第百八十七話 少し一段落です
「おら、キリキリ歩け!」
「どんどんと運んでこい!」
そして、村長さんの家に他の人が捕まえた盗賊が運び込まれてきました。
「あっ、おかみがやられている!」
「も、もうおしまいだ……」
そして捕まった盗賊は、おばあさんが僕に負けて捕まっているのを見て、完全に戦意を失っていました。
やっぱり、あのおばあさんが盗賊団の精神的支柱だったんだね。
そんな事を思っていたら、ナナさん達がこっちにやってきたよ。
「あっ、ナナさん。怪我していないですか?」
「ええ、大丈夫よ。それに、私は盗賊をバインドで抑えつけていただけですから」
二人の盗賊を引きずりながらこっちにきたけど、三人とも怪我はしていないみたいです。
「ナナちゃんが完全に盗賊を無効化してくれたから、私達は縛るだけだったよ」
「守備隊員さんも、なっちゃんの事を褒めていました」
「ちょっと、二人とも恥ずかしいわ……」
ナナさんは恥ずかしがっているけど、ユマさんとハナさんの言っている事は本当なんだろうね。
「遠くからレオ君の戦いを見ていたけど、やっぱり師匠の黒髪の魔術師は凄いと改めて思ったわ」
「あっ、私もレオ君は凄いと思ったよ。派手さはないけど、確実だよね」
「この村を覆う土壁も凄いよね」
僕は夢中で戦っていたから、自分自身の事は良く分からないんだよね。
僕は捕まった人を鑑定するけど、全員が盗賊って出ているね。
全部で三十人位はいるんじゃないかな?
山で捕まえた人も含めると、かなり大規模な盗賊団なんだね。
「守備隊長、村人は何箇所かに分けられて拘束されていました。全員救出しましたが数人怪我をしていたので、レオ君の連れているスライムが治療を行いました」
「ご苦労、周囲の警戒を続ける様に。まだ、どこかに盗賊が隠れている可能性は捨てきれないぞ」
「はっ」
村人も、無事に解放されたんだね。
山で捕まってきたお姉さん達もこちらにきたし、これで一段落だね。
念の為に、守備隊員が各家庭を見て回っています。
また、助け出された村人も、家族や隣人の確認をしていました。
「うーん、流石に疲れたよ」
「そうね、これだけの大仕事は私も初めてだわ」
あっ、ユリアさんとイリアさんも僕達の所にやってきたよ。
シロちゃんも一緒だから、村人の治療も無事に終わったみたいです。
「ユリアさん、イリアさん、お疲れ様でした」
「レオ君こそお疲れ様。一番厄介な相手をしてもらっちゃったら、こちらは楽だったよ」
「シロちゃんもバインドを使えたし、私達はサポートに徹していたわ」
シロちゃんも聖魔法のバインドが使える様になったから、襲ってきた盗賊を拘束したんだって。
でも、村民の救出や治療などをユリアさんとイリアさんに任せっきりにしちゃったし、僕の方こそとっても助かったよ。
僕達が話をしていたら、守備隊長さんが話に加わってきたよ。
「レオ君、それからユリアとイリアか。若い冒険者にも助けられた。改めて礼を言おう」
守備隊長さんは、僕達にお礼を言ってきました。
僕達も、元々は嘘の依頼で発生した火の粉を振り払っただけだもんね。
「明日午前中には、追加の守備隊もやってくる。調査をした上で、盗賊団を専用の馬車で連行する」
「じゃあ、村を覆う土壁はまだ残しておいた方が良いですね」
「村の防衛力を考えると、土壁は残しておいた方が良いだろう。あと、魔力が少ない所悪いが、また土牢を作って欲しい」
土牢を作る位なら、全然問題ないですよ。
さっさとやっちゃいましょう。
「えい!」
ズゴゴゴゴ。
「うぉ、何だこれは?」
「こ、これが黒髪の魔術師の魔法……」
村人も集まってきて僕の魔法にビックリしていたけど、盗賊を入れる檻を作るだけだもんね。
簡単な入口を作って、どんどんと盗賊が入れられます。
「二人は別にしてくれ」
「じゃあ、移動型の檻を改造しますね」
まだボロボロのおばあさんとしゅんとしているおじいさんは、山にいた盗賊を入れる為に作った檻に入れられました。
勿論、檻の周囲を守備隊がガッチリと監視します。
これで一段落ですね。
「レオ君、野菜とお肉を出してくれないかな?」
「村人も何も食べずに弱っているから、炊き出しをしようと思ってね」
「じゃあ、魔導コンロとお鍋も出しますね」
ユリアさんとイリアさんは、とても優しいね。
僕の魔法袋から必要な物を取り出して、料理を始めました。
「いやあ、助かったよ。これも使ってくれや」
「旦那を治療してくれてありがとうね。この野菜も使ってね」
村人からも、お礼と共に野菜を頂きました。
ナナさん達も加わって、特製のお鍋を作っていきます。
僕はというと、休んでって言われちゃったからゆっくりしています。
ずっと気を張っていたから分からなかったけど、だいぶ疲れちゃったみたいです。
「ふわぁ、シロちゃん眠くなっちゃったね」
シロちゃんも沢山の村人を治療して、お疲れ様モードです。
僕とシロちゃんは、村長さんの家の壁に寄りかかっていつの間にか寝ちゃいました。
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