第五十四話 続々と貴族が到着します
いよいよ明日結婚式となったけど、ここでアンジェラさんから僕たちに一つお願いがされました。
「あのね、レオ君、クリスちゃん、マヤちゃんに結婚式でお願いがあるのよ。新郎新婦が教会に入場する際に花をまく、フラワーボーイ、フラワーガールをやって欲しいの」
「「やるー!」」
「アオン!」
クリスちゃんとマヤちゃんだけでなく、ユキちゃんもやる気満々で答えていました。
もちろん、僕もシロちゃんもお手伝いします。
知り合いに小さい子がいないのもあったところに、僕たちが来たのもあります。
「アンジェラさん、肝心の花びらはあるんですか?」
「ええ、大丈夫よ。冒険者に依頼したものが集まったの」
花びらもあるなら、もう大丈夫ですね。
ちょうど薬草採取につかうカゴが良い大きさだし、明日みんなに渡しておこう。
「それと、ウェンディさんにはベールガールを、アレックスさんにはリングボーイをしてもらいたいわ」
「ええ、任せて下さい」
「僕も頑張ります」
ウェンディさんとアレックスさんも、重要な役目を与えられてやる気満々です。
モニカさんも、重要な役だからしっかりとねと僕たちに話しかけていました。
「ベールガールは、宿のナディアさんにも頼んでいるわ。この話を宿に持っていったら、オリガさんもやるって言っていたのよ。確かに似合うかもしれないけど、一応人妻ですからね」
アンジェラさんは思わず苦笑しちゃったけど、僕もその気持ちは良く分かります。
こんな感じで午前中は過ぎていき、午後になると続々と貴族が領地に到着しました。
顔見知りの貴族も、たくさん屋敷に顔を出します。
軍の人が多いので、僕もアンジェラさんとともに来客対応しています。
このくらいのお手伝いなら、全然へっちゃらです。
「アンジェラ殿は、来客対応で忙しそうだな」
「いえ、弟の晴れ舞台の対応ですから。海軍総司令官殿に置かれても、お忙しい中恐れ入ります」
ビクターさんたち、軍の偉い人はまとまってきたそうです。
シークレア子爵領には海軍の基地があるから、軍の偉い人が集まるのは当然ですよね。
そして、この人も応接室に姿を現しました。
「この度は、父が多くのご迷惑をおかけし大変申し訳ありません。男爵家を代表しまして、深くお詫び申し上げます」
例の男爵家の令嬢が、アンジェラさんに頭を下げていました。
聞けば、まだ十二歳だといいます。
仮統治をしているお兄さんは十六歳らしいし、まさか父親の尻拭いをするとは思ってもみなかったでしょう。
この話には、ヒルダさんも参加しています。
「父は私からみても統治が上手くなく、それでいて自分勝手な判断ばかりしておりました。そのため、兄が成人すると領内の方は兄を頼るようになりました。ただ、父はそのことが面白くないみたいです。そして、国からの街道の害獣駆除の命令書を兄にも見せずに放置していました」
「そして、話がどんどんと大きくなり、ある日姿を消した訳ね」
「三日前までは普通に屋敷にいましたが、どうも視察に行くと言ってこっそりと屋敷を抜け出したみたいです。このタイミングで、ようやく兄は国からの命令書を把握しました」
ヒルダさんも、他の人も兄妹がとても可哀想に思えました。
正直な話、僕もここまでだとは思わなかった。
ビクターさんも、深く考え込んじゃいました。
「国も事は重大だと把握していて、男爵はその職務や権限を全て停止し嫡男を代理当主としている。なんとも嘆かわしいものだが、本人の資質としか言いようがない」
どうも、たまにどうしようもない当主というのは出てくるという。
今回は、嫡男さんが優秀だからこそどうにかなっているのでしょうね。
ちなみに、この後マイスター師団長さんが到着する予定なので、道中の話を聞けるはずです。
すると、とんでもないことが起きました。
ガチャ。
「ほ、報告します。防壁の門にて、男爵家の馬車と見られるものが無理矢理防壁を突破しました」
「な、なんですって?」
アンジェラさんも、とってもビックリする内容です。
もちろん、僕たちも思わずソファーから立ち上がりました。
カンカンカンカン。
更に、非常事態を告げる鐘が一斉に響き渡りました。
これは、とても良くない事態です。
僕は、直ぐに広範囲探索魔法を発動させました。
シュイン、ぴかー!
「あっ、猛スピードで何かが屋敷に向かってきています!」
「間違いなく、男爵家の馬車だろう。屋敷にいる軍属を集めるぞ」
「僕も行きます」
「私も行きますわ。父を止めないと」
ビクターさんの掛け声に、僕と男爵令嬢も立ち上がりました。
そして、みんなで屋敷の外に出た瞬間でした。
キキー、ガシャーン!
「うわあ、馬車が横転したぞ!」
「人を呼べ!」
なんと、屋敷の門の目の前で馬車が激しく横転したのです。
屋敷までは登り坂だから、滑ったのかもしれません。
予想外の展開だったけど、大きな音がしたので屋敷から多くの人が出てきました。
そんな中、僕たちも横転現場に向かいました。
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