またお話ししたいと言っていました。

 もしかしたら、王都でもおじさんたちに会うかもしれないですね。

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