第四百八十一話 宮廷魔導士
ゴルゴン侯爵が勝手に王城にあがったのもあり、僕が各所で治療を行う際も必ず護衛がつく事になった。
教会の奉仕作業の際も聖騎士が護衛につくなど、結構物々しい雰囲気になった。
しょうがない反面、早く事件が解決すれば良いなと思っていた。
そして、今日はバーボルド伯爵領から魔法部隊のスカラさんたちが王都の軍の施設に来て訓練するという。
折角なので、僕も一緒に訓練を受ける事になった。
「レオ君、久しぶりね。いいえ、レオ騎士爵様と呼んだ方が良いかしら?」
「スカラさん、普通に呼んでくださいよ。知っている人にそういうふうに言われるのって、何だか変な感じなんです」
軍の施設で会ったスカラさんに、いきなり茶目っ気たっぷりで言われちゃいました。
最近、僕の知り合いがわざと騎士爵様って言ってくることがあるんだよね。
それで、慌てた僕の反応を見てからかっているんです。
ともあれ、王都の軍の施設では治療しかしなかったので、訓練施設には初めて入ります。
訓練場は四角い石畳が敷かれていて、剣の訓練も行っています。
今日はスカラさんたち治療担当が、実践を兼ねて怪我をした人をするそうです。
すると、僕たちのところに一人の女性がやってきました。
白色に近い銀髪で、綺麗に後ろで編み込んでいました。
背は高くて、スラっとした体型です。
スカラさんたちと同じ軍服を着ているんだけど、もっと豪華な刺繍とかが入っています。
「スカラさん、お久しぶりですね」
「これは、アイリーン様ではありませんか。お久しぶりでございます」
おお、スカラさんがとても丁寧な口調で話しているって事は、この女性はとても偉い人なんだ。
僕も挨拶をしないといけないね。
「初めまして、僕はレオと言います。このスライムはシロちゃんで、コボルトがユキちゃんです」
「アン!」
「これはこれは、噂に名高いレオ騎士爵様ではありませんか。私はアイリーン・ノーヴェ。ノーヴェ侯爵家の娘で、宮廷魔導士を仰せつかっているよ」
なんと、アイリーンさんは前に聞いたことのある宮廷魔導士の一人なんだ。
だから、軍服も特別製なんですね。
でも、ニコリとしながら僕だけでなくシロちゃんとユキちゃんとも握手をしてくれました。
とっても優しそうな人ですね。
「実は、他の魔導士の面々は任務で各地に行っているんだよ。私も、最近までセルカーク直轄領に行っていたの」
「えっ、セルカーク直轄領ってことはセレンお姉さんとかと一緒だったんですね」
「ええ、セレンとも話をしたわ。あの小さかったレオ君が、とっても大きくなったと喜んでいたわ」
おお、ここでなんとセレンお姉さんの話を聞けるなんて。
何というか、とっても良いタイミングだったんですね。
「因みに、レオ君が使っていたベッドは私の妹が使用していたんだよ。別件で王都の屋敷にいるから、今度会わせてあげよう」
「あっ、僕からもお願いします。一ヶ月間借りちゃったので、キチンとお礼を言いたいんです」
「レオ君は真面目な性格なんだね。じゃあ、フランソワーズ公爵家にお茶会の手続きをしないとならないね」
色々なところで話が繋がって、僕は何だか嬉しくなりました。
でも、今は訓練の最中なのでキチンとしないといけないね。
でも、アイリーンさんって、何の魔法使いなんだろうか?
「私は、聖魔法特化型だよ。レオ君みたいに万能型ではないけど、これでも魔職制御はそこそこ自信があるよ」
そういうと、アイリーンさんは何と一気に六つの魔力玉を発現させました。
凄いなあ、僕はまだ四つまでしかできないんだよね。
そして、聖魔法特化型だとシロちゃんと同じタイプになるんだね。
すると、訓練場で僕に声をかける人がいました。
「おい、レオも上がってこい。久々に手合わせしてやる」
「やれやれ、バッツ先輩はレオ君の事を良いおもちゃだと思っているんだね。因みに、バッツ先輩も身分は宮廷魔導士だよ。身体能力特化型だけどね」
「ええー!」
アイリーンさんの話を聞いて、またもやビックリしちゃいました。
でもバッツさんは滅茶苦茶強いから、宮廷魔導士って言われても納得できますね。
でも、何だか騙された気分です。
僕はいつもの木剣を手にすると、ジト目でバッツさんに文句を言いました。
「バッツさん、僕に宮廷魔導士って教えてくれても良かったじゃないですか!」
「ああ、俺は堅苦しい肩書は嫌いなんだよ。それに、何かあれば前線に立つが、今は半分引退したものだよ」
何だか、バッツさんらしい返し方ですね。
でも、ずっと黙っていたので、僕はぷんぷんです。
ガンガンガン!
「おらおら、もっと本気でかかってこい!」
でも、結構本気でやったのに、全部バッツさんに受け止められちゃいました。
やっぱり、バッツさんは理不尽なほどに強いですね。
カンカンカン。
「アン、アン、アン!」
「か、可愛い。ユキちゃんが一生懸命訓練をしているわ」
「私も初めて見た時から、とても可愛いと思いましたわ」
そして、アイリーンさんとスカラさんは、僕とバッツさんの手合わせを全く見ずに、シロちゃんとユキちゃんの訓練風景に見入っていました。
というか、女性兵の殆どが二匹の手合わせに見入っていました。
その後も、僕はというと他の男性兵と交代してひたすら打ち合っていました。
因みに、バッツさんの相手をした人は怪我はしていないけどヘロヘロになっていました。
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