第五百七十八話 ブラウニー伯爵からの依頼

 翌朝、僕たちはセルカーク直轄領に行く支度を整えて玄関に移動しました。

 そして、玄関には仕事で不在のギルバートさん以外の面々が揃っています。


「レオ君、気をつけて行ってくるのよ」

「体調には、十分気をつけてね」


 モニカさんとターニャさんが、僕の頭を撫でてから抱きしめてくれました。

 やっぱり、何だかんだいって心配みたいですね。


「お土産をたくさん買ってきますね」

「ええ、楽しみにしているわ」

「旅の話を聞かせてね」


 ウェンディさんとアレックスさんは、僕のことを笑顔で送り出してくれました。

 基本的に、ギルバートさんの出張とあまり意識が変わらないみたいです。


「お兄様、お土産お願いします!」

「おいしいのがいいな」


 クリスとマヤは、危険が少ないとみるやいなや案外ちゃっかりしていた。

 僕たちもちょっと苦笑しつつ、二人の頭を撫でて上げました。

 そして、馬車に乗り込みます。

 軍の施設に行ったら軍の馬車に乗り込むので、僕たちを送ったら直ぐに戻ってきます。


「いってきまーす!」

「アオン!」

「「いってらっしゃーい!」


 みんなの見送りを受けながら、僕たちは馬車の窓から手を振りました。

 そして、僕たちを乗せた馬車は直ぐに軍の施設に到着しました。

 ここからは軍の馬車に乗り込むんだけど、その前に会議室に来てほしいと言われました。

 ジェシカさんや他の面々と一緒に会議室に行くと、ブラウニー伯爵が僕たちのことを待っていました。


「おう、忙しいところ悪いな。座ってくれや」


 勧められるがままソファーに座ったけど、ジェシカさんはソファーの後ろに移動して立っていました。

 僕の専属侍従だからしょうがないのかなと思いつつ、ブラウニー伯爵の話を聞くことになりました。


「目的地のセルカーク直轄領とアマード子爵領ではなく、道中通過する伯爵領の件だ。ヨーク伯爵領と言うがちょっときな臭い話があってな、どうも当主が重病で跡継ぎ争いが起きているという」

「えっ、そんなことが起きているんですか?」

「ああ。正妻の子と側室の子がほぼ同時に出生したのもあってか、まだ後継者が決まっていないらしい。とはいっても、その後継者もまだレオよりも少し年上なだけだ」


 当主もまだ若い人なんだけど、年々体調が悪くなっていたという。

 軍人タイプで同じ爵位のブラウニー伯爵に、体調が悪くなる前に手紙を出していたという。


「まあ、レオならそいつを治療できるだろう。実際に治療してくれと、俺宛にも連絡が入った。だから、俺からレオへの指名依頼として処理しておく」

「流石に、軍から僕への指名依頼にはできないですもんね」

「そういうことだ。まあ、そいつもなんとなく色々思い当たる節があるみたいだ」


 現地には、バーボルド伯爵領を出発して四日後に着くそうです。

 結構王都に近いところなんですね。

 もちろん、この件は受けることにしました。

 いずれにせよ、その伯爵領には行くことになるのだし、避けて通れない件ですね。

 話はこれで終わったので、会議室を出て入り口に移動していよいよ馬車に乗ってバーボルド伯爵領に向かいます。

 バーボルド伯爵領にある第一師団にはたまに治療で行っていたので、特に緊張することなく馬車もトラブルなく一時間ピッタリで到着しました。

 バーボルド伯爵家の屋敷に行くと、何故かご機嫌なネストさんが僕のことを出迎えてくれました。


「いやあ、レオ君も遂に正式な貴族の仲間入りか。おっと、ポラリス卿って呼んだほうがいいかな?」

「ネストさん、楽しんでいますね……」

「最初くらいしかできないがな。あの謁見で馬鹿が馬鹿なことをしたから、あの後話す機会がなかった。夜会も元々別件があって行けなかったし」


 ネストさんは上機嫌で僕の背中をバシバシと叩いていたけど、自分の知り合いがこうして出世するのが嬉しいそうです。

 ネストさんも第一師団に行くそうなので、別の馬車に乗って軍の施設に向かいました。

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