第百六十六話 明日の僕の予定は?

 ターニャさんは、紅茶を一口つけて気持ちを落ち着かせてから僕に話し始めました。


「実は、元々私もコバルトブルーレイク直轄領へ行く予定でした。しかし私が出発直前に体調を崩してしまったので、たまたまコバルトブルーレイク直轄領に向かうチャーリー様が娘を連れて行ってくれる事になったのです」

「えっ? ターニャさんは、まだ体が悪いんですか?」

「教会の治療を受けたので、今はすっかり良くなったわ。私まで気を使ってくれて、レオ君は本当に優しいわね」


 何でクリスちゃんがチャーリーさんと一緒なのかと思っていたけど、ターニャさんが体調を崩していたのか。

 確かに今はターニャさんの顔色も良いし、体調は良さそうだね。


「娘が毒に冒されたと聞いた時は、胸が張り裂けそうな気持ちでした。そして、娘を助けたのが娘よりも少し大きい男の子だと聞いて、正直な所信じられない気持ちでした」


 ターニャさんが複雑な表情で僕の事を見ているけど、そりゃ僕みたいな小さな子がクリスちゃんを助けたといっても簡単には信じられないよね。


「でも、同行して下さった師団長様もレオ君なら間違いないと仰っていましたし、こうして元気なクリスの顔を見れて本当に安心しました」


 実際にクリスちゃんの顔を見ないと、ターニャさんも安心しないもんね。

 クリスちゃんもターニャさんに会えて嬉しいだろうし、一段落だね。


「クリスもレオ君に治して貰って嬉しいみたいだし、髪飾りも沢山贈って貰ってかえって悪かったわ」

「クリスちゃんもターニャさんに会えなくて、心細いかなと思ったので。シロちゃんと一緒に、どれがクリスちゃんに似合うかなって思って買ったらいっぱいになっちゃいました」

「それだけクリスの事を気遣ってくれた訳ね。レオ君、本当にありがとう」


 改めてターニャさんが僕にお礼を言って、ひとまずターニャさんからの話はおしまいです。


「レオ君には、国からの勲章とは別に軍からの勲章も授ける事になった。元々各地で活躍しているし、実績は申し分ない。それに、ゴブリンキングを倒した事も大きな評価になっている」

「あの、ゴブリンキングは他の冒険者の助けがあって倒せました。僕一人だけでの功績ではないですよ」

「他の冒険者も活躍したという話も、勿論聞いているよ。ただ、ゴブリンキングを倒すまでの過程や、実際にゴブリンキングを一撃で倒したという実績は大きいものだよ。他の冒険者にもキチンと報奨金を支払うから、そこは安心してね」


 師団長さんがゴブリンキングを倒した件で話をしたけど、ユリアさんとイリアさんのヒントがとっても役に立ったもんね。

 キチンと報奨金が支払われるみたいだし、僕も一安心です。

 しかし、新たにもう一つ勲章を貰うなんて……

 勲章を服に付ける機会も無いし、暫くは魔法袋に入れっぱなしだね。


「我が家とフランソワーズ公爵家からは、レオ君に家紋が彫られたコインと謝礼金を渡す事にした。既に質の良い剣を持っているみたいだし、代わり映えのない物で済まないがな」

「あの、えっと。治療費も沢山貰ってますし、もう十分ですよ」

「レオ君らしいな。とはいえ、これはある意味貴族の矜持ってのもあるのだよ。アマード子爵もレオ君の事は随分ともてなした様だし、あの貴族はここまでしたのに何故この貴族はこの程度しかしないって攻撃のネタにされてしまうのだよ」


 うーん、貴族の世界って本当に面倒くさい事ばっかりなんだね。

 僕としてはもうお腹いっぱいな話なのに、それで攻撃するネタにされちゃうなんて。

 でも、他家をしつこく攻撃する貴族ってのは、ゴルゴン男爵やバーサス子爵みたいなあまり良くない貴族だと思うなあ。


「勲章の授与式は、明日代官の屋敷で行う。後はバーサス子爵への聴取の進み具合にもよるが、聴取が終わり次第我々も王都に戻る事になる」

「確かにこれだけの大事件ですから、王都でもやらないと行けない事が沢山ありそうですね」

「そういう事だ。王都にいるバーサス子爵に連なっている者も聴取をしないとならないし、やる事か山積している」


 チャーリーさんか苦笑しながら話してくれたけど、それだけの事をバーサス子爵はやったもんね。

 他にも沢山の罪が出てきそうだし、バーサス子爵はゴルゴン男爵と同じ運命を辿りそうですね。


「クリスも私と一緒に王都へ帰るわよ」

「えー!」

「体調が悪かったのは間違いないんだし、お父様もお兄様やお姉様もクリスの事をとっても心配していたのよ」

「……うん」


 ターニャさんの言葉に、クリスちゃんも嫌々ながらも承知していました。

 クリスちゃんの家族もクリスちゃんを心配しているし、きっと早く逢いたいもんね。


「さて、今日はここまでとしよう。レオ君、悪いが明日の朝別荘まで来てくれるか? 我々と共に馬車で代官邸に向かう事になる」

「はい、分かりました。最初から今着てる服を着てきますか?」

「いや、別荘についてから着替えた方が良いだろう。汚してもなんだからな」


 という事で、明日の予定も決まったので、僕は普段の冒険者服に着替えてから宿に帰りました。

 明日はいよいよ授賞式だし、失敗しない様に頑張らないと。

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