第四百十六話 元気なお姉様と大人しめなお兄様
そして、モニカさんは僕にとある事を話しました。
「明日レオ君は王城に行くけど、私の息子と娘も一緒に行く事になったのよ。レオ君よりも年上だけど、面倒を見てあげてね」
「わあ、ウェンディおねえさまとアレックスおにいさまも一緒だ!」
モニカさんの話を聞いてクリスちゃんは両手をあげて喜んでいるけど、きっととても良いお姉さんとお兄さんなんだね。
すると、その噂の姉兄が応接室に入ってきました。
「わあ、とっても可愛い男の子だ。それに、本当に黒髪なんだね」
「お、お姉様。挨拶もなしにいきなり話したから、レオ君が戸惑っていますよ」
とっても元気な銀髪をボブカットにした女性と、青髪の短髪でちょっと気弱そうな男性が部屋に入ってきました。
女性が僕の手を取ってキラキラとした目で見ているので、僕も固まっちゃいました。
まずは挨拶ってことになり、二人ともモニカさんの隣に座りました。
「僕はレオです。スライムがシロちゃんで、コボルトがユキちゃんです」
「私はウェンディよ。今年十二歳になるわ。レオ君、よろしくね」
「ぼ、僕はアレックスです。今年十歳です。レオ君、よろしくお願いします」
ウェンディさんは、本当に元気いっぱいなんです。
それに人見知りをしないのか、さっそくユキちゃんを抱っこしてもふもふしていました。
対してアレックスさんは、知的な感じだけどお姉さんの元気に押されちゃっているみたいですね。
「いやあ、こうして目の前にクリスを助けた黒髪の天使様がいるって、本当に凄い事だわ」
「あの、僕はただの魔法使いで冒険者ですよ。そんな凄い人じゃないですよ」
「えー、そんな事はないよ。それに、レオ君はとっても優しそうだよ」
ウェンディさんが、ユキちゃんをもふりながら僕に色々な話をしてきます。
うーん、なんというか凄いお姉さんだね。
「ねえねえ、コバルトブルーレイク直轄領でゴブリンキングを倒した後で傷ついた人を治療したのは本当なの?」
「ちょっと違いますよ。ゴブリンキングを倒したら魔力がなくなっちゃったので、事前に作ってあったポーションを配りました。直接怪我人を治療したのは、寝て起きてからです」
「そんな裏話があったんだ。やっぱり本人に聞くと色々な事が分かるんだね」
「お、お姉様。ちょっと落ち着いて……」
アレックスさんが止めても、ウェンディさんのマシンガントークは止まりません。
チラリとモニカさんを見たけど、モニカさんもニコリとしているだけでウェンディさんを止めません。
すると、更に質問者が増えました。
「おにいさま、ピンブローチ作っているの?」
「コバルトブルーレイク直轄領でクリスちゃんと別れた後に作り方を教わったんだよ。サンダーランド辺境伯領のお祭りで、ピンブローチを販売したよ」
「わあ、凄いなあ!」
ピンブローチ作りも、ずっと続けてきたよね。
僕もシロちゃんも、最初の頃に比べると上手に作れるようになったよ。
すると、またもやウェンディさんが話しかけてきました。
「ねえ、もしレオ君にピンブローチを作ってって頼んだら、直ぐに出来るの?」
「五分あれば作れますよ」
「えっ、五分でピンブローチが作れちゃうの?」
ウェンディさんは凄くビックリしちゃったけど、材料もあるし直ぐに作れるよ。
僕とシロちゃんは、魔法袋とアイテムボックスからピンブローチ作りに必要なものを取り出しました。
ポチポチ、ポチポチ。
「凄い、あっという間に出来上がっていく……」
「あらあら、これは凄いわ」
「おにいさま、すごーい!」
僕はクリスちゃんをイメージしたピンブローチを、シロちゃんはウェンディさんをイメージしたピンブローチを作ります。
僕たちが直ぐにピンブローチを作ったので、女性陣はとってもビックリしていました。
「はい、出来上がりました。僕のはクリスちゃんで、シロちゃんのはウェンディさんに差し上げます。今度、モニカさんとターニャさんの分も作りますね」
「わあ、おにいさまありがとー!」
「とても綺麗なピンブローチね。シロちゃん、ありがとう」
「私たちの分も作ってくれるのね。レオ君、ありがとう」
さっそく、クリスちゃんとウェンディさんは出来上がったピンブローチを身に着けていました。
喜んで貰えるのって、作り手としてとっても嬉しいね。
「レオ君は、魔法使いでアクセサリー職人でもあるんだ。凄いなあ」
「アオン」
いつの間にかユキちゃんをもふっているアレックスさんが、ピンブローチを見て感心していました。
僕としては、魔法使いもアクセサリー職人もまだまだって思っていますよ。
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