第四百四十話 捜査状況

 その日の夕食時に、王城から帰ってきたギルバートさんが食事前に情報を教えてくれました。


「みんなある意味事件の関係者だから、中途半端に理解するよりもキチンとした情報を知っておいた方が良いだろう」

「そうね。特にレオ君は中心人物ともいえるし、軍と協力する事もあるでしょう」


 モニカさんも、ギルバートさんの意見に同意していました。

 ヒルダさんの件があるので、娘のモニカさんと孫のウェンディさんとアレックスさんも事件の関係者といえましょう。

 みんな真剣な表情で、ギルバートさんの方に向き直りました。


「ヴァイス子爵が勢力拡大を狙って、不正な商売やシークレア子爵への婚姻を進めていたのは確定だ。その過程で、複数の事件を引き起こしたことになる」

「あの、ギルバートさん、ヴァイス子爵は罪を認めたんですか?」

「いや、まだだ。だが、ヒルダ夫人が一時瀕死の重体になったと聞いてかなりビックリしていたよ。それに、たくさんの証拠品が出ているから、捜査自体に遅延はない」


 うーん、あれだけの事件を引き起こして未だに否認しているとは。

 やっぱり、ヴァイス子爵は貴族としてのプライドが凄いんだ。

 屋敷に行った時も、自分は捕まえられないって言っていたもんね。

 そして、話は子飼いの貴族の件になりました。


「子飼いの貴族は男爵と一代のみの名誉貴族を合わせて八家だ。どちらかというと、名誉貴族が主に動いている。というのも、ここで上手く手柄をあげれば名誉貴族から法衣貴族になれると思ったそうだ」

「う、うーん。僕も騎士爵になるので何ともいえませんけど、人としての常識よりも貴族の名誉を選んだんですね」

「嘆かわしい事に、レオ君のいう通りだ。国民がいるからこそ貴族がいるのだが、貴族主義の奴らは貴族がいるからこそ国民がいるという逆の考えを持っている。だから、国民や他の貴族の事などどうでもよいのだよ」


 ギルバートさんが悩ましく答えてくれたけど、やっぱり一代貴族と法衣貴族の差はかなり大きいんですね。

 とはいえ、何でもやっていいってことではないです。


「名誉貴族四人に関しては、ヴァイス子爵家より押収した資料が決定打となって既に捕縛している。ただ、残りの男爵家四家に関してはまだ決定的な罪状を抑えられていない」

「ということは、まだ何かをする可能性があるんですね」

「とはいえ、奴らも一応法衣貴族だ。既に得ているものを失わない為にも、今は大人しくしている。当主は事情聴取を受けているが、それなりの事を話して自分は関係ないと主張している」


 ということは、残りの四家のどこかが何かの理由で暴走する可能性もあるんですね。

 確かに、他家の貴族令嬢や僕たちにちょっかいを出す可能性もあるので、色々な事が中止になるのはしょうがないです。

 そして、話は安息日の大教会での奉仕作業になりました。


「実は、その奉仕作業に問題となっている貴族家の令嬢が参加する事になっている。私は、そこで何かが起こるのではないかと思っている。教会側も警戒をしていて、今回の件を理由にして何かをしてくる可能性は否めない。十分に注意する事だ」


 教会で行う奉仕作業だから酷い事をしないで欲しいけど、何かが起こる可能性はあるから十分に警戒しないと。

 こうして話が終わったところで、夕食を食べ始めました。

 折角のお茶会がが延期になっちゃったから、僕もちょっとがっかりですね。

 そして、安息日の前日まで僕は屋敷に留まって勉強や訓練をして過ごしていきました。

 屋敷にいる分には安全なので、数日間は平穏な日が続きました。

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