第三百六十六話 賑やかな最後の夜
職人さんと別れた後は、食堂に向かいました。
ここで、いつも美味しい昼食を食べていたよね。
昼食にはまだ早い時間だったけど、今日も仕込みで忙しそうにしていました。
「おばちゃん、おはようございます」
「おや、レオ君かい。挨拶に来るって聞いたけど、わざわざありがとうね」
おばちゃんが、手を止めて僕のところにやってきました。
食堂のおばちゃんはとっても強いし、スラム街の男の子を気にしていた優しさもありました。
オリガさんと一緒に荒海一家の残党をぶっ飛ばしたときは、本当にビックリしちゃったけど。
「美味しい食事、ありがとうございました。これは、僕とシロちゃんが作ったピンブローチです」
「あらあらまあまあ、わざわざありがとうね。大切に使わせて貰うわね。元気でやるんだよ」
僕とシロちゃんは、一生懸命作ったピンブローチをおばちゃんに手渡しました。
食堂で料理を作っているおばちゃん全員にピンブローチを渡して、僕はおばちゃんとぎゅっと抱擁してから造船場を後にしました。
次に向かうのは、丘の上にある教会です。
坂を登ると教会に着くんだけど、この教会にある大きな塔は本当に見ごたえがあるよね。
僕とシロちゃんは、大きな塔を見ながら教会の中に入りました。
「こんにちは、出発の挨拶に来ました」
「まあまあ、これは黒髪の天使様ではないですか」
「わざわざ来ていただき、光栄です」
教会には春から新しいシスターさんが来ていて、僕とシロちゃんの姿を見て盛り上がっていました。
そんな中、いつも治療の時に一緒だった年配のシスターさんと若いシスターさんが僕のところにやってきました。
「黒髪の天使様、いよいよ旅立たれるそうですね。黒髪の天使様に神の加護があらんことを」
「いつも真摯に治療をしていて、私も勉強になりました。お元気でお過ごしください」
年配のシスターさんと若いシスターさんが、僕とシロちゃんと握手をしました。
そして僕とシロちゃんは、二人のシスターさんにピンブローチを渡しました。
「僕の方こそ色々お世話になりました。僕とシロちゃんが一生懸命に作ったピンブローチです」
「まあ、あの幸せのアイテムと言われる黒髪の天使様が作ったピンブローチを私にですが。逆に申し訳ないですわ」
「大切に使わせて頂きます。ありがとうございます」
僕とシロちゃんは、改めて二人のシスターさんと握手して教会を後にしました。
こんなカッコいい教会で治療出来て、僕もシロちゃんも良い経験になりました。
僕は教会を後にして、宿に戻りました。
「ただいま」
「あら、レオ君早かったわね。もうそろそろ昼食が出来るわよ」
宿に帰ると、オリガさんが出迎えてくれました。
僕は、一回部屋に戻って荷物を置いてから食堂に向かいました。
「はい、旦那自信作の美味しいトマトパスタよ」
「わあ、とっても美味しそうです!」
「ふふ、良い笑顔になったわね」
オリガさんだけでなく厨房の奥から顔を覗かせているユリスさんも、僕をニコッと見ていました。
今日はザンギエフさん達とダリアさん達だけでなくナディアさんもお仕事でいないので、夕方に改めて挨拶をします。
その間、僕は部屋の片づけをしたり本を読んだりしていました。
「おーい、帰ったぞ」
「ただいま戻りました」
夕方になると、お仕事からザンギエフさん達が帰ってきました。
僕とシロちゃんは、ナディアさんと一緒にお風呂に入ってから夕食を食べます。
夕食もとっても豪華なお肉とお魚の料理で、僕もシロちゃんもとっても美味しく食べました。
「皆さんに本当にお世話になりました。僕、男性の冒険者と一緒に動く事って殆どなかったので、ザンギエフさん達と一緒でとっても良かったです」
「あら、そうだったの。息子と一緒でごめんなさいね」
「おい、かーちゃん。それってどういう意味だよ!」
「あら、そのままの意味よ」
「「「あははは!」」」
挨拶しただけなのに、何だか一気に盛り上がっちゃった。
とっても明るい家族経営の宿だったからこそ、僕もシロちゃんもとっても楽しく滞在できたんだよね。
僕とシロちゃんも、みんなと一緒になって笑っちゃいました。
そして、ピンブローチを取り出して、オリガさん、ナディアさん、ダリアさん達に渡しました。
「これは、僕とシロちゃんが一生懸命に作ったピンブローチです。受け取ってください」
「まあ、とっても綺麗なブローチね。こんな綺麗なブローチを、わざわざありがとう」
「とっても綺麗だよ。レオ君とシロちゃんって、本当に凄いんだね」
「ラッキーアイテムって言われている、レオ君とシロちゃんが作ったブローチを貰えるなんて。本当にありがとうね」
僕とシロちゃんの作ったピンブローチを、みんなとっても嬉しそうに受け取ってくれました。
と、ここでザンギエフさんが一言。
「なあ、男性用のアクセサリーはねえのか?」
「あっ、僕もシロちゃんもまだピンブローチしか作れないんです……」
「厳ついお兄ちゃんに似合うアクセサリーなんてないわよ」
「なんだと!」
「「「あははは」」」
冷静にナディアさんがザンギエフさんにつっこんでいて、またもや笑いが起きていました。
こうして、シークレア子爵領の最後の夜もとっても賑やかでした。
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