第六百十一話 奉仕活動の準備

 翌朝、代官邸の庭で訓練をしながら体調を確認します。

 うん、ぐっすりと寝たから体力も魔力もバッチリ回復しています。

 シロちゃんたちも元気いっぱいで、この分ならたくさんの人を治療できそうです。

 朝食を食べ終えて暫くするとセレンお姉さんたちが迎えに来てくれたので、僕たちは教会に向かいました。


「レオ君、体調は大丈夫?」

「一晩寝たら、すっかり良くなりました。魔力も全快です!」

「それはよかったわ。でも、あれだけの魔力を使ったのに一晩で全快するなんて、レオ君は本当に凄いわ」


 セレンお姉さん曰く、魔法使いも極限まで魔法を使っちゃうと魔力回復に時間がかかるんだって。

 僕は、今までそんなことはなかったよ。

 うーん、良くわからないけど良いこととしておきましょう。

 そして、教会前に着いたらもの凄くビックリする光景が。


 ざわざわざわ。


「えー! 凄い人の数です! こんなに待っているんですか?」

「ふふ、レオ君に治療してもらいたい人がたくさんいるのよ」


 教会前は、人がもの凄く集まっていました。

 セルカーク直轄領で、昔はこんなに治療したことはなかったよ。

 セレンお姉さんもビックリしているけど、列の整理のために追加の守備隊員を呼んでくれることになりました。

 治療しに来て、逆に混乱しちゃったら大変だもんね。

 ということで、僕たちも教会の正門から入らずに裏手から入ることにしました。


「シルバ司祭様、おはようございます」

「レオ様、おはよう。ちょっと集まった人の数が多いが、宜しく頼むぞ」


 教会内に入ると、シルバ司祭様を始めとする聖職者の方々も大忙しで準備を始めていました。

 今日は炊き出しも行うので、準備をする人も多いですね。

 僕も、無料治療を始める前にシロちゃんと一緒に仕込みの手伝いをします。

 ジェシカさんと他の面々は、奉仕活動の準備をしていました。


 トントントン、トントントン。


「レオ様は、包丁も上手に使われるのですね」

「料理もできるようにと勉強しました!」

「それは素晴らしいですわ」


 シスターさんが僕の包丁さばきを褒めてくれるけど、魔法でしゅぱぱと野菜やお肉を切るシロちゃんの方が凄いよね。

 そうこうしているうちに無料治療の準備が整ったので、僕とシロちゃんも仕込みから移動します。

 すると、仕込みに何故か部隊の兵と守備隊員がやってきました。

 なんでかなと思ったら、一緒に来ていた部隊長さんが理由を教えてくれました。


「単に切るだけなら、包丁の扱いができれば可能だ。訓練を兼ねて、手伝わせることにした」

「「「うう……」」」


 あらら、連れてこられた人たちは何だか自信なさげだよ。

 でも、頑張ればきっと上達するはずだし、頑張って欲しいです。

 そして、町の人が多数集まっているので、部隊の兵も訓練を兼ねて列の整理をしています。

 というか、行列に並んでいる人の数が凄い……

 今日は、手早く治療しないと駄目だね。

 ということで、治療開始です。


 シュイン、ぴかー!


「これで腰の痛みは良くなったと思いますが、どうですか?」

「あらまあ、本当に凄いわ。痛みがあっという間に消えたわ。レオ君、ありがとうね」


 並んでいる人は年配の人が多く、今もおばあちゃんを治療しています。

 シロちゃんたちもどんどんと治療を進めるけど、黒髪の天使様にお仕えしている従魔は凄いねと褒められていました。

 そして、ジェシカさん、ピーちゃん、ムギちゃんは、炊き出しのところで兵や守備隊員の指導をしていました。

 これは、部隊長さんからのリクエストです。

 それにしても、治療してもしても人の列が途切れないね。

 僕たちは、もっと頑張ろうと気合を入れました。

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