第三百二十七話 教会での治療が完了です

 昼食は、教会の人が用意してくれました。

 教会の中にある部屋に移動して、モゾロフさんと一緒に食べます。


「質素な料理で悪いわね」

「俺は全然気にしないぞ。腹にたまれば問題ない」

「モゾロフ、あんたに言ったんじゃないよ。まったく……」


 何だか年配のシスターさんとモゾロフさんが、面白い会話の掛け合いをしている。

 僕もシロちゃんも出された料理は気にしないし、モゾロフさんはおかわりまでしていますね。

 昼食後は、少し休憩してから治療を始めます。


 ざわざわ、ざわざわ。


「あれ? 人が沢山いるよ。あっ、造船所の職人さんがいっぱいだ!」

「なんだろうな。おっ、ゲンナジーもいるから聞いてみよう」


 部屋から教会内に戻ると、職人さんが沢山集まっていました。

 僕も、モゾロフさんと一緒にゲンナジーさんのところに向かいます。


「おう、何があったんだ?」

「作業で使っている魔導具の調子が悪くなったんだよ。魔導具の修理もあるし、ついでに守備隊の現場検証もやっちまえって事で休みになったんだよ。暇になったから、解体作業現場と教会に分かれて集まったんだよ」

「ははは、思い切った事をしたな。まあ、纏めてやっちまえって事か」


 ずっと道具を使っていれば、故障する事もあるもんね。

 まだ日が高い時間だし、職人さんの癖で何かしていないと駄目みたいです。


「ばっちゃん、という事だ。荷物運びでも何でもやるぞ」

「おやまあ、みんな集まって悪いわね。でも、働くなら頑張って貰うよ」

「任せておけ!」とかけ合い

 ゲンナジーさんだけでなく、集まった職人さん達が威勢のよい声を上げていました。

 年配のシスターさんも、嬉しそうな表情をしているね。

 と、ここでシスターさんが職人さんに質問しました。


「そういや、レオ君がとんでもない回復魔法を使ったけど、あんた達は何か知っているかい?」

「うーん、骨折くらいなら瞬時に治すし、この前小指を潰した奴のもあっという間に治したもんなあ」

「材木が崩れて男の子の足を潰した時も、直ぐに治したぞ。レオならそのくらいはできるって、みんな思っているぞ」

「ああ、うん。黒髪の天使様の奇跡も、あんた達にとっては日常の光景なのね」


 職人さんが怪我をするのは日常茶飯事なので、僕とシロちゃんの複合魔法も特に気にしていません。

 そんな職人さんの返答に、年配のシスターさんは思わず苦笑していました。

 話は終わったので、列整理で残ってくれた職人さん以外は、若いシスターさんと共に街に行きました。

 重い荷物を、教会まで運んで貰うそうです。

 ではでは、午後の治療開始です。


「おっ、おっちゃんも治療に来たのかい?」

「最近膝が痛いんだよ。年は取りたくないね」

「ははは、確かにそうだな」


 午前中以上に人が集まっているけど、列整理をしてくれる職人さんが並んでいる人と仲良く話しています。

 僕もシロちゃんも、急ピッチで治療をしていきます。


「モゾロフ、造船所ではいつもこんなにいい治療を受けているのかい?」

「大した事ない怪我は、レオも治療しないぞ。中程度以上だぞ」

「だとしても、羨ましいねえ」


 今度は、治療を終えたおばあさんとモゾロフさんが仲良く話していました。

 僕も造船所では軽症くらいなら治療はしないし、何よりも職人さんがこれくらいは平気だと治療を受けないんだよね。

 ここで、ちょっとトラブルが発生しました。


「おい、急患だ。重度の骨折をした子どもだ」

「悪い、道を開けてくれ」

「い、痛い、痛いよー!」


 担架に乗せられた僕と殆ど年齢が変わらない子どもが、両足を骨折した状態で運ばれてきた。

 治療で並んでいる人も道を開けてくれて、僕とシロちゃんの前に担架を運んできました。


「スラム街の解体作業現場とは別の家が崩れたんだよ。取り敢えず引っ張り出したんだ」

「分かりました。シロちゃん、頑張ろう!」

「痛い、痛いよー」


 泣き叫ぶ子どもを早く楽にして上げたいので、僕とシロちゃんは直ぐに魔力を溜め始めた。


 シュイン、シュイン、シュイン。


「では、治療します!」


 ぴかー。


 男の子を中心にして複数の魔法陣が展開し、僕とシロちゃんは回復魔法を放ちました。

 手応えバッチリだったけど、果たしてどうか。


「いた、あれ? 痛くない!」


 治療を終えると、男の子はすくっと立ち上がってビックリしていました。

 良かった、治療は上手くいったね。


「この前の木材で下敷きになった男の子と、原因も治療した内容も一緒でしたね」

「だな。まあ、何にせよ治療が上手くいって良かったな」


 僕とモゾロフさんは普通に話をしていたけど、列に並んでいた人はビックリした表情で固まっていました。


「ほらほら、黒髪の魔術師様にとって、この程度の怪我はなんて事ないってことだ。次の人は椅子に座りな」

「あっ、ああ……」

「そ、そうなのか?」


 僕とシロちゃんの椅子の前に、未だにぽけーってしているおじさんが座りました。

 さてさて、治療の続きをしないとね。

 こうして、教会での治療も僕とシロちゃんにとっては問題なく終わりました。

 街の人は未だに理解が追いついていないけど、少しすれば慣れていくはずだよね。

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