第二百二十九話 オオカミとの戦いと新しいお友達
もぞもぞ。
「うーん。あっ、朝だ。そっか、旅の途中だったっけ」
「「すー、すー」」
僕は、温かいベッドの中で目覚めました。
僕はまだ夢の中のユリアさんとイリアさんに両側から抱かれていたけど、もぞもぞと抜け出しました。
トイレに行ってから毎朝の訓練をやろうと思い、僕はもぞもぞと着替え始めました。
窓の外を見ると、とっても良い天気です。
今日も、絶好の旅日和ですね。
「「「うえあおえ……」」」
馬車乗り場に行くと、顔が真っ青で見ただけでも体調の悪い冒険者の姿がありました。
でも、漂ってくるお酒の臭いで何があったかが分かります。
「どうせ、夜遅くまで飲んで騒いていたんでしょうね」
「放置したいところだけど吐かれても迷惑だから、悪いけど回復魔法をかけてあげて」
僕も仕方ないなあと思いながら、冒険者に回復魔法をかけます。
馬車の中で吐かれたら、とっても迷惑ですもんね。
ともあれ、出発です。
「今日は、後ろにいる連中は戦力にならないと思った方が良いわね」
「そうね。今度は寝不足で寝始めたし」
「「「ぐがー」」」
馬車が進み出すと、直ぐに後ろの席から怪獣の様なイビキが聞こえてきました。
昨夜は、遅くまで楽しかったみたいですね。
馬車は順調に進んでいき、遂にアマード子爵領を抜けました。
「ここからは、男爵領を抜けていくわ。どこまで街道に潜んでいる動物が駆除されているか分からないから、充分に気を付けましょうね」
「といっても、この辺りで出てくるのはオオカミくらいよ。ツノウサギとかは、襲ってこなければ倒さなくて良いわ」
「はい!」
僕はユリアさんとイリアさんの声に、元気よく応えました。
大きな街道は、人々が安全に通行出来る様に定期的に兵が巡回して対応するのが義務付けられているんだって。
でも、動物の駆除のタイミングなんて旅人は知らないから、ここからは要注意です。
パカパカパカ。
がさがさ、がさがさ。
「あっ、茂みが揺れています。えーっと、五匹位反応があります」
「早速、何かがお出ましだね」
「直ぐに準備しないと」
「「「うへーい」」」
街道に入って暫くすると、探索魔法に反応がありました。
念の為に、アマード子爵領を抜けてから周囲を探索していたんです。
ユリアさんとイリアさんだけでなく、酔っぱらっていた冒険者達も体に鞭を打って準備を始めました。
「「「グルルルル……」」」
「確かにオオカミだね。頭数は少ないけど、飢えているのか目がぎらついているわ」
「こういう時は攻撃的になっているから、充分注意しないと」
ユリアさんとイリアさんの言葉に、僕も注意します。
そして、オオカミがこちらを警戒している内に、僕は魔力を充分に溜めました。
「エリアスタンでオオカミを痺れさせます!」
バリバリバリ!
「「「ギャウン!」」」
「あっ、やり過ぎちゃいました……」
「うん、本当にレオ君の魔法は凄いわね」
「一瞬で終わっちゃったよ」
魔力を溜め過ぎたのか、一発でオオカミを沈黙させる事に成功しました。
ユリアさんとイリアさんは、ちょっと僕に呆れながらもオオカミにトドメをさしています。
と、ここでオオカミにトドメをさし終えたユリアさんとイリアさんが、僕に向けて手招きをしてきました。
「レオ君、折角だから血抜きの仕方を教えてあげるわ」
「まだレオ君には血抜きは早いかもしれないけど、覚えておいて損はないわ」
おお、冒険者らしい事だね。
良い機会なので、シッカリと覚えないと。
「先ずは木の下の地面に穴を掘って、その上に獲物をぶら下げます」
「ぶら下げた獲物の血管とかを切って、穴に血が溜まる様にします。内蔵とかの、腐りやすい所も取っちゃうよ」
うん、手際良くどんどんと倒したオオカミを処理していきます。
こう見ると、ユリアさんとイリアさんは、熟練の冒険者って感じだね。
「結構凄い臭いがしますね」
「こればっかりはね」
「でも、ちゃんと処理をしないと、直ぐに駄目になっちゃうよ」
「「「うっぷ……」」」
内蔵とかの処理をすると、何ともいえない臭いがしてきました。
酔っ払っていた人は、またもや吐きそうになっていました。
「処分した血や内臓は、穴に埋めておくよ。川があれば、腐らない様に水に浸けて肉を冷やしたりするわ」
「下手すると、血の臭いで別の動物や魔物がやってくるからね」
「じゃあ、今日は水魔法で冷やして、僕の魔法袋に入れておきますね」
僕は冷たい水の玉を作って、オオカミを包んで冷やします。
ユリアさんとイリアさんが穴を埋め戻していると、何だか可愛いものが茂みの中からぴょこぴょこと現れました。
これってもしかして……
「もしかして、これがスライムですか?」
「そうよ。通称、森のお掃除屋さんね。色々な物を消化して分解してくれるのよ」
「きっとオオカミの血抜きをしていたから、集まってきたのよ」
主に透明な青色と緑色のスライムが、穴を埋めた辺りに集まっています。
こうしてみると、スライムって中々可愛いね。
と、集まったスライムの中にとても小さいけど他のスライムと色が違うのがいました。
僕は、その小さなスライムを手の上に乗せました。
「わあ、白っぽい小さなスライムだよ」
「へえ、珍しいカラースライムだわ」
「成長すると、魔法が使えるはずだよ」
おお、そうなんだ。
魔法が使えるスライムっているんだね。
すると、僕の片手でも充分な小さなスライムがじーっと僕の事を見ていました。
「ふふふ、そのスライムはレオ君と一緒にいたいみたいね」
「折角だから、仲間にしてあげたらどうかな? スライムだから、何でも食べるわよ」
わあ、仲間になってくれるんだ。
何だかとっても嬉しいなあ。
「じゃあ、白いスライムだからシロちゃんだね」
シロちゃんって名前を呼ぶと、喜んだのか僕の頭の上や肩をぴょこぴょこと飛び跳ねていました。
「わあ、とっても可愛いわね」
「そうね。こう見ると、レオ君も年相応の子どもだね」
ユリアさんとイリアさんが、ニコリとしながら僕とシロちゃんの事を見ていました。
僕は新しいお友達ができて、嬉しくてそれどころじゃなかったんだけどね。
「ふう、スッキリした。だいぶ楽になったな」
因みに酔っぱらいが戻した物には、何故かスライムは集まりませんでした。
スライムでも、処理したくない物もあるんだね。
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