第四百四十三話 大きな事故が!

 とはいえ、僕は普通にしていれば良いので、そのまま教皇猊下の側にいます。

 そして、全員が祈りのポーズをしたので、僕も膝をついて手を組みます。


「それでは、これから安息日の礼拝を始める」


 教皇猊下の合図で礼拝が始まったので、僕も目を閉じます。

 うーん、何を言っているのか良く分からないなあ。

 日頃のことを、神様に感謝することを言っているみたいです。

 僕も心の中で、元気でやっていると神様にお礼を言おうと。


 ザワザワザワ。


 あれ?

 教皇猊下の祝詞みたいなのが終わったら、またまたざわざわとしているよ。

 何かあったのかなと思って、僕も目を開けました。


 ぴかー。


 おやおや?

 何故か天井のステンドグラスから、ちょうど僕のところに光が当たっているよ。

 僕もシロちゃんも光魔法を使っていないし、たまたまっぽそうです。


「おお、何とも神々しいお姿なのだろうか」

「光が、黒髪の天使様を祝福しているみたいだわ」

「黒髪の天使様は、まさしく天使様なのですね」


 あの、町の皆さま。

 多分、偶然光が僕に集まっているだけで、天使様でも何でもないですよ。

 とはいえ、今は何も言えないよ。

 チラリと例の四人組を見たけど、僕に謝った貴族令嬢は町の人と同じく凄いものを見たと感激していて、残りの三人は顔が白くなってあわあわとしています。

 えーっと、体調は大丈夫なのかな?

 流石に、ちょっと心配です。


「皆のもの、これにて礼拝は終了だ。ちょっとした奇跡が起きたが、黒髪の天使様にとっては些細なものだろう」


 教皇猊下、僕のことをサラッと流したけど、その流し方は誤解を生むと思うよ。

 シロちゃんたちと合流しようと思ったら、ここでちょっとしたトラブルが発生しました。


 ズドーーーン。


「な、何だ何だ?」

「地震じゃないな」

「何かが崩れたか?」


 突然大きな振動とともに、何かが崩れる音がしました。

 僕だけでなく町の人もざわめいている中、数人のシスターさんが教会内に慌てながら駆け込んできました。


「教皇猊下、大変です。近くの建設現場で事故が起きました。複数の怪我人が運び込まれております」

「なんということか!」


 さっきの振動は、事故が原因だったんだ。

 怪我人も出ているみたいだし、大変なことになっています。

 僕は、迷わず教皇猊下に言いました。


「教皇猊下、直ぐに治療に行きます!」

「レオ君、すまぬが頼む。手の空いているものは、救助を手伝うように」

「「「はっ」」」


 治療となれば、僕たちの出番です。

 シロちゃんたちと合流して、教会内かな教会前に設営中の無料治療を行うテントに向かいました。


「「「うっ、うう……」」」


 すると、既に五人の怪我人が運ばれていて、かなり痛そうに呻いています。

 簡易ベッドに寝かせられているけど、もっと怪我人が運ばれてきそうですね。


「シロちゃん、ユキちゃん、頑張って治療しよう!」

「アン!」

「私もお手伝いいたします」


 手分けすれば直ぐに治療が終わるので、僕たちは重傷度に併せて治療を行います。

 ユキちゃんとジェシカさんも、軽傷者を治療します。


 シュイン、ぴかー!


「これで骨折は良くなりました。痛いのはどうですか?」

「スゲーな、全く痛くねーぞ!」


 幸いにして、運ばれてきた人は骨折で済んでいました。

 このくらいなら、ユキちゃんでも治療できますね。

 更に四人運ばれてきたけど、一人だけ重傷者がいました。


「がっ、ぐっ……」

「おい、大丈夫か?」

「しっかりしろ!」


 建設現場の仲間と思わしき人が担架を運んできたけど、両足を骨折しています。

 かなりの痛さで、顔が歪んでいますね。

 この人の治療は、シロちゃんと一緒に行おう。


「シロちゃん、行くよ!」


 シロちゃんは既に魔力を溜めていて、スタンバイオッケーです。

 僕も、溜めた魔力を一気に開放しました。


 シュイン、シュイン、ぴかー!


「す、すげー……」

「これが、黒髪の天使様の魔法……」


 重度の骨折とはいえ、このくらいなら全然大丈夫です。

 職人さんが驚く中、無事に治療が終わりました。


「すみません、あと何人運ばれてきますか?」

「あ、ああ、あと一人、親方だ」

「そういえば、親方はどこにいった?」


 職人さんも、親方さんの行方が分からないみたいです。

 その時、聖騎士が一人の怪我人を乗せて担架を運んできました。

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