第五百七十二話 王城に向かいます
昼食前に大教会からフランソワーズ公爵家に戻ったけど、何だか色々あってもう疲れちゃいました。
でも、本番の夜会はこれからです。
昼食を食べたら、クリスちゃんとマヤちゃんと一緒にちょっとお昼寝をします。
お昼寝から起きたら、夜会で着ていく服に着替えます。
といっても、僕は宮廷魔導師の服を着るんだけどね。
他の人たちは、パーティー用のドレスだったりキチンとした服を着ます。
準備が出来たら、ちょっと早めに王城に向かうことになりました。
馬車に乗って王城に向かうと、何だかいつもよりも警備が物々しいって思っちゃったよ。
「今日は王家主催の夜会だし、多くの貴族が家族も連れてくるわ。それに、いわば軍も夜会の主役みたいなものだし、何かあっては駄目だと警戒を強めているのよ」
モニカさんが色々と教えてくれたけど、僕は帝国との戦闘が終わったお疲れさま会みたいに思っていたよ。
想像以上に、凄い事になっているんだね。
すると、王城に入ろうと馬車が門を通過した時に、たくさんの兵に羽交い締めにされながら僕に罵声を浴びせる人がいました。
「テメー! レオのせいで恥をかいたじゃないか! 今すぐ詫びて死にやがれ!」
「くっ、こいつを牢屋に入れろ!」
「門から引き離すぞ!」
なんか凄いことを言っているけど、間違いなく昨日の謁見で馬鹿なことをして捕まったオバカ子爵一派の誰かですね。
軍人貴族に取り囲まれて威圧を受けたのがよっぽど悔しかったのだろうけど、今日は王城への立ち入り禁止になっているはずです。
だから、門で待ち構えていて僕に罵声を浴びせたんですね。
「はあ、稀に見る馬鹿な貴族ね。こんなことをすればどうなるかすら分からないなんて」
「呆れてため息が出ちゃうわ。キチンとした貴族になったレオ君に喧嘩を売ればどうなるかなんて、誰もが分かるはずね」
モニカさんとターニャさんも、門で大騒ぎする貴族にただ呆れるばかりだった。
他の面々もプンプンだったけど、一緒についてきたジェシカさんが一番怒っていた気がするよ。
そして、王城に入って応接室に行くと、この人もプンプンしていました。
「王家主催の夜会に呼ばれないのは不名誉だと思い、レオがその原因だと勝手に決めつけている。だが、そもそも、王城への立入禁止を誰が言い渡したのかを忘れている」
一連の騒動を聞いたのか、陛下も応接室に顔を出していました。
ため息が出るばかりとは、こういうことを言うんですね。
陛下の命令を破ったので、これから厳しい取り調べが行われるそうです。
陛下はこの後色々対応があるそうなので、応接室を出ていきました。
夜会が始まるまで少し時間があるので、そのままお茶を飲みながら時間を潰します。
すると、会場の準備ができたと言われたので夜会が行われるパーティー会場にみんなで向かいました。
「「わあー、すごーい!」」
夜会が行われるパーティー会場はとても綺麗に飾り付けがされていて、多くの使用人が料理などを運んでいた。
立食形式なんだけど、子ども用にテーブルなども用意されていた。
壁には座って休憩できるように椅子が並べられていて、色々配慮されているんだなって改めて感心した。
さっそくクリスちゃんとマヤちゃんが子ども用の席に座ると、使用人がジュースを出してくれた。
ユキちゃんも隣に座って、二人と一匹はご機嫌ですね。
すると、僕たちの次に現れたのはこの人だった。
「ふふ、もう楽しんでいるみたいね」
「「おー!」」
ニコニコしながら僕たちの側にやってきたのは、綺麗に着飾ったヒルダさんだった。
如何にも大貴族夫人らしい出で立ちで、クリスちゃんたちも感嘆の声を上げていた。
すると、ヒルダさんがあることを言ってきた。
「そういえば、また馬鹿が現れたんだってね。王城前で一悶着あったって、貴族の間であっという間に広まっているわよ」
王城の門の前というたくさんの人の目がある場所で大騒ぎがあったので、目撃者がいっぱいいたという。
豪快に陛下の命令を破ったのもあり、あれはヤバいと誰もが思っているみたいです。
でも、昨日の謁見も含めて僕が特にどうこうしたってのはないんだよね。
いずれにせよ、この夜会は大丈夫ってことみたいです。
すると、夜会に参加する兵もパートナーを連れてやってきました。
よく見ると、兵が頑張って作ったピンブローチを身に着けていますね。
僕も何だか嬉しくなって、兵のそばに駆け寄りました。
「こんばんは、綺麗なピンブローチができたんですね」
「中々上手くいかなかったけど、今の俺にとってできるものを作ったぞ」
「まさか、黒髪の天使様にピンブローチ作りを教わっていたとは知りませんでした。あと、この人私にプロポーズしていたのを忘れていたんですよ」
えー!
まさかの展開に、兵はバツの悪そうな表情をしていました。
これには、僕だけでなく一緒にいたシロちゃんとピーちゃんもびっくりです。
それでも、一生懸命作ったプレゼントをもらったのは嬉しいみたいですね。
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