第六百八話 みんなで昔話

 スキンヘッドの人の水虫の治療をする前に、他の人の治療を全部終えて本当に良かったと思います。

 流石に、今の僕たちはちょっとヘロヘロです。

 なので、応接室に移動して休むことにしました。

 うーん、昼食を食べたくらいでようやく少し魔力が回復する程度だね。


「レオ君、水虫とドラゴンと戦うのってどっちが手強いかな?」

「圧倒的に水虫の方が手ごわいです!」

「キュー!」

「そ、そこまで気合を入れて断言するのね……」


 僕だけでなく、ソラちゃんも熱弁する程の強敵でした。

 質問してきたセレンお姉さんも、僕たちの回答を聞いて思わず苦笑いする程です。


「はあ、僕はまだまだへたっぴな魔法使いです。水虫も治療できるように、これからも訓練を続けます!」

「比較対象があれだけど、訓練を続けるのはとても良いことだわ」

「しかし、倒すべき敵が水虫とは。レオ君は、相変わらず可愛いわね」


 僕がふんすって気合を入れたら、ナナリーお姉さんとカエラお姉さんもちょっと苦笑しながら僕の頭を撫でてきました。

 僕にとって、やらないといけない新たな目標ができました。


「レオ君って飛翔魔法も使いこなす宮廷魔術師様なのに、なんというか昔から変わらないわね」


 そして、セレンお姉さんがこの話をしたのがきっかけでした。

 シロちゃんたちが、一斉にセレンお姉さんの方に向き直りました。


「アオン!」

「ピー!」

「ミー!」

「キュー!」

「私も、レオ様の昔話に興味があります」


 ジェシカさんまで、セレンお姉さんに話しかけていました。

 ジェシカさんも、シロちゃんたちの言いたいことが何となく分かるみたいですね。

 セレンお姉さんたちは、ジェシカさんとシロちゃんたちの迫力にちょっと押され気味です。


「まあ、だいたいの話は聞いていると思うから、ちょっとした裏話をしましょうか」

「レオ君って小さい頃から頭が良かったから、ちょっと大人びた感じだったわね」

「それでも、たまに喜んだりするととても可愛かったわ。あと、昔からお風呂が大好きだったよね」


 セレンお姉さん、ナナリーお姉さん、カエラお姉さんが順番に話しているけど、僕のお風呂好きはジェシカさんも知っているよね。

 未だに湯船に浸かると、とても気持ちよくなっちゃうんだよなあ。

 この辺はみんなも分かっているのに、うんうんと頷いていました。


「あっ、あとこの町にいる時からトマトパスタが大好きだったよね。一人で活動している時も、いつもの食堂で良く食べていたわ」

「元祖小さな魔法使いが好きなトマトパスタって、看板も出ていたわね」

「集客効果がもの凄くて、遠方からわざわざ来ていた人もいたわ」


 そういえば、僕はトマトパスタを食べるためにいつも食堂のテラス席にいたもんね。

 僕が美味しそうにトマトパスタを食べるのを、町の人がにこやかに見ていたっけ。

 でも、トマトパスタ好きもみんな知っている気がするよ。


「後は、ご両親の件があったから人に甘えるのが下手というか。遠慮している感じだったわ」

「元気よく抱きついてくれればよかったけど、コミュニケーションは確かに少なかったよね」

「守備隊にいる一ヶ月の間にだいぶ改善したけど、それでもまだ遠慮しがちだったわね」


 この話になった途端、みんな真剣に話を聞いていました。

 確かに、僕からはあまりアクションを起こさなくて相手から接してくれたよね。

 その点は、とっても助かりました。

 そして、その後もたくさんのことを話していて、逆にセレンお姉さんたちが知らないセルカーク直轄領を出てからの話もしました。

 何だか色々なことを思い出して、とても懐かしいって思っちゃいました。


「そうそう、忘れないうちに話をしておくわ」

「レオ君は、午後は街の人と面会する予定よ。お貴族様のお仕事なんだってね」

「町の人もレオ君に会いたがっていたから、ちょうどいいかもしれないわね」


 おお、色々な人に会えるなんてとっても嬉しいです。

 こうして、みんなでお話とこの後の予定を話しているうちに、十分休憩を取ることができました。

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