第五百八十話 ちょっとやりすぎちゃった
グラウンドに移動すると、最初聞いていた二十人よりもたくさんの人が並んでいました。
ざっと数えても、百人を超えている気がするよ。
そして、僕たちが前に並ぶと一斉に敬礼をしてきました。
な、なんだか凄いことになっているね。
「諸君、初めてのものもいるかと思うがここにいるのが宮廷魔導師のポラリス男爵だ」
「ポラリス男爵に敬礼!」
おお、いきなり僕に向けて敬礼してきたので、僕も反射的に敬礼しちゃいました。
シロちゃんたちも可愛らしく敬礼しているけど、主に僕の目の前にいる人が同行するメンバーらしいです。
因みに新人兵が半数いるらしく、訓練の一環で同行するそうです。
よく見ると、新人兵研修で相手をした人がいますね。
「知っての通り、レオ君たちはそれぞれがゴブリンキングを軽く屠るだけの力がある。しかし、今回は諸君にレオ君を守るという任務が課せられる。レオ君の力を借りることなく任務を達成することを期待する」
「「「はっ」」」
マイスター師団長さんの激励に、兵が元気よく答えていました。
さっき料理ができない人が殆どだって言っていたけど、新人さんが多いからしょうがないよね。
因みに、いつでも出発できるように準備しているそうです。
すると、今度はバッツさんが兵にあることを話しました。
「それでは、これからレオと手合わせをする。例え腕が千切れても、レオなら再生させることができるから安心しろ」
「えー!?」
今度は、僕がビックリした声を上げちゃいました。
とはいえ兵はこの話を聞いていたみたいだし、グラウンドの端に木剣も用意されていています。
バッツさんだけでなくマイスター師団長さんとネストさんもニコリとしていたし、完全にはめられちゃいました。
思わずガックリとしながら、僕も魔法袋から木剣を取り出して準備します。
因みに、木剣を持てないピーちゃんはジェシカさんのそばの地面に降りていて、シロちゃんとユキちゃんは兵の相手をするそうです。
ユキちゃんも国境の紛争が落ち着いて時間がある時に兵に相手をしてもらったので、以前と比較してとてもパワーアップしています。
身体能力強化魔法は使ってもいいらしく、試合時間は三分間です。
僕と二匹が木剣を手にして、三人の兵と対峙します。
「それでは、始め!」
ダッ。
「やあ!」
「えっ!?」
ガキン、カランカラン……
あっ、やり過ぎちゃった!
一気に近づいて、木剣を跳ね上げちゃいました。
そこまで身体能力強化魔法を使っていなかったけど、相手が新人兵なんだよね。
国境で兵を相手にしていたくらいにしていたんだけど、まだ強かったんだ。
「馬鹿者! 始めの合図が掛かっているのに、お前は油断しすぎだ! さっさと木剣を拾って続きをしろ!」
「はっ、はい……」
未だに呆然としている新人兵に向けて、バッツさんの怒号が響きました。
僕も、もう少し手加減して身体能力強化魔法を使おう。
実はシロちゃんとユキちゃんも僕と同じく一気に木剣を跳ね上げちゃったので、こちらももう少し弱くするつもりです。
こうして思うと、手加減するのってとっても難しいですね。
「そこまで」
「はあはあはあ……」
新人兵は、バッツさんの合図とともに荒い息をしながら膝をついていました。
身体能力強化魔法を弱くしても、新人兵は防戦一方だったんだよね。
「バッツさん、国境で兵と手合わせした時と同じ位の身体能力強化魔法を使っちゃいました……」
「レオ、このくらいは何でもないぞ。お前らも見ただろが、国境で戦った兵は最初のレオの攻撃をさばいていた。これが、国を守るものの強さだ」
新人兵がかなり驚いていたけど、そう思うと国境で手合わせした兵はかなり強いんだよね。
でも、これがある意味兵の強さの指針になるそうです。
ということで、更に身体能力強化魔法を弱くして手合わせを行います。
ガキン、ガキン。
「はっ、はあ!」
「そんな感じですよ、もっと打ち込んで下さい」
こうして一時間ほど手合わせを行って、昼食の時間になったのでみんなで食堂に行きました。
うん、新人兵がヘロヘロになっちゃったよ。
「うう、力を抑えていたのにやり過ぎちゃいました……」
「アオン……」
トマトパスタを食べながら、僕、シロちゃん、ユキちゃんはへにゃんとしちゃいました。
手加減するって、本当に難しいですね。
「同行する兵にレオの強さを知ってもらおうと思ったのだが、効果は抜群だったな。朝の訓練の際に、もう少し手加減して相手をしてやれ。魔力を抑えて身体能力強化魔法を使うのも、かなり難しい訓練だぞ」
うう、バッツさんにも色々言われちゃいました。
魔力全開にするよりも、手加減する方が圧倒的に難しいんだよね。
はあってため息をつきながら、僕はトマトパスタを食べていました。
今日は、トマトパスタの美味しさも半減です。
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