第二百三十五話 少しゆっくり頑張ろう
「うーん、はっ、ここはお屋敷の部屋?」
僕は、ベッドの中で目を覚ましました。
まだ日中だし、懐中時計型の魔導具を見たらちょうどおやつの時間です。
ぐー。
「あっ、お腹鳴っちゃった……」
ちょうどシロちゃんが起きたタイミングで、僕のお腹がなっちゃいました。
シロちゃんもお腹ペコペコみたいです。
魔力を沢山使っちゃったからなあ。
僕とシロちゃんは、部屋を出て食堂に向かいました。
「あら、レオ君もう起きても大丈夫なの? 体は大丈夫なの?」
部屋を出た所で、直ぐにスーザンさんに出会いました。
スーザンさんは、僕の体を心配そうに何度もペタペタと触ってきました。
ぐー。
「あの、だいぶ魔力は戻ったのですけど、お腹空いちゃいました……」
「ふふ、お腹が待ち切れないって感じだわね。夕食も近いから、簡単な物にしましょう」
スーザンさんが僕の手を引きながら、食堂に連れて行ってくれました。
そして、甘いホットケーキを頼んでくれました。
「レオ君、明日の治療はお休みだよ」
「えっ、僕全然大丈夫です。明日には魔力も回復します」
「レオ君が怪我人を一生懸命治してくれるのはありがたいんだけど、やっぱり無理をさせちゃったかなって私達も反省しているの。強力な回復魔法が使えるレオ君に、私達が甘えちゃったのよ」
スーザンさんが僕に申し訳無さそうに話をしてくれたけど、僕としては目の前で苦しんでいる人をどうにかしたいなって思っただけなんだよね。
シロちゃんも僕と同じ考えだったらしく、うーんって考えちゃいました。
ガチャ。
「スーザンすまんな、レオ君に話をしてくれて」
「こういう事は、女性が話をした方が良いので」
更に、食堂にボーガン様が入ってきました。
ボーガン様はスーザン様をねぎらいつつ、どかりと僕の前の席に座りました。
「人は誰もが人智を超えた事が起きると、それを奇跡と呼ぶ。そして、その奇跡にすがりたくなるものだ。レオ君の回復魔法は、今やその奇跡のレベルに達している」
ボーガン様がここまで言って、改めて僕に話しかけてきた。
「だが、レオ君は魔法が使えるだけのごく普通の男の子だ。その生い立ちの関係で、常に頑張らないとと強く思う所はあるみたいだ。だからこそ、周りの人間がレオ君の事をコントロールする必要があった。私達は、レオ君の奇跡の力ばかりに目がいき、レオ君の事を考えていなかった。非常に申し訳ない」
「ぼ、ボーガンさん、謝らないで下さい。僕は、目の前で苦しんでいる人を助けたいって思っただけなんです」
ボーガンさんが僕に謝ってきたので慌てて否定したけど、やっぱり無理をしたからたおれちゃったのかなって一瞬思っちゃいました。
「なので、もう少しゆとりのある治療計画にしよう。レオ君は明日は休み、これは決定事項だ。そして、大部屋にいる者を二日かけて治療し、個室にいる者を二日かけて治療しよう。四肢の切断などの重症者が二人いるから、一人一日にする」
「はい、分かりました……」
ぐしゃぐしゃ。
「そう、悲しそうな表情をするな。私も回復魔法が使える者を知っているが、一日十人が限界だ。レオ君が凄い魔法使いって事は、私が保証する」
何だか悔しい気持ちもあって、僕はちょっと泣いちゃいました。
そんな僕の頭を、ボーガン様がちょっと乱暴に撫でてきました。
「と言っても、休めと言っても休めないのがレオ君だ。だから、薬草採取やポーション作りなら許可しよう」
少し苦笑しながら、ボーガン様が僕がしていい事を言ってきました。
そういえば、サンダーランド辺境伯領についてから薬草採取はしていないね。
僕とシロちゃんは、気持ちを切り替えて明日は薬草採取を頑張る事にしました。
「はい、ホットケーキができました。フルーツも付けてありますよ」
「わあ、ありがとうございます! とっても美味しそう!」
「ふふ、こう見るとやっぱりレオ君は普通の小さな男の子ですわね」
料理人さんが、話が終わるタイミングを見計らってとっても美味しそうなホットケーキを持ってきてくれました。
シロちゃんの分もあって、はちみつがたっぷりとかかっていてとっても甘くて美味しそうです。
落ち込んだ気持ちも美味しそうなパンケーキを目の前にしてだいぶ回復し、シロちゃんも早速美味しそうにホットケーキを食べ始めました。
そんな僕の事を、スーザンさんが優しく頭を撫でてくれました。
後であったチェルシーさんとマシューさんにも僕の体調を聞かれたけど、とっても甘くて美味しいホットケーキを食べた後だったので元気いっぱいになっていました。
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