第四百二十七話 大教会の治療施設での治療
何だろうなと思いつつしばらく待っていると、かなり慌てた様子で三人の女性が僕のところにやってきました。
何だろう、みんなあわあわとしているね。
「くく、黒髪の天使様、お待たせして申し訳ありません。この教会の司祭を務めております。ただいま上のものが会議で不在でして、代わりに私がご案内いたします」
「司祭様、わざわざ来て頂きありがとうございます。よろしくお願いいたします」
「こ、こちらこそよろしくお願いします」
僕の方が落ち着いているので、何だか面白い構図ですね。
治療施設は大教会の敷地の一角にあるので、司祭様とシスターさんの後をついていきます。
おお、治療施設もとっても大きくて、レンガ造りの二階建ての建物です。
治療施設に入って大部屋に行くのかなと思ったら、重症者用の個室に案内されました。
何かあったのかな?
部屋に入ると大怪我を負った男の子がベッドに寝ていて、心配そうに見つめる両親も怪我を負っていました。
「申し訳ありませんが、先にこの子をお願いいたします。昨晩強盗に襲われて、先ほど運ばれてきたばかりです。応急処置をしたのみでして……」
シスターさんが心苦しく話をしているけど、なんと男の子の右手がなくなっていた。
男の子は苦しそうに荒い呼吸をしているし、とっても辛そうです。
ここは、直ぐに治療をしてあげないと。
両親も怪我をしているので、手分けして治療をしよう。
「シロちゃん、一緒に治療をしよう。ユキちゃんはご両親の治療ね。ジェシカさん、包帯を外すのとかを手伝って下さい」
「アオン!」
「畏まりました」
僕とシロちゃんは、魔力を溜め始めました。
ユキちゃんも両親の治療を始めます。
ジェシカさんは、僕と一緒に男の子のところに向かいました。
既に魔力は十分に溜まっているので、さっそく治療を始めます。
シュイン、シュイン、シュイン、ぴかー!
「な、何という魔法陣の数でしょうか。黒髪の天使様は、一体どのような魔法を使うのでしょうか?」
「凄い光の奔流です。部屋の中が、光り輝いています……」
シスターさんの唖然とする声が聞こえたけど、僕とシロちゃんの魔法の同時発動はやっぱり凄い光が出てくるね。
あと、治療して気がついたけど、この男の子は胸の病気も持っていたんだ。
悪いところは、まとめて全部治療しちゃいます。
ユキちゃんも、両親の治療を終えたみたいです。
「すう、すう」
「そ、そんな馬鹿な……」
「奇跡が、奇跡が起きたわ……」
治療を終えた男の子を、両親が呆然としながら見ていました。
男の子の右手も上手く再生できたし、胸の病気も治りました。
ジェシカさんが男の子の包帯をとって、傷口の確認をしてくれました。
完治しているので、問題なさそうです。
それに、そこまで魔力も使っていないんだよね。
「怪我をしたところと併せて、胸の病気も治療しました。出血が多かったみたいなので、暫く様子を見て下さい」
「はっ、はい。分かりました」
「そ、そんな、失った手が元通りに……」
「黒髪の天使様の魔法は、こんなにも凄いんですね……」
司祭様とシスターさんは治療の様子を見て呆然としているけど、僕とシロちゃんはいつもこのくらいの治療をしているので特に気にしていません。
ユキちゃんも、この前バーボルド伯爵領で僕とシロちゃんの治療を見ているもんね。
ジェシカさんにもどんな治療をするか説明しているし、事前に話していたので驚いてはいたけど呆然とはしなかった。
じゃあ、次の人の治療に移りましょう。
「司祭様、シスターさん、次は誰を治療すれば良いですか?」
「あっ、大部屋に行きましょう」
「大部屋は全部で十室ありますので、何日かに分けて……」
大部屋は十室あるけど、一部屋どのくらい入院患者がいるのだろうか。
午前中しかいられないし、できるだけ多くの人を治療したいなあ。
そう思いながら、大部屋に着きました。
おお、二十人くらい入院患者がいるね。
「シロちゃん、ユキちゃん、今日はちょっとペースを早めにして治療しよう!」
「アオン!」
「私もお手伝いします」
こうして、皆で手分けして治療を始めました。
ジェシカさんは、シロちゃんとユキちゃんの補助をしてくれます。
でも、大部屋で治療する時にしている入院患者とのお話も忘れません。
「黒髪の天使様って子どもだと聞いていたけど、本当に小さい子なのね」
「これでも、冒険者活動し始めた時よりもずっと大きくなりましたよ」
「まだまだ小さいわよ。もっと食べて、大きくならないとね」
腰の悪いおばさんを治療したけど、治療したお礼ってことでお菓子をもらっちゃいました。
たまに、こうしてお菓子を貰うことがあるんですよね。
シロちゃんやユキちゃんたちも、ジェシカさんに貰ったお菓子を預けています。
「あの、シロちゃんとユキちゃんがお菓子をくれるのですが……」
「ジェシカさんが手伝ってくれたお礼だそうです。貰って下さい」
「アン!」
「わざわざ、ありがとうございます」
ジェシカさんもとっても頑張ってくれたので、僕としてもとってもありがたいです。
こうして、午前中に六つの大部屋で入院患者している人を治療しました。
「半分残っちゃいましたけど、今週また来る時に続きを行います」
「いえいえ、こんなにもたくさんの人を治療して頂き感謝します。教会を代表して、お礼を申し上げます」
治療施設前で司祭様と挨拶をして、帰ることになりました。
沢山の人を治療したので報酬の再計算が必要らしく、報酬を受け取るのは後日になりました。
明日は軍の治療施設に行くから、今日以上に頑張ろう。
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