第百五十三話 自爆した初心者冒険者
ぴょんぴょん。
と、ここで僕の頭の上に乗っていて暇そうにしていたシロちゃんが、僕の頭から飛び降りました。
ここからは、シロちゃんがメインで戦います。
でも、二人ともふらふらだから、直ぐに終わっちゃいそうだよ。
シュンシュンシュン!
ボロボロ。
「な、何だこりゃー!」
「武器も服も溶けたぞ!」
「「「嫌だー、醜いわ」」」
シロちゃんが、触手を振り回して小さな酸弾を沢山発射しました。
シロちゃんの狙い通りに服はパンツを残して溶けちゃって、ナイフもボロボロになっちゃいました。
パンツいっちょになった二人を、主に女性が見て悲鳴を上げていました。
ちょいちょい。
「くそ、蹴り飛ばしてやる!」
「潰れてしまえ!」
そしてシロちゃんが触手をくいくいとやってかかってこいと煽ると、二人は顔を真っ赤にしてシロちゃんを思いっきり蹴り飛ばそうとしました。
シューン、ボキ!
「「うぎゃーーー!」」
シロちゃんも罠を張っていて、とっても硬い魔法障壁で身を包んでいました。
うーん、二人が魔法障壁を蹴っ飛ばしたら良い音がしたね。
多分、二人の足の指か甲が折れた音だね。
相当激痛なのか、二人は足を押さえながら床の上を転がっていました。
もうこれで終わりだね。
「相手が戦闘不能の為、勝者はレオ君とシロちゃんです!」
「「「わー!」」」
気がついたら訓練場には更に沢山の人がいて、試合が終わるととっても大きな歓声が上がりました。
「うわー、レオ君って本当に強いね」
「なーちゃんも、頑張ればあそこまで強くなれるね」
「うん、闇魔法もかなり強いって分かったわ」
ナナさんにも、闇魔法の凄さが分かったみたいですね。
僕としては、二人を相手にするよりもそっちの方が大事だったよ。
すると、自爆してノックアウトした二人が、うつ伏せのまま僕達の事を睨みつけてきました。
「く、くそ。俺達の事を馬鹿にしやがって……」
「俺達の後ろには、バーサス子爵様がいるんだ。お前らなんて、けちょんけちょんにされるんだ!」
あれ?
そういえば、バーサス子爵って昨日捕まったよね。
という事は、この二人はバーサス子爵の関係者?
僕は、昨日現場となった別荘に一緒にいたギルドマスターと思わず顔を見合わせてしまいました。
そして、ギルドマスターがニコリとしながら舞台上に転がっている二人を見ました。
「バーサス子爵は、昨日犯罪を犯して捕縛されました。という事は、あなた達は犯罪者と関係がありそうですわね」
「「げっ」」
「ふふふ、どんな事を話してくれるかとっても楽しみですわ」
「「あー!」」
ギルドマスターが、二人の足を持ってズルズルと引っ張りながらどこかに消えていきました。
あの二人は、間違いなく守備隊に引き渡されますね。
でも、何となくあの二人のガラが悪い理由が分かりました。
バーサス子爵の別荘にいた人も、見た目は盗賊みたいな人だったもんね。
個人的には二人はうつ伏せのままギルドマスターに引っ張られたので、あれは痛そうだなって思っちゃいました。
「さあ、昼食にしましょう」
「あの馬鹿の事は忘れましょう」
僕が皆の所に戻ると、ユリアさんとイリアさんが声をかけてくれました。
僕も魔力は全然使ってないけど、精神的に疲れちゃったよ。
という事で、皆で食堂に向かいました。
どーん。
「ははは、良い手合わせを見せてもらったぞ」
「皆で色々摘みながら、話そうじゃないか!」
食堂のテーブルをくっつけて、大量の料理が並べられていました。
そして、上機嫌な冒険者の一団が僕達の事を手招きしていました。
「何もやましいことはないぞ。皆でレオの話を聞きたいだけだ」
「因みに、皆の奢りだ。レオの話を聞くだけで、それだけの価値はあるからな」
「アマード子爵領の事や、ここまでに来る道中の事も聞きたいんだってな」
旅で一緒だった冒険者も手招きをしているので、僕達も食堂に向かいました。
「レオは、薬屋の事件に絡んでいたんだろう?」
「適当なポーションを作って、利益をバーサス子爵に賄賂として渡していました。そして、そのポーションの中に毒が入っていました」
「ひでー事をするよな。今朝かわら版も出回っていたが、金儲けの為には平民の命などどうでも良いらしいからな」
この辺までは話して良いと、チャーリーさんもオッケーを出してくれました。
というか、近い内にシェファードさんが街の人に事件の詳細を発表するんだってね。
「因みに道中や村で遭遇したゴブリンの大群を、一体どうやって倒したんだ?」
「えーっと、エアバインドでゴブリンを拘束して、皆さんに倒して貰いました」
「レオ、説明が大分足りないぞ。雑魚ゴブリンは俺らが倒したけど、ゴブリンジェネラルとゴブリンキングはレオの魔法で一発じゃないか」
「しかも俺らは拘束されて動かないゴブリンにトドメを刺すだけだったし、レオは広範囲魔法一発で百匹以上のゴブリンを倒している」
「道中現れたオオカミも、レオが動けなくしてトドメを刺すだけだったもんな。しかも、一緒にいるスライムが完璧な血抜きをしてくれるから買取金額もアップしたし」
「「「おおー、すげー!」」」
ああ、適当にごまかそうとしたら冒険者の人が詳細に説明してしまったよ。
その話を聞いた周りの人が、一気に盛り上がっちゃった。
僕もシロちゃんも、思わずびっくりです。
「じゃあ教会での有名な話だけど、教会に母親が抱えてきた重病の子どもや旅先の宿で病気で苦しんでいたアマード子爵家の先代様をあっという間に治療したってのも本当?」
「あっという間かどうかは分かりませんが、子どもも先代様も治療したのは本当です」
「「「すごーい!」」」
そして、昼食を食べにきた受付のお姉さんにも囲まれてしまいました。
うう、全部本当の事だから中々誤魔化せないね。
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