第五百六十四話 サンダーランド辺境伯領を出発します

 翌朝、僕はベッドから起きていつもの訓練をしてから食堂に向かいました。

 すると、既にアンソニーちゃんとユキちゃんが食事をしていました。

 僕も、ニコニコしている一人と一匹の隣に座ります。


「おはよう、アンソニーちゃん、ユキちゃん」

「はよー!」

「アオン!」


 口の周りをベタベタにしながら、元気よく返事をしていました。

 僕たちも朝食を食べるけど、今日はこの後直ぐに馬車に乗って出発する予定です。

 王都に帰るのも、ある意味大変なんだよね。

 そして、一緒に食事をしていたチェルシーさんが、更に凄いことを言ってきました。


「きっと、レオ君たちを各地の貴族は大歓迎するわ。何せ、帝国兵から王国を守ったものなのですから」

「うう、僕としては知り合いばっかりなのであまり過剰な歓迎は……」

「ふふ、知り合いだからこそレオ君たちのことを歓迎したいのもあるはずよ。レオ君の知り合いは、殆どがレオ君に助けられたのだからね」


 みんな良い人ばっかりなのが幸いだけど、凄い歓迎してくれるのが目に見えるよ。

 そして、更にこの人たちも追撃してきました。


「俺なんかよりも、レオ君の方が知っている連中の方が多いだろう。シークレア子爵領も、ディフェンダーズ伯爵領もだな。特に、当主の妻や子どもなんかは顕著だろう」

「私も同感ね。宮廷魔術師っても、王都の軍関係しか知らないわ。王国どころか帝国にまで名前が広まっているレオ君には敵わないわよ」


 ブラウニー伯爵とアイリーンさんも、チェルシーさんの意見に付け加えてきました。

 そう考えると、今頃王都ではどうなっているのかちょっと不安です……

 こうしてみんなで朝食を食べて、出発の準備を整えている時でした。

 屋敷に、フレアさんとミシャさんがやってきてくれました。

 道中の物資を持ってきてくれたけど、そういえばミシャさんの実家はサンダーランド辺境伯家の御用商人だったっけ。


「フレアさん、ミシャさん、おはようございます」

「おはよう、レオ君。久しぶりだね」

「本当にそうね。少し大きくなったみたいね」


 庭に出ると、複数の馬車を引き連れた二人の姿がありました。

 僕たちも直ぐに向かって挨拶したけど、やっぱり二人は優しいですね。


「レオ君が大活躍したって話を聞いていたけど、このくらいならやるんじゃないかなって思ったのよ」

「そうそう。でも、これで更にレオ君は偉くなっちゃうわね」


 二人が僕の頭を撫でながら言ってきたけど、僕にとってフレアさんとミシャさんは身体能力強化を教えてくれた師匠でもあるんだよね。

 だから、僕が尊敬するのもずっと変わらないです。

 そして、兵によって次々と荷物が馬車の中に積み込まれていきました。

 僕たちの乗る馬車にも荷物が運ばれたけど、飼い葉とかはシロちゃんのアイテムボックスに収納します。


「うう、昨日は飲みすぎた……」

「久々の酒は、酔いが回るのが早いな……」


 二日酔いの兵が何人かいたけど、久々のお酒だから仕方ないですね。

 シロちゃんが、荷物を積み込みつつ兵の治療をしていました。

 そして、ボーガン様も庭にやってきたけど、こちらは全然大丈夫でした。

 誰よりもお酒を飲んでいたのに、本当に凄いですね。

 こうして、積み込み準備が整ったところで、挨拶をすることになりました。


「一晩ありがとうございました」

「こちらこそ、本当にたすかった。今度は良いことで会おう」

「そうね。フランソワーズ公爵家のクリスちゃんも連れてきてね」


 僕は、ボーガン様とチェルシーさんと握手しました。

 確かに、帝国との戦闘じゃなくて良いことで会いたいですね。


「レオ君、道中気をつけてね」

「お土産をシロちゃんに渡したから、皆さんにあげてね」


 フレアさんとミシャさんとも、ガッチリと握手しました。

 お土産は大丈夫だとシロちゃんが触手をフリフリしていたので、帰ったらみんなに配らないと。

 そして、僕たちは馬車に乗り込みました。


「いってきまーす!」

「アオン!」

「うむ、気をつけてな」

「いってらっしゃーい!」


 ボーガン様に抱っこされているアンソニーちゃんも、僕たちに向けて手を振ってくれました。

 そして、馬車はゆっくりと進み始めました。

 いよいよ、本格的な王都への帰路が始まりました。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る