第二百七十六話 街を散策します

 無事に駐屯地での治療を終えたので、僕達は昼食を食べてから屋敷に戻りました。


「レオ君はずっと治療していたから、街をみるのも良いだろう」

「えっ、良いんですか?」

「ああ。二人もついて行ってくれ」


 急遽マシューさんのはからいで、ディフェンダーズ伯爵領の街を散策する事になりました。

 フレアさんとミシャさんはディフェンダーズ伯爵領の街に来たことがあるそうなので、色々と案内してくれるそうです。


「私も街に行きたいな」

「ヒカリ、領主令嬢が気安く街に出るものではないですよ。安全面とかを考えましょう」

「……はーい」


 あらら、ヒカリさんは一緒に来れないんだね。

 でも誘拐とかにあったら大変だから、ここは我慢だね。

 一度お屋敷に戻ってから、僕とフレアさんとミシャさんは街にくり出しました。


「わあ、市場がとっても広いです。沢山の人が集まっていますね」

「ディフェンダーズ伯爵領は交易の中継地ってのは、少し前に知ったよね」

「サンダーランド辺境伯領などの物が、ディフェンダーズ伯爵領を通って王都に向かうのよ。その逆で、王都からサンダーランド辺境伯領に向かうのもあるの」


 僕達は、最初に大勢の人が集まっている市場に行きました。

 威勢の良い声が辺りから聞こえてきて、とっても活気があります。


「おや、レオ君じゃないか?」


 どこに行こうかなと思っていたら、不意に僕は声をかけられました。

 すると、数人のおばちゃんがニコニコとしながら手招きしていました。

 ドライフルーツとかを売っている露店で働いているんですね。


「あっ、治療院で治療した人ですね。具合はどうですか?」

「すっかり良くなったよ。こうしてバリバリ働ける様になったよ」

「凄腕の魔法使いって聞いていたけど、レオ君は本当に凄腕だったわ」

「わわわ!」

「「ふふふ」」


 僕は複数のおばちゃんから、ちょっと乱暴に頭を撫でられちゃいました。

 危険を察知したシロちゃんは、ぴょーんとフレアさんの頭の上に移動しています。


「この市場には、他にもレオ君の世話になった奴が一杯いるよ」

「皆、元気に商売をやっているよ」

「そうなんですね、元気になって良かったです。えっと、ドライフルーツをいくつか下さい」

「はいよ、いっぱいおまけするよ」


 元気になったおばちゃんから、沢山のおまけを貰っちゃいました。

 更に、市場の他の人からも買い物のたびにおまけを貰っちゃいました。


「こんなに沢山貰っちゃって良いのかな?」

「治療してくれた人からのお礼だから、ありがたく受け取っておけば良いのよ」

「そうよ。仕事ができない方が損失が大きいのだから、商人側も嬉しいのよ」


 フレアさんとミシャさんも、沢山のおまけは問題ないって言っています。

 ここは、ありがたく頂きます。

 因みに、シロちゃんは今度はミシャさんの頭の上に移動していました。


「あっ、アクセサリー屋さんにピンブローチの材料が売っているよ」


 次は小さなアクセサリー屋さんだけど、沢山の人が商品を見ていました。

 ピンブローチの材料も、とっても綺麗だね。


「あっ、この材料を使ってハルカさんとヒカリさんにピンブローチをプレゼントしよう」

「それは良い考えだね」

「きっと、ハルカ様もヒカリ様も喜ぶよ」


 シロちゃんもやる気満々になっていたので、早速いくつかパーツを購入しました。

 綺麗な物ができれば良いね。

 さてさて、次はどこに行こうかな?


「あっ、うちの武器を卸している商会があるから、挨拶に行って良いかな?」

「確か、私の商会とも取引がありますわ。私も、挨拶に行った方が良いですね」


 フレアさんとミシャさんは、とっても大きなお店のお嬢様だもんね。

 キチンと挨拶をするのは、とっても大事だよね。

 皆で、ディフェンダーズ伯爵領で一番大きい商会に向かいました。


「いらっしゃいま……、これはこれは、フレアお嬢様とミシャお嬢様ではありませんか」


 お店に入ると、スマートな茶髪のおじさんが僕達を出迎えてくれました。

 僕達を見るなり、フレアさんとミシャさんをお嬢様って言ったよ。

 やっぱり、フレアさんとミシャさんは凄い人なんだね。


「お久しぶりです。今日はディフェンダーズ伯爵領に来たので、ご挨拶に伺いました」

「突然お邪魔して、申し訳ありません」

「そういえば、治療院でフレアお嬢様とミシャお嬢様が黒髪の天使様と一緒に行動していたと入院していた店の者が言っておりました」


 あっ、お店の人も治療院にいたんだね。

 お店に戻っているという事は、元気になったんだね。


「わあ、色々な物が売っていますね」

「これはこれは、黒髪の天使様ですね。ミシャお嬢様の商会と比べると小さいですが、それなりの品揃えをしております」


 お店の人は謙遜した様に言っているけど、お店の中はとっても広いですよ。

 ポーションを入れる空瓶も売っていたので、僕はいくつか購入しました。

 でも、ミシャさんのお店と売っている物は殆ど同じだね。

 こうして、僕達は買い物を終えて屋敷に戻りました。


「ただいま戻りました」

「お帰りなさい。もう少ししたら夕食にするわ」


 僕達の事を、ハルカさんが出迎えてくれました。

 少し時間がありそうなので、僕とシロちゃんは客室でピンブローチを作る事にしました。


 ポチポチポチ。


「ふう、出来た!」

「相変わらずの早業ね」

「でも、とっても綺麗にできているわ」


 僕とシロちゃんは、慣れた手つきでピンブローチを完成させました。

 ピンブローチをハルカさんとヒカリさんに渡すのは、明日にしました。

 喜んでくれたら、とっても嬉しいな。

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