第二百九十四話 炊き出しのお手伝いをします

 ピピピ、ピピピ。


「うーん、もう起きる時間だね……」


 シークレア子爵領への旅も二日目になります。

 僕は懐中時計型の魔導具のタイマーを止めて、ベッドの中でうーんと背を伸ばしました。

 前回の時も思ったけど、このベッドは本当にふかふかだからぐっすりと眠れたよ。

 シロちゃんもベッドが気持ちよくて、まだまだ寝ているよ。

 でも、そろそろ起きて準備しないと、馬車の時間に間に合わないね。


「シロちゃん、朝だよ。そろそろ起きるよ」


 僕はシロちゃんがもぞもぞと動き出したのを確認してから、ふかふかのベッドから下りました。

 この宿で出る朝食のパンは、とっても柔らかくて美味しいんだよね。

 ちょっと期待しちゃうね。


「一晩、ありがとうございました」

「またのお越しをお待ちしております」


 とっても美味しいパンを堪能して、僕はカウンターにいた人に挨拶して宿を後にしました。

 うーん、今日も気持ちの良い青空だね。

 さて、馬車乗り場に向かって、ディフェンダーズ伯爵領行きの馬車に乗らないとね。


 パカパカ、パカパカ。


 馬車に乗ってもとっても良い天気が続いているので、思わず眠たくなっちゃうね。

 でも、お昼前にはディフェンダーズ伯爵領の街に着くから、頑張って起きていないと。


「まさか、あの黒髪の天使様と一緒の馬車に乗れるとは」

「この幸運を、神に感謝します」


 そして、ディフェンダーズ伯爵領の治療院で治療した時に同席したシスターさんが、たまたま一緒の馬車に乗っていました。

 旅って、こういう偶然があるんだね。


「黒髪の天使様がディフェンダーズ伯爵領にいらしてから、ヒカリ様も積極的に治療や炊き出しに参加されておりますわ」

「今日も、これから教会で行われる炊き出しにハルカ様とヒカリ様が参加される予定です」


 あっ、今日は教会で炊き出しが行われるんだ。

 それなら、ディフェンダーズ伯爵家の屋敷に行く前に教会に行ってもいいですね。

 この後の予定も決まったし、シロちゃんもお手伝いする気満々です。


「僕も皆さんと一緒に教会に行きたいのですけど、急に参加しても大丈夫ですか?」

「いえいえ、全然問題ありません」

「私達の方こそ、誘うような言い方でしたね」


 シスターさんが手をぶんぶんと振りながら答えてくれたけど、取り急ぎ問題なさそうです。

 皆でワイワイとお話をしている間に、僕達を乗せた馬車はディフェンダーズ伯爵領に到着しました。


「確か、こっちに教会があるんですよね」

「ええ、そうですよ」

「黒髪の天使様には、治療院で何回も病人を治療頂きましたね」


 馬車乗り場から歩くこと十分、目的地の教会に近づきました。

 目の前に教会の大きな建物があるし、教会の前には沢山の人が並んでいるね。


「はい、どうぞ」

「熱いので、気をつけて下さい」


 列の先頭では、ハルカさんとヒカリさんが炊き出しのスープを配っているよ。

 ヒカリさんは、前に会って以来本当に頑張っているんだね。

 そんな事を思いながら、僕とシロちゃんは炊き出しの所に向かいました。


「ハルカさん、ヒカリさん。お久しぶりです」

「あら、レオ君じゃない。久しぶりね」

「本当だ、レオ君だ」


 僕は、ちょうど二人が他の人と交代したタイミングで声をかけました。

 ハルカさんとヒカリさんも、ニコリとしながら僕の頭を撫でてくれました。


「先にお屋敷に行こうかと思いましたけど、炊き出しをやっているって聞いたのでお手伝いに来ました」

「まあ、レオ君らしいわね。でも、この時間ですと昼食もまだでしょう?」

「私達の分に少し余りがあるから、分けて貰いましょう」


 という事で、僕は昼食を頂いてからお手伝いをする事になりました。

 よーし、折角だから頑張ろう!

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