第百七十九話 魔導具工房でのお仕事を始めるよ
数日は僕も落ち込んだりもしたけど、あんまり落ち込んでばかりはいられないね。
今日から、いよいよ魔導具修理工房でのお仕事が始まります。
ふふふ、僕ちょっと楽しみなんだよね。
「レオ君の表情が明るくなって良かったわ。目に見えて落ち込んでいたからね」
今日は他の人と途中まで一緒なんだけど、僕はナナさんにも心配されるほど落ち込んでいたんだ。
ナナさんは僕の頭を撫でてくれるけど、今日からはもう大丈夫だよ。
という事で、僕は皆と分かれて冒険者ギルドに入って行きました。
「受付お願いします」
「はい、魔導具修理工房の件ね。ちょっと待っていてね」
僕はマナさんのいる受付で手続きをして、魔導具修理工房の人が来るのを待ちます。
一体どんな人がくるのかな?
「すみません、お待たせしました」
三十分程待っていたら、若い男の人が冒険者ギルドの受付にやってきました。
僕も男の人の前に行きます。
シロちゃんも、僕の頭の上から腕の中に移動しました。
「初めまして、僕はレオです。このスライムはシロちゃんです」
「俺はサンダース。魔導具修理工房の職人だ」
ちょっと背が高くて痩せ型で髪の毛は緑色の短髪、赤いバンダナを巻いているよ。
「では、レオ君を工房に連れていきます」
「宜しくお願いします。レオ君は、夕方になったらギルドに来てね」
僕はマナさんに挨拶してから、サンダースさんの後をついて行きます。
一体どこに工房があるのかなと思ったら、意外な場所にありました。
「あれ? いつも買い物をしている商会の裏なんですね」
「この商会で修理受付をして、商会の裏にある工房で直しているんだ。服やアクセサリーも作る職人もいるよ」
おお、何でも工房なんですね。
アマード子爵領の鍛冶屋工房とは、また違っていて面白いなあ。
僕とサンダースさんは、お店の裏手から工房に入りました。
「ただいま、レオ君を連れてきたよ」
「おはようございます、宜しくお願いします」
既に工房では仕事が始まっていて、多くの職人さんが働いていました。
そして、ここのところよく会っている人が僕の所にやってきたよ。
「レオ君、ようこそ工房へ」
「お姉さんも職人さんなんですね。そういえば、僕の服を作ってくれましたね」
「そうなのよ。たまに店頭にも立つけどね」
クリスちゃんにプレゼントする髪留めや髪飾りを選んでくれたり、僕の服を作ってくれたりしたお姉さんも職人さんなんですね。
早速僕は、お姉さんの後をついて行きました。
ごそごそ。
「この木箱には、魔力切れの魔石が入っているわ」
「うわあ、結構沢山ありますね」
「壊れた魔導具が暴走しないようにエネルギー源の魔石を取り出すのだけれど、魔力切れってのも多いのよ。レオ君には、魔石に魔力を注入して欲しいのよ」
「分かりました、頑張ります!」
僕は木箱に入っている魔石に魔力を注入するのだけれど、魔石には属性もあるみたいです。
あと、大きさも違うんだね。
魔力が空っぽの魔石は灰色だけど、魔力を入れると色が変わるんだ。
「じゃあ、属性ごとに魔石を分けますね。シロちゃんもお願いね」
「何かあったら、周りの人に言ってね」
よーし、頑張ろう。
僕、こういうコツコツとやる仕事が何だか好きだなあ。
あっと、いつも通り懐中時計型の魔導具の時間をセットしてと。
シューン。
「えっと、これは赤だから火属性っと」
シューン。
「あれ? これも火属性だ」
魔石に魔力を入れていくと、空っぽになっている魔石は火属性が多いみたいだね。
シロちゃんが魔力を注入している魔石も、火属性が多いみたいです。
うーん、これは何でだろうか?
「おお、沢山出てきたな。このコバルトブルーレイクの街は冬は結構寒くなる。だから暖房の魔導具に使う魔石が多いんだよ」
魔力を注入した魔石を取りに来た職人さんが教えてくれたけど、僕もアマード子爵領で温かくなる魔導具を買ったよ。
この魔導具があるのとないとじゃ、感じる寒さが全然違うんだよね。
それで、冬の間使って魔力切れになったんだね。
シューン、シューン。
魔力を入れ過ぎない様に、慎重に作業をしないとね。
シロちゃんも気をつけて魔力を注入しているので、今の所大丈夫です。
こうして僕は、シロちゃんと一緒に昼食まで空の魔石に魔力を注入する作業を続けました。
「レオ君は、黙々と作業をするタイプなんだね。職人向きの気質だね」
「五歳とは思えない集中力ね」
「そっちの小さいスライムも、中々のものだね」
皆で昼食をとっていると、職人さんが僕とシロちゃんの事を褒めてくれました。
午前中は、何とか上手くいった感触もありました。
「レオ君、予定よりも数多くの魔石への魔力注入が進んだから、午後は別の仕事をしてみましょうね。きっと良い経験になるわよ」
お姉さんが、別の仕事をするって言ってくれたよ。
一体どんなお仕事かな?
僕もシロちゃんも、ちょっとワクワクしているよ。
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