第三百六十七話 バーボルド伯爵領に向けて出発です

 ピピピピ、ピピピピ。


「うーん、もう朝なんだ。ふわー」


 シークレア子爵領を出発する朝、僕はいつもよりも少し早く起きました。

 バーボルド伯爵領に向かう馬車が、朝早く出発するためです。

 僕は懐中時計型の魔導具から流れるアラームを止めて、うーんと背を伸ばしました。

 シロちゃんはまだ枕元で寝ているけど、そろそろ起こしてあげないとね。


「うん、これで大丈夫」


 今日は毎朝の訓練を簡単なものにして、使った部屋を綺麗にします。

 最後に生活魔法をかけて、準備完了です。

 僕とシロちゃんは、荷物をまとめて部屋を出ました。


「オリガさん、部屋の鍵です。色々とありがとうございました。宿に泊まっている間、凄く助かりました」

「私の方こそ、レオ君がいてくれて凄く助かったわ。シークレア子爵領に来た時は、また泊まりに来てね」


 僕がオリガさんに鍵を返すと、オリガさんは僕の事をギュッと抱きしめてくれました。

 シロちゃんの事も撫でてくれたし、やっぱりオリガさんはとっても強いけど優しい人だね。


「ユリスさんもナディアさんも、本当にお世話になりました。いつも美味しいお料理で、とってもワクワクしていました」

「良いって事よ。今度レオが来た時は、新作メニューを提供するぞ」

「私も弟ができたみたいで、とっても楽しかったわ。また会いましょう」


 僕とシロちゃんは、ユリスさんとナディアさんと握手をしました。

 いつも僕の面倒を見てくれたり、とっても美味しい料理を作ってくれたりしてくれたよね。

 こうして、僕は約一年間お世話になった宿を出ました。


「おう、もう出発か」

「レオ君がいなくなると、私達も淋しくなるわね」


 宿を出ると、ザンギエフさん達とダリアさん達が待っていてくれました。

 ザンギエフさん達もいつもはぐっすりと寝ている時間なのに、わざわざ起きてくれたんだ。


「ザンギエフさん達に色々な事を教えて貰って、本当に勉強になりました。ダリアさん達も、お元気で」

「俺も人に教える機会を持って、勉強になったぞ。レオも元気でな」

「レオ君には薬草採取とかポーションの作り方を教えて貰って、私達こそお世話になったわ。道中気をつけてね」


 僕とシロちゃんは、ザンギエフさん達とダリアさん達とも握手をしました。

 豪快な人達だったけど、知識もあって本当に頼りになったよ。

 僕とシロちゃんは、みんなに手を振りながら宿から馬車乗り場に向かいます。

 すると、馬車乗り場で沢山の職人さんが待っていてくれました。

 これには、僕もシロちゃんも思わずビックリしちゃいました。


「色々とありがとうな」

「元気でいろよ」

「レオ、気を付けていけよ」


 僕とシロちゃんは、待っていてくれた職人さんとハイタッチをしながら馬車に乗り込んでくれました。

 ずっと仕事をした仲なので、待っていてくれてとっても嬉しいです。


「では、出発します」

「いってきまーす!」

「「「気を付けて行ってこいよ!」」」


 僕とシロちゃんは、職人さんが見えなくなるまで手を振りました。

 職人さんも、僕とシロちゃんを乗せた馬車が見えなくなるまで手を振り返してくれました。

 そして、段々とシークレア子爵領の象徴である海も見えなくなってきました。

 一年ぶりの旅のスタートです。

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