第二百二十一話 子爵領を出発します
サンダーランド辺境伯領への道のりも、十一日目になりました。
もうサンダーランド辺境伯であるボーガン様と一緒にいるけどね。
街道沿いの土砂崩れ現場の復旧作業も、とても順調です。
「昼食は、隣の村で食べるとしよう。美味い肉料理があるぞ。そのまま、次の村まで向かって泊まることにする」
朝食時にボーガン様が今後の予定を教えてくれたけど、いよいよサンダーランド辺境伯領に入るんだね。
今日は僕とシロちゃんとボーガン様が出発するまで、子爵様と男爵夫人様も現場にいてくれる事になりました。
という事で、僕達は朝食を食べて準備をして土砂崩れ復旧現場に向かいました。
シュイーン、ぴかー。
「はい、膝の痛みはどうですか?」
「ははは、すげーな、全く痛くねー。流石は黒髪の魔術師様ってところだな」
現場に着いたら、僕とシロちゃんは最初に怪我をしていた人の治療から始めます。
万全の状態で、仕事をしないとね。
シロちゃんと手分けして治療をしたので、三十分もあれば治療は完了です。
「おう、今日出発するんだってな。だったら、今日は大きな石や岩を粉々にするのをやってくれや」
「はい! 頑張ります」
現場の人にも僕が早めに引き上げる事が伝えられたので、今日は麻袋への土入れじゃなくて別の作業を行います。
ドサッ、ドサッ。
ボコーン、ボコーン。
僕は土魔法を使って大きな石や岩を粉々にして、シロちゃんは聖魔法の攻撃魔法を使って豪快に岩を砕いています。
「ははは、豪快にやっているな」
「黒髪の魔術師様も、まだまだ子どもってわけだな」
派手に土煙を上げる僕とシロちゃんの事を、作業員はニコニコと見ていました。
既に僕とシロちゃんの魔法を見ても、現場作業の人は普通にとらえていました。
その為に、僕とシロちゃんが豪快に大きな岩を破壊しても、ニコニコとして見ていただけでした。
「慣れとは怖いものだ。物凄い魔法なのに、レオ君なら当然だと思ってしまう」
「そうですな。あの土壁を作った時は、度肝を抜かれました」
「巷に溢れている噂以上に、レオ君は凄いって事ですわね」
更に偉い人達も何か言っているけど、気にしては駄目です。
集中して、目の前にある岩を粉々にしないと。
こうして僕とシロちゃんは、休憩を挟みつつ大きな石や岩を壊しまくりました。
「よし、このくらいで良いだろう。レオ、上がって良いぞ」
担当者も十分にやったと言ってくれたので、僕とシロちゃんは生活魔法で体を綺麗にしてからボーガン様の所に向かいました。
「ボーガン様、お待たせしました」
「全然大丈夫だ。それにしても、レオ君の魔法を見ているだけで、全然退屈しなかったぞ」
ボーガン様も既に準備万端で、いつでも行けるみたいです。
「子爵様、男爵夫人様、色々とお世話になりました」
「世話になったのは私たちの方だ。レオ君、本当にありがとう」
「レオ君のお陰で、領民も困らずに済んだわ。本当にありがとうね」
子爵様と男爵夫人様とはここでお別れなので、改めて挨拶しました。
そして僕とシロちゃんは、ボーガン様の乗っている馬車に同乗します。
「気をつけて行ってこいよ!」
「元気でな!」
復旧作業員も、手を振って見送ってくれました。
僕とシロちゃんは、馬車の窓から身を乗り出して手を振り返しました。
「うむ、レオ君は荒くれ者にも人気があるな」
「うーん、僕はあんまりそういう事は気にしていないんですよ。良い人なら尚更です」
「ははは、レオ君らしい答えだな」
街道を進む馬車の中でボーガン様が現場の事を言っていたけど、アマード子爵領でも職人さんと接していたし僕は余り厳つい人は気にしないんだよなあ。
逆にニコニコしていても悪い人はいるし、貴族にも悪い人はいるよ。
「しかし、レオ君みたいな特殊能力を持っている者が我が領にくるのは大歓迎だ。我が領は人口も多いからそれなりに魔法使いはいるが、レオ君程の腕前はないぞ」
「うーん、僕は他の魔法使いの人と余りあっていないので、自分の実力がよく分からないんですよ」
「そうだな、レオ君はまだ小さな子どもだったな。私もそれなりに魔法使いは見てきたが、レオ君はずば抜けて力がある。自信を持って良い」
ボーガン様が僕の実力に太鼓判を押してくれたけど、魔法使い同士の戦いはコバルトブルーレイクの村でおばあさんとやった一回きりなんだよね。
でも、サンダーランド辺境伯領に行けば、別の魔法使いに出会えそうですね。
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