第五百十三話 ヒルダさんにシークレア子爵領を紹介します
結婚式まであと二日に迫った今日は、何故か午前中ヒルダさんと一緒にもう一回僕が働いていたところを案内することになりました。
うん、何で二回も案内するんだろうか。
ユキちゃんはすっかりヒルダさんに捕まっちゃっているけど、他の面々は屋敷にいるって決め込んでいます。
その代わり、モニカさんから勉強をしなさいと言われちゃっているけど。
それ以上に、気になる件があります。
「うーん、やはり男爵の足取りが掴めないようだ。息子が代理で領地を収めているらしいが、反面教師なのか真面目な性格だという。というか、既に息子が領地を収めているに等しいそうだ」
朝食時にセルゲイさんからあまりよくない情報がもたらされたけど、一体男爵はどこに行ったのだろうか。
領内ももの凄い警戒が敷かれているけど、ヒルダさん曰く逆に安全だろうって言っています。
まあ、僕たちがヒルダさんに言っても無駄なのは分かっているので、逆に早めに終わらせましょう。
ということで、朝食を食べたらさっそく出発します。
「流石に海軍は厳重警戒になっているので、お隣の造船所に行きますね」
「ここが、レオ君が働いていた造船所なのね。結構大きいわ」
ルートも昨日と同じところになったので、ある意味説明も楽ですね。
ということで、僕たちを乗せた馬車は造船所に到着しました。
ここの職人さんたちは、とても良い人だもんね。
「レオ君の働きぶりはどうだったかしら?」
「とにかく真面目だよ。真面目が過ぎるから、時々気楽にやれと注意していたぞ」
「でも、むさい男どもが相手でも普通に接していたな。魔法使いとしても凄いが、性格も良いな」
「そうよね。レオ君はとても良い性格だけど、ちょっと集中しちゃうところはあるのよね」
ヒルダさんは、僕の説明が終わったらどんどんと職人さんに話しかけていました。
厳つい顔の職人さんが相手でも、ヒルダさんは積極的ですね。
僕の話題なんだけど、本人を前にしてみんな喋るよ。
こうして、説明五分お喋り三十分で造船所を後にしました。
次は、結婚式会場となる教会です。
「ここが、海の見える教会なのですね。とても素晴らしい景色ですわ」
「ありがとうございます。きっと女神様も、漁師の皆さんを見守っておりますわ」
ここでも、僕が説明を終えるとヒルダさんはシスターさんと話をしていました。
ちなみに、必要なものは運び終えたので男性冒険者は数人残して町の巡回に出ています。
そして、領主の結婚式が行われるとあってか、教会は兵によって常に警備されていました。
準備を手伝っているダリアさんたちもとても強くなったので、シスターさんたちを守るには十分だそうです。
とっても安心できますね。
「しかし、例のレオ君が助けた公爵家令嬢ってとっても可愛いわね」
「クリスちゃんは、昔会った時よりもずっと可愛くなりましたよ」
「あら、ハッキリと言っちゃうのね。お姉さん妬けちゃうわ」
合間を見てダリアさんたちが昨日姿を見せたクリスちゃんの事で盛り上がっています。
クリスちゃんはマヤちゃんのお姉ちゃんとして頑張っているし、今も一生懸命に勉強しているはずだもんね。
そして、教会の次は宿にも向かいます。
「娘が随分とお世話になったみたいで、本当にありがとうございます」
「いいえ、こちらこそモニカ様には良くして頂きましたわ」
モニカさんという共通の話題があるので、ヒルダさんとオリガさんはとっても意気投合しています。
子どもの話や、孫についても話をしていますね。
「なあ、あの人って滅茶苦茶偉い人だよな?」
「前国王陛下の妹さんで、現宰相の奥さんです」
「だよな。そういう人と一緒にいるレオも凄いけど、平然と話をしているかーちゃんも凄いなあ」
僕も、隣にいるザンギエフさんに同意します。
ヒルダさんはどんな人とも話をするけど、それに合わせられるオリガさんも凄いよね。
ザンギエフさんも、思わずぽかーんとしちゃいました。
「とりあえず、行方不明になった隣の男爵の行方が分かればいいな。俺も昔男爵領に行ったことがあるが、領民が男爵をズタボロに言っていたぞ」
ザンギエフさんも、男爵には良いイメージを持っていないそうです。
ちなみに、シークレア子爵家から男爵家に結婚式の招待状を送ったみたいだけど、返事が来ていないそうです。
でも、肝心の男爵はいなくて嫡男は代理統治で忙しいので、代わりに嫡男の妹さんが来ることで決着したそうです。
でも、道中何があるか分からないので、明日シークレア子爵領に到着する軍のお偉いさんと一緒にくるそうです。
「かーちゃんは結婚式に参加するけど、俺らは現場警備だ。とにかく、無事に終わることを祈るよ」
ザンギエフさんも、思わずため息をついていました。
僕も、せっかくの結婚式なんだから無事に終わって欲しいです。
そして、ヒルダさんとオリガさんは、なんと一時間も喋っていました。
話が終わる頃には、二人はすっかり意気投合していました。
ヒルダさんに抱っこされていたユキちゃんの方が、とっても疲れていました。
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