第三百十一話 早速お仕事開始です

 何とか回復したヒョードルさんと共に、僕たちは建物から作業場に向かいました。

 多くの人が行き交う中、僕たちはまたまた別の大きな建物の中に入っていきました。


 カンカンカン、ギコギコギコ。


「わあ、沢山の人が働いていますね」

「ここで、造船に必要な木材と鉄板を加工している。加工した物はドックに運んで、新造したり改修したりしているぞ」


 職人さんが、様々な道具を使って大きな木材や鉄板を加工しているよ。

 工場長さんが説明してくれているけど、職人さんって凄いんだね。

 そんな中を、僕たちは進んでいきます。


「まずは、レオの魔法でどのくらいの物が切れるか確認しよう」


 そっか、安全に作業しないといけないから、僕とシロちゃんの魔法でどのくらいできるかちゃんと確認しないと。

 やってきたのは、鉄板を加工する所だよ。

 台の上に、同じ大きさと厚さの鉄板が十枚並んでいます。

 よく見ると、台に穴が空いていて、一番上の鉄板に線がかいてあるよ。


「普通は、一枚ごとに魔導具で鉄板を切っていく。火花は出ないから、木材の側でも鉄板の加工が可能だ。レオ、まずは十枚からやってくれ」


 工場長さんから十枚重ねて切れるかやってくれって言われたから、僕とシロちゃんは鉄板の側にやってきました。

 うまく鉄板を切って、台や床を切らないようにしないといけないね。

 僕たちの周りに多くの人が集まってきたけど、僕とシロちゃんは目の前の鉄板に集中します。


 シュイン、スパッ、スパッ。


「「「おおー!」」」


 僕はエアカッター、シロちゃんがホーリーカッターで鉄板を切っていくと、周りの人からビックリした声が上がりました。


「ふう、台と床は切らないように気をつけてやってみました。工場長さん、どうですか?」

「ふむ、断面も問題ないしキチンと下まで切れているな。工場では安全のために一度に鉄板十枚くらいしか作業しないから、これで問題ないだろう」


 良かった、工場長さんから合格を貰えたよ。

 因みに、切断した鉄板は直ぐに職人さんが台車に乗せていったよ。

 この部品を組み合わせて、船を作るんだね。


「では、早速作業に移って貰おう。暫くは、木材の加工を中心にやって貰おう。全て目安の線が書いてあるから、その通りに切れば良いだけだ」


 よーし、早速お仕事開始だね。

 僕とシロちゃんで手分けして作業できるから、倍の速さでできるね。

 工場長さんは別の所に行ったので、僕たちは木材加工エリアに行きました。

 でもその前に、ツッコミを入れた人が。


「ヒョードル、お前いつまでついているんだ?」

「はいはい、邪魔者はさっさと帰るよ。レオ、頑張りな」


 ザンギエフさんが、さっきじゃんけんで負けたヒョードルさんにツッコミを入れていました。

 ヒョードルさんは僕とシロちゃんに手を振りながら、宿に戻って行きました。

 あっ、そうだ。

 ザンギエフさんに、ちょっと気になった事を言わないと。


「ザンギエフさん、この倉庫の中に悪い人はいないですよ」

「そうか。それなら、だいぶ対象が絞れるな」


 小声でヒョードルさんに話したけど、僕もシロちゃんも周囲から悪意を感じなかったよ。

 少なくとも、倉庫内には荒海一家はいないね。

 そんなお話をしている内に、木材加工エリアに到着しました。


「よし、じゃあどんどんとやってくれ。間違っても火魔法は使うなよ」

「流石に使いませんよ。僕は風魔法を中心に使っていきますね」

「おう。切ったのはどんどん運んでいくからな」


 木材加工エリアで火魔法を使ったら、大火事になっちゃうもんね。

 僕とシロちゃんは、気合を入れて作業に取り掛かりました。


「よし、これはオッケーだな。じゃあ、次の木材をセットしてくれ」

「はーい、よいしょっと」


 モゾロフさんに言われて、木材を専用の台の上に念動で動かして乗せます。

 微調整は職人さんが行うけど、木材を台の上に乗せるだけでも大変だもんね。

 前に土砂崩れ現場で沢山念動を使ったから、今ではそこそこ自信があるよ。


「痛た……」

「レオ、指を怪我したのがいるから治療してくれ」


 今度はゲンナジーさんに呼ばれて、指を怪我した人の治療をするよ。

 やっぱり木材や鉄板を加工する工場だから、怪我をする人は出てくるよね。

 あっ、ちゃんと休憩しながらやっているよ。

 こうして僕とシロちゃんは、午前中忙しく働きました。

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