第六百十八話 実技テスト開始

 そして、問題の四人組を一番最後に回して実技テストが始まりました。

 最初は、守備隊員や軍の兵が相手をします。

 変則的な相手をするのも、いい訓練になるそうです。


 カンカンカン。


「もっと、下半身を意識して打ち込んでこい。思いっきりやっていいぞ」

「はい!」


 スキンヘッドの人が若い男性を相手にしていたけど、あの人は僕から見ても中々の腕だと思うよ。

 中には剣だけでなく短槍や長槍にバトルハンマーとかを使っている人もいたけど、僕から見てもこういう武器の使い方があるんだと感心させられました。

 僕はダガーとショートソードよりも短い剣しか使えないから、何だかとっても面白いね。


 カンカン。


「アオン!」

「もっと思いっきり振りかぶって良いそうです」

「はっ、はい!」


 シロちゃんとユキちゃんも、ジェシカさんに通訳して貰いながら指導をしていました。

 特にユキちゃんとジェシカさんは普段も一緒にいることが多いから、言っていることも何となく分かるんだよね。

 そんなこんなで、いよいよ僕の出番になりました。

 木剣を構えて訓練場に立つと、四人組がちょっと怯えた感じで僕のことをみていました。

 うーん、何かやっちゃったかな?


「あ、時間が押しているので、四人まとめてで大丈夫ですよ」

「「「はっ?」」」


 目の前の四人がポカーンとしているけど、僕は構わず木剣を構えました。

 四人も戸惑いながら木剣を構えたタイミングで、ギルドマスターが声をかけます。


「試合は五分一本勝負。木剣をはじき飛ばされても、戦闘不能になっていないのなら拾ってでもやるんだ」

「「「はっ、はい……」」」


 おお、中々凄いことを言いますね。

 でも、実際の戦闘では相手は待ったをしてくれないし、動物や魔物なら尚更です。

 ということで、さっそく手合わせをします。


「はじめ!」

「「「くそっ!」」」


 ブン、ブン!

 スカ、スカ。


 三人はとにかく僕のことを倒そうと一斉に向かってくるけど、兵のコンビネーション訓練と違って連携がまるでなっていません。

 更に、予想通り剣の技術もよくないので、変な踊りをみんなでしているみたいです。

 なので、魔力を使うことなく普通に避けることができます。

 目の前の四人組はそんな余裕は全くないけど、他の人たちは僕が魔法を使っていないのに気がついていました。

 うーん、このままでは訓練にならないのでギルドマスターも「やれ」と顎で指示を出したので、魔法を使わずに対応することにしました。


「ふっ」


 ブオン、ガキン!


「あっ!」


 一人の懐に潜り込んで、一気に木剣を跳ね上げます。

 同じように残り三人の懐に潜り込んで木剣を跳ね上げると、ギルドマスターの厳しい声が響き渡った。


「おい、お前ら情けないぞ。レオは全く魔法を使っていないぞ。お前らは、純粋に八歳児に剣技で負けているんだぞ。さっさと木剣を拾え!」

「「「ええっ!」」」


 四人組は僕が魔法を使っていなくてかなり驚いているけど、ギルドマスターの言う通り今は手合わせの途中なのだから早く木剣を拾わないといけません。

 冒険者ギルドで僕と一緒にいたマヤさんとセラさんも、思わずため息をつくレベルです。

 でも、まだ時間はあるので今度は僕が攻撃を仕掛けながら木剣を弾きました。

 四人組は、早く終わってくれと泣きそうな表情に変わっていました。


「時間だ、そこまで」

「「「はあはあはあ……」」」


 なんというか、たった五分の手合わせで四人組は疲れ切って死屍累々って感じです。

 僕に罵声を浴びせた元気は、いったいどこにいったのだろうか。

 周りにいる人も、八歳児に四人で手合わせして惨敗だと、かなり呆れていました。


「お前ら、人に文句を言う前に自分の剣の実力を上げろ! なんだ、その下手なダンスは。このままでは、森に入った瞬間にオオカミに食い殺されるぞ!」

「「「はい……」」」


 ギルドマスターからリアルな現実を突きつけられたのもあり、四人組は改めてがっくりとしていました。

 剣技の講習を受けるのは必須になりそうだけど、自分の実力を知れてよかったと思った方がいいのかな。

 こうして、色々あったけどなんとか実技テストは終了しました。

 シロちゃんとユキちゃんも無事に教え終えたみたいだし、僕たちとしては上手く行ったみたいですね。

 じゃあ、治療をするために改めて冒険者ギルドに戻りましょう。

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