第二百三十四話 今日は重傷者の治療です
昼食後は、予定通りチェルシーさんと一緒に治療院へ向かいます。
「行ってきます!」
「行ってくるわ」
「気を付けてな」
僕は見送りに来てくれたボーガン様に手を振りながら、僕とシロちゃんとチェルシーさんを乗せた馬車は進み出しました。
今日明日で、新たに治療院に入院した人と重症者の治療を行う予定です。
という事で、先ずは第一治療院に向かいます。
「大部屋に負傷した兵を運んでおります。個室には、重症の兵がおります」
あいにくブラットリーさんは外出中らしいので、代わりにシスターさんが僕達を案内してくれました。
入院している人はそれ程多くないので、今日はシロちゃんと手分けして個別に治療を行います。
ぴかー!
「はい、これで終わりです。痛みはどうですか?」
「これは凄い。腕の痛みが全くなくなったぞ」
「スライムも治療出来るのか。黒髪の魔術師は、本当に凄いな」
体の調子を確認して回復魔法をかけるだけなので、一人一分もあれば完了します。
シロちゃんも手伝ってくれるので、大部屋でも十分もあれば完了します。
「レオ君は治療の腕も凄いけど、笑顔で怪我人に接するのがとても良いですわね」
「そうですわね。怪我人も笑顔になっていますし、とても良い事ですわ」
僕の治療を、チェルシーさんとシスターさんが褒めてくれました。
僕としては厳つい人にも慣れているし、お話をするのは全く問題ないんだよね。
どんどんと治療を続けて行き、一時間もかからずに大部屋にいる人への治療は完了しました。
ここからは、個室に入院している人への治療です。
「うーん、腰だけじゃなくて胸にもモヤモヤがありますね。一緒に治療しちゃいます」
個室に入院している人も、治療については変わりありません。
ここでも、シロちゃんと手分けをして治療を行なっていきます。
因みに、シロちゃんには別のシスターさんがついてくれています。
「レオ君、そんなに一気に治療して大丈夫なの?」
「全然平気ですよ。教会で治療を行なったりすると、もっと多くの人を治療しますよ」
「レオ君は、本当に治療に慣れているのね」
チェルシーさんは僕の治療ペースに驚いていたけど、魔力もまだまだ沢山あるし全然平気です。
でも休憩は取った方が良いって事になったので、僕とシロちゃんはチェルシーさんと一緒に大教会の応接室に向かいました。
「あっ、シスター、お帰りなさいませ。随分とお早いお帰りでしたが、何か問題でもあったのですか?」
「いいえ、問題どころかもう全員の治療が終わってしまいましたわ。レオ君に、甘い物とお茶を出してくれませんか?」
「ええ! もう終わったのですか? 直ぐに用意いたします」
大教会に入ると、若いシスターさんがとってもビックリしながらお茶の用意をしに行ってくれました。
うーん、僕としてはそこまで早く治療を終えたって感覚はなかったんだけどね。
「実は、治療してくれたレオ君へと退院した人から贈り物がありまして。是非とも召し上がって下さい」
出された果物とお茶とは別に、テーブルにはどーんと多くのお菓子が置かれていました。
これが、全部僕への贈り物なんだ。
とっても有り難いけど、うーん、この量はどうしようかな……
「わあ、こんなに沢山! でも、僕とシロちゃんだけでは食べきれないので、少しだけ貰って孤児院とか街の人にもあげて下さい」
「レオ君は本当に心も美しいですわ。その様にしますわね」
シロちゃんが「えっ!」って表情をしたので、お菓子は少し多めに貰いました。
孤児院にいる子も、お菓子は欲しいはずだよね。
甘い物も食べたし、休養もバッチリです。
僕達は馬車に乗って、次の第二治療院に向かいます。
きらー!
「はい、これで大丈夫ですよ」
「おお、足が動くぞ!」
第二治療院でも、僕がやる事は変わりありません。
シロちゃんと手分けをして、怪我をしている人を治療します。
あっという間に大部屋の怪我人の治療を終えて、個室に入院している怪我人の治療を行ないます。
ここでも順調だったのですが、最後に治療する人は僕の想像以上の重傷でした。
「う、ううっ……」
「あっ、この人肘から先がないですよ!」
「国境で起きた紛争で、帝国兵に切られたんです……」
左腕の切断だけじゃなく他にも打撲痕が複数あり、とっても苦しそうにしています。
チェルシーさんも、普通に歪む怪我人を見て悲しそうな表情に変わってしまいました。
でも、どうやったら治療できるのかな……
ちょんちょん。
「あっ、そうか。腕があるイメージで治療すれば良いんだね!」
シロちゃんが、僕に解決方法を教えてくれたよ。
先ずは、やってみないとね。
魔力も半分以上あるし、全部使うつもりでやってみよう!
シュイーーーン!
「す、凄い魔力が集まっていますわ」
僕とシロちゃんが凄い勢いで魔力を集めていると、一緒にいたシスターさんが物凄くビックリした表情に変わりました。
腕がちゃんとあるイメージで、魔法を放たないと。
僕とシロちゃんは、お互いに集中しました。
「いきまーす!」
シュイン、シュイン、キラーーーン!
複数の魔法陣が怪我人の周りに現れて、一気に眩い光が病室を包み込みました。
あまりの魔法の眩しさに、チェルシーさんもシスターさんも腕で光を遮っています。
上手くいった手ごたえはあったけど、果たしてどうかな?
「すー、すー」
「そ、そんな。腕が生えています。奇跡が、奇跡が起きました……」
「レオ君の魔法って、もはや神のレベルにあるのでは……」
良かった。
怪我人の腕が綺麗に再生できていて、打撲痕も治って呻き声から穏やかな寝息に変わりました。
シスターさんとチェルシーさんは、信じられないような何だかぼんやりとした表情をしていました。
「これで大丈夫、あららら」
バシッ。
「もう、レオ君無理をするからよ。丁度今日は全て終わったから、屋敷に帰りましょうね」
魔力が尽きちゃってふらふらになっちゃった僕の事を、チェルシーさんが素早く抱きとめてくれました。
シロちゃんも、僕の腕の中でフラフラとしていました。
ちょっと頑張りすぎちゃったかな?
「シスター、流石にこれだけの事は枢機卿様に報告して下さい。あと、他言は無用です」
「はっ、はい!」
薄れゆく意識の中で、チェルシーさんがこんな話をシスターさんに言っていました。
僕としては、治療が上手くいって良かったなあって思いながらチェルシーさんの腕の中で眠っちゃいました。
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