第三百七十三話 バーボルド伯爵
そして、昼食から少し経った時でした。
コンコン。
「失礼します。バーボルド伯爵様が来られました」
「そうか。入ってくれ」
この場の主役その二の、バーボルド伯爵が師団長執務室に入ってきました。
おお、茶髪を短く刈り込んだイケメンなんだけど、マイスター師団長さんよりも背が高くて筋肉ムキムキだよ。
領主っていうよりかは、前衛にいる兵士って体型だよ。
「バーボルド伯爵、忙しいところわざわざ来て貰ってすまない」
「いやいや、わざわざ出向くだけの価値が私の目の前にある。私とて、黒髪の魔術師がどんな存在なのか興味津々だよ」
マイスター師団長さんと握手をしているバーボルド伯爵は、ニヤリと僕の事を見ていました。
きっとバーボルド伯爵は、僕の魔法に興味津々なんだね。
僕も、マイスター師団長さんの隣に移動して、バーボルド伯爵に挨拶をします。
「初めまして、僕はレオです。このスライムはシロちゃんです」
「ネスト・バーボルド伯爵だ。私の事は、ネストで構わない」
ネストさんの手はとても大きくて、何だかごつごつしているよ。
剣士の手って感じです。
それでいてシロちゃんにも握手をしてくれたから、とっても良い人です。
僕達は、これからの話をする為に応接セットのソファーに座りました。
「レオ君には、半月は集中的に怪我人の治療を行って欲しい。できれば、バーボルド伯爵領の守備隊もだ」
「治療は僕の得意分野なので、任せて下さい」
「ふふふ、それは頼もしいな。帝国との国境の衝突が続いているので、我々もいつ出撃命令がかかるか分からない。もしもの為にも、万全にして欲しいのだよ」
やっぱり治療の依頼が僕にきたけど、帝国との紛争が落ち着いて怪我人が発生しないで貰いたいですね。
そして、もう一つ僕への依頼がありました。
「もう一つの依頼は、魔導具への魔力の充填だ。確かレオ君は、コバルトブルーレイク直轄領で魔導具に使う魔石への魔力充填をしていたと聞いた。要は、同じ作業になる」
「魔石への魔力充填作業なら、僕もシロちゃんもばっちりです」
「軍の代物なので、素人魔法使いを使うわけにはいかないのだよ。レオ君が作業の経験者で、本当に助かった」
色々な魔導具があるから、きっと使われている魔石も色々な種類があるんだね。
取り急ぎは、毎日治療して魔石に魔力を充填すれば良いみたいです。
特に、怪我人は頑張って早く治さないといけないから頑張らないと。
シロちゃんも、ふんすってやる気を見せています。
大まかな話が終わったところで、今度はネストさんが話し始めました。
「しかし、平民から貴族になりそうな素質のある者が新たに現れるとは。もしレオ君が貴族になったら、師団長以来の快挙じゃないか?」
「私の場合は、軍人でたまたま功績をあげる事が出来たのが大きいですよ。それに、元を辿れば貴族の分家でしたから」
「そういえばそうだったな。レオ君は完全な平民出身だから、とても貴重な存在だな」
そういえば、前にもマイスター師団長さんは平民出身だと噛みついていた魔法兵がいたけど、一体どうしたらマイスター師団長さんは貴族になれたんだろうか?
その答えは、マイスター師団長さん自身が答えてくれました。
「レオ君、私は元々軍人の貴族の三男を父に持っていたんだよ。貴族は、爵位継承がなければ平民になるからね。私は帝国との紛争で手柄をあげる事ができたので、新たに貴族家を起こす事が出来たんだよ」
「わあ、そうだったんですね。手柄を立てて貴族になるなんて、本当に凄いです!」
「そうやって、素直に褒めて貰えると私も嬉しいよ。それに元が貴族家出身だから、あんまりやっかみも少なくて助かっているよ」
マイスター師団長さんはとても偉いのに優しい人なのは、苦労して手柄を立てたってのもあるんだ。
僕もシロちゃんも、マイスター師団長さんの話を聞いてとっても興奮しちゃったよ。
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