第五百五十七話 停戦交渉に参加します
停戦交渉が始まって一週間、色々難しい対応をしながら進んでいったそうです。
特に、人質の待遇の差もあったのでこの辺が紛糾しました。
最初に奇襲で戦闘を仕掛けた指揮官は王国側で捕虜になっていたけど、一番酷いことをしたスラム街の人を動員した指揮官は既に死んでいたからです。
スラム街の人が起こした反乱の際に殺害されたらしいけど、流石に僕も同情はできませんでした。
そういう話をハーデスさんから聞きたいんだけど、ある日の朝急に僕に司令官執務室に来てほしいと言われました。
「停戦交渉が大詰めになったので、軍の幹部の顔合わせを行うことになった。レオ君も同席して欲しい」
「えっ、僕って軍の幹部なんですか?」
「宮廷魔導士なのだから当然だ。それに、爵位順でいえば私とブラウニー司令官の次になる」
あっ、そうか。
すっかり忘れていたけど、僕って騎士爵だったんだ。
今の前線にいる兵は、アイリーンさんの様に貴族の師弟はいるけど明確な爵位持ちは僕を含めて三人だけみたいです。
なので、アイリーンさんと一緒に宮廷魔導士の服を着て準備を整えました。
「あら、服が少し小さくなっているわね。前線にいるうちに、体が大きくなったのね」
アイリーンさんがちょっと嬉しいことを言ってくれたけど、確かに袖が短くなっていた。
まだまだ成長期だから大きくなるねって言ってくれたけど、大きくなるのを実感出来たのはとても嬉しいですね。
そして、ハーデスさんとブラウニー伯爵のところに行くと、兵が僕を見て少しからかっていました。
「おー、レオもきちんとした服を着ると宮廷魔導士様だなあ。服に着られているぞ!」
「お子様がコスプレしているようにも見えるぞ。もっとデカくならないとな」
普段はほぼ冒険者服だったので、僕も服に着られている感覚が強かった。
というか、この宮廷魔導士の服って殆どきていなかったよね。
シロちゃんも一緒についてくるそうなので、何があってもバッチリです。
屈強な護衛とともに、僕たちは基地から移動して会談場所になっているテントの中に入りました。
道中周りをみたけど、折れている剣や弓矢に血のついた跡もあったりと、激しい戦闘が行われていたというのをまざまざと見せつけられました。
ここで多くの兵が戦って、そして死んでいったんだ。
そして、テントの中に帝国側の幹部も入ってきました。
どうも、子どもの僕がこの場にいることにビックリしているみたいです。
すると、ハーデスさんが僕のことを紹介してくれました。
「紹介しよう。宮廷魔術師でもある、レオ騎士爵だ」
「レオです、宜しくお願いします」
僕がペコリと頭を下げると、帝国側の指揮官が何かを思い出したみたいです。
姿勢を正して僕に話しかけました。
「帝国大将のガーランドだ。いやいや、まさかこの場に黒髪の天使様がいるとは。だから、王国側の治療体制が凄かったんだな」
「「「あっ!」」」
ガーランド大将の発言を聞いて、他の帝国側の幹部も僕の二つ名を思い出したみたいです。
というか、帝国にまで僕の二つ名が広まっているとは思わなかったよ……
シロちゃんも、このことにビックリしていました。
「帝国にも教会があり、そこからレオ君の噂が広まっていたのだ。となると、帝国側の捕虜を治療したのもレオ君だね?」
「はい、治療しました。もちろん王国側の捕虜もです。僕は、目の前で傷ついていて助けられる人がいるなら助けたいです」
「なるほど、噂に違いない博愛の精神だ。だからこそ、帝国側がやったことも許せないだろう。私も、正直前任者はやりすぎだと思う。改めて、関係者の処罰を行うと約束しよう」
ガーランド大将が軽く頭をさげたけど、今回の戦闘は帝国側も思うところがあるのだろう。
帝国側の幹部も、難しい表情をしていた。
その後は停戦に向けての話し合いが始まり、難しいところは全部ハーデスさんとブラウニー伯爵にお任せしました。
途中でお茶をしながら僕の噂をネタに話が始まっちゃいました。
意外と色々なことが帝国に広まっていて、思わず恥ずかしくなっちゃいました。
こうして停戦交渉がまとまり、後は各国の偉い人が持ち帰って詰めの協議をするそうです。
その後は、基地に戻って捕虜になっていた人の治療を行うけど、もう少し早く戦闘が終われば良かったなって、そう思っちゃいました。
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