第二百二十話 ボーガン様が子爵領に来た理由
僕達は、臨時に設けられたテーブルと椅子に座ってお茶を飲みながら話をする事に。
「馬車の相互通行が開通したから、ここからは時間を見ながら進めて行くで良いだろう」
「はい、物資の供給も問題なくなりましたので、急ぎの対応は完了したかと」
「このレベルの土砂崩れでは、開通までに一ヶ月かかるのが普通です。僅か三日でここまで出来たのは、とても良い事だと思いますわ」
ボーガン様も子爵様も男爵夫人様も、早期に街道が開通してホッとしています。
街の人もホッとしているけど、復旧作業自体はまだまだ続くんだろうね。
「しかし、男爵領も結果的にとはいえレオ君がいるタイミングで問題が起きて良かったな。流石にこれ以上何か問題を起こしたら、私も口を挟もうとしていたぞ」
「辺境伯様にも、本当にご迷惑をおかけしました。これからは、息子と共に領地経営を頑張って行きます」
「そなたの息子はかなり優秀だから、私もとても楽しみだ」
辺境伯様にも、男爵様が更迭されたのを報告していたんだ。
男爵夫人様も表情が明るくなったから、心の重石が取れたんだね。
「で、偶発的に土砂崩れが発生して、黒髪の魔術師が颯爽と現れて仮復旧したと」
「あの、僕がやったのはほんの一部ですから。皆さんが頑張ってくれたから、こんなに早く復旧出来ました」
「ははは、謙遜するな。魔法を使っているとはいえ小さい子が頑張っているから、作業員も負けてられないと思っているそうだ。更に怪我した時の対応もしてくれるから、作業スピードも早くなっているぞ」
「そうですな。しかもレオ君が、こんなに凄い魔法使いだとは、思いもよりませんでした」
「そうですわね。私も兵を引き連れて来ましたが、兵もレオ君の凄さにビックリしていました。教会では、黒髪の天使様が新たな奇跡を起こしたと大騒ぎですよ」
そして、話は土砂崩れの事になり、いつの間にか僕の褒め合いになっています。
うう、そういう感じで褒めっぱなしになると、僕は恥ずかしくなっちゃうよ。
シロちゃんは何故かドヤ顔っぽくしているけど、シロちゃんもとっても頑張っていたもんね。
僕はシロちゃんを撫で撫でしていたら、少し気持ちが落ち着きました。
「レオ君には明日くらいまで作業を手伝って貰って、サンダーランド辺境伯へ向かって貰おうか。午前中いっぱいでも、全く問題ないだろう」
「私もそう思いますわ。あまりレオ君がやり過ぎてしまうと、何の為に作業員が集まっているか意味がなくなってしまいますわ」
今回の土砂崩れの復旧作業は、今後の経験にする必要もあるので、僕は明日の午前中でお役御免になりました。
できるだけ頑張ろうと思ったので、休憩後も僕とシロちゃんはフルパワーで頑張りました。
「ここまで復旧作業ができたから、後は我が辺境伯領と子爵領の担当者で役割分担を話し合って進めよう」
「ありがとうございます。子爵領も早速担当者を決定させますので」
そして夕方になったので、僕達は子爵様の屋敷に向かいました。
僕とシロちゃんはちょっと汚れちゃったので、生活魔法で自分達の体を綺麗にしました。
そのまま応接室に行って今後の事を決めたけど、相互通行が再開しているので後は楽だそうです。
あっ、あの事を聞いてみようかな?
「ボーガン様、コバルトブルーレイク直轄領の代官からの手紙を預かっておりますが、ここで渡しても構いませんでしょうか?」
「おお、別に良いぞ。どれどれ……」
僕は許可を得たので、魔法袋からシェファードさんからの手紙をボーガン様に渡しました。
ボーガン様は、手紙を読んでいるうちに何だかニヤニヤとしてきました。
えっ、手紙には一体何が書かれているんだろう?
「ははは、レオ君はとんでもない魔法使いだから予想外の事をすると注意書きがされていたぞ。確かにとんでもない事を目にしたがな」
シェファードさん、何という事を手紙に書いているんですか……
ボーガン様から手紙を見せてもらった子爵様と男爵夫人様も、思わず苦笑をしているぞ。
「そっか、レオ君は頭は良いが常識を教えるべき両親がいないから、子どもが覚える事を学んでいないんだな」
あのあの、その言い方じゃ僕は常識がないと同じですよ。
流石のボーガン様でも、それはちょっと酷いなあ。
「よし、辺境伯領に着いたら、週に一回から二回は屋敷に来い。今回の街道復旧の報奨の一部として、マナーなどを教えてやるぞ」
「それは良い案です。レオ君は大物になるのは間違いないですので、この際、キチンと色々な事を勉強した方が良いですな」
「そう思うと、こんなに小さいのに旅を続けるのは、可哀想ですわね」
嗚呼、僕を目の前にしてサンダーランド辺境伯領に着いてからの予定が決まっちゃったよ。
でも、今までキチンとした勉強をしたことがなかったから、良い機会なのかもね。
因みに、今夜はボーガン様と男爵夫人様は子爵様の屋敷に泊まるそうです。
そして、夕食時に僕の武勇伝をあれこれ聞かれちゃいました。
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