第五百五十二話 再びの戦闘
新年になって数日後、シロちゃんとピーちゃんの偵察であることが判明しました。
「どうも、交代の指揮官がやってくるみたいだ。物資も整えていることを考えると、もう一回派手な戦闘が起きる可能性があるぞ」
ブラウニー伯爵が頭が痛そうに話しているけど、帝国側は未だに戦闘を諦めていないみたいだ。
王国としては淡々と撃退するしかないって言っているけど、兵もまたかって思うよね。
そして、帝国側も夜な夜な偵察をしてきたけど、全部撃退している。
そう考えると、シロちゃんとピーちゃんの偵察って凄いんだね。
「もはや戦闘は避けられまい。総員に通達、戦闘態勢を整えよ」
「はっ」
ハーデスさんが戦闘態勢を指示したので、僕たちも治療部屋で待機することになりました。
そして、その日のお昼前から再び戦闘が始まりました。
僕は怪我をした兵の治療をするけど、兵いわくやっぱり帝国兵は大したことなくてただ突っ込んでくるだけだという。
王国側は統制も取れているし、何よりも帝国兵と比較しても圧倒的に強いらしい。
その証拠に、怪我も大したことなくて直ぐに戦線復帰していきました。
それでも、帝国兵はしつこく戦闘を仕掛けてきました。
なので、やむなくシロちゃんが武器を大量に奪ってきました。
これで落ち着くかなと思ったら、びっくりすることがおきました。
「奴ら、ナイフや木の槍などで突っ込んできやがったよ。今までにない行動だな」
「怪我しても翌日には大した治療も受けずにやってくるし、あれはいったいなんだろうか」
「俺たちはほぼ無傷だけど、奴らの被害は甚大だ。何が起きているのやら」
兵も不思議に思っているのだけど、僕も謎でした。
そして、なぜ帝国兵がそこまで必死なのかが分かったと、ハーデスさんが司令官執務室で教えてくれました。
「今回の帝国兵は、正規兵ではない。指揮官を除いてスラム街の住人だ。捕虜を尋問して判明した」
「えっ、何でスラム街の人たちが戦闘に参加しているのですか?」
「スラム街で、大々的な戦闘員の募集があったそうだ。活躍すれば、生活の保障がされるってな。帝国にとっては、体のいいスラム街の住民処分だろう」
何でこんなに酷いことをするのだろうと、誰もが思ってしまった。
普通は公共政策とかでなんとかスラム街を良くしようとするらしいけど、ある意味簡単な切り捨てだ。
しかも、武器の支給も殆どないらしく、だからお手製のもので戦っているらしい。
「帝国側はあまり状況が良くないのだろう。実際に、昨年の戦闘で大損害を被ったからな。だから、安易な戦闘員確保に動いた可能性が高い。恐らく、一ヶ月以上は戦闘が続くだろう」
ブラウニー伯爵も、難しい表情をしながら腕組みしていました。
このままいっても王国側の損害は殆どないけど、精神的疲労はあるだろう。
帝国としても、上の人にとっては痛くも痒くもない損害だ。
不毛な戦いになっているけど、これが現実なのかもしれない。
「もし僕が帝国のスラム街の住民だったら、どうするのかな……」
「レオが魔法を使えるのなら、こんな馬鹿な応募に参加することはないだろう。しかし、魔法が使えないのなら間違いなく応募する。目の前にあるお金を得ることが目的だからだ。あと、裏側まで理解する知識はないだろう」
ブラウニー伯爵曰くスラム街の住民はキチンとした知識を持っていないので、欲に従ったことをやるという。
それこそ、善悪の区別がない人もいるらしい。
だから、お金を得るために何でもやる、やらざるを得ないらしい。
「王国側は職業軍人だ、規律を持って行動する。だが、奴らは何をしでかすか分からない。十分に警戒しないとならない」
いずれにせよ、やることは変わりありません。
夜間の襲撃に備える準備も行います。
そして、残念なことにそれが功を奏してしまいました。
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