第三百六十四話 手紙を預かります

 そして新たな旅に出る数日前、僕はお仕事終わりにお屋敷に呼ばれました。

 何でも、僕に渡したいものがあるそうです。

 僕は急いでお風呂に入って、着替えてから迎えの馬車に乗り込みました。

 屋敷に着くと、直ぐにいつもの応接室に案内されました。

 すると、セルゲイさんとアンジェラさんの他にイレーナさんとワイアットさんも座っていました。

 一体なんだろうなと思いつつ、僕もソファーに座りました。

 すると、ワイアットさんが僕に話しかけてきました。


「忙しいところ、呼び出しをして悪かった。仕事も追い込みをかけているそうだね」

「いえ、全然大丈夫です。僕も、最近は他の人のサポートをしていましたから」

「新馬一家の事件で巻き込まれた、あのスラム街の男の子の件だね。レオ君が旅に出ても、優秀な後釜ができて良かった」


 ワイアットさんも、スラム街の男の子がとても頑張っているのを知っていたんだ。

 これなら造船場も大丈夫だと思っていたら、ワイアットさんが一枚の封筒を僕に差し出してきました。


「その封筒には、マイスター師団長宛に書いた手紙が入っている。マイスター師団長にあったら、その封筒を渡してくれ」

「大切にお預かりします」

「といっても、レオ君がこんな事をしたといつも噂になっているから、マイスター師団長もレオ君が元気にやっているのは知っているだろう」


 うう、一体どんな噂が広がっているんだろうか。

 僕はちょっと苦笑しながら、ワイアットさんからの封筒を受け取って魔法袋にしまいました。

 ワイアットさんの話が終わると、今度はセルゲイさんが僕に話しかけてきました。


「私からも、レオ君にお礼を言わないとならない。レオ君か我が領に来て荒海一家を壊滅させた事がきっかけで、様々な改革をうてる事ができた」

「荒海一家の壊滅は、僕とシロちゃんだけでなく街の人の力がとても大きいですよ」

「そうだな。街の人の、荒海一家への鬱憤が溜まっていたのもあるだろう。それを差し引いても、街の人への治療もしてくれた。とても感謝している」


 荒海一家の壊滅には、オリガさんの力が一番大きかったと思うよ。

 それに、街の人の治療も沢山できて、僕としても大満足です。

 そして、セルゲイさんが二通の封筒を差し出してきました。


「私から、二通の手紙を用意した。一つがバーボルド伯爵宛の手紙だ。バーボルド伯爵領に着いたら、この手紙を渡して欲しい。もう一つが、婚約者のいるブランフォード子爵宛の手紙だ。こちらは、王都に着いてからで構わないよ」

「分かりました。確実に届けます」

「バーボルド伯爵もブランフォード子爵も、武人だがとても良い人だ。直ぐにレオ君の事を気に入るだろう」


 バーボルド伯爵もブランフォード子爵も、サンダーランド辺境伯と似たような感じなのかな。

 ともあれ、僕もお二人に会うのがとっても楽しみです。

 あっ、ちょうどアンジェラさんとイレーナさんがいるから、作ったピンブローチを渡しちゃおう。

 僕とシロちゃんは、作ったピンブローチを魔法袋とアイテムボックスから取り出しました。


「アンジェラさん、イレーナさん、色々とお世話になりました。これは、僕とシロちゃんが作ったピンブローチです」

「まあまあ、わざわざ申し訳ないわ。幸運のアイテムと言われる、黒髪の天使様が作ったピンブローチを頂けるなんて」

「こちらこそ、レオ君には本当にお世話になったわ。大切に使わせて頂くわね」


 僕とシロちゃんが作ったピンブローチを、アンジェラさんもイレーナさんも大切に受け取ってくれました。

 これで話は終わりなんだけど、更にセルゲイさんが話しかけてきました。


「レオ君、是非とも我が家で夕食を食べていってくれ。シーフードトマトパスタを用意した」

「わあ、僕の大好きなメニューが合体しているんですね!」

「喜んでいる様子を見ると、年相応の男の子って感じだな。では、食堂に移動しよう」


 こうして、僕とシロちゃんは食堂に移動してとっても美味しいシーフードトマトパスタをご馳走になりました。

 何だか、今まで食べたパスタの中でも一位になりそうな美味しさだったよ。

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