第五百十九話 結婚式の終わりとブーケプルズ
「それでは、これから結婚式を執り行う」
司祭様が言葉を発すると、新郎新婦だけでなく教会内にいる全ての人が司祭様に向き直った。
全員、真剣なまなざしですね。
「ごほん、では、セルゲイ・シークレアはライサ・ブランフォードを妻とし、終生愛する事を誓いますか?」
「誓います」
「ライサ・ブランフォードはセルゲイ・シークレアを夫とし、終生愛する事を誓いますか?」
「誓いますわ」
「よろしい。それでは、指輪の交換を」
宣誓が終わり、セルゲイさんとライサさんはお互いに指輪を交換します。
それぞれに指輪がはめられたところで、二人は改めて司祭様に向き直りました。
「それでは、誓いの口づけを」
司祭様の言葉で、二人は改めてお互い付き合いました。
ライサさんが軽く膝を曲げてからセルゲイさんがライサさんのヴェールを持ち上げ、そして再び向き合います。
セルゲイさんがライサさんの肩に手を置いて、軽くキスをしました。
「おお、ここに新たな夫婦が誕生しました。二人に盛大な拍手を」
「「「おめでとー!」」」
僕たちに向き直った新しい夫婦に対して、教会中から大きな拍手が送られます。
もちろん、僕たちも大きな拍手を送りました。
その中でも、アンジェラさんとイレーナさんは大粒の涙をこぼしながら拍手をしていました。
当主が急死してから、きっと色々なことがあったんだね。
もちろん、ブランフォード子爵夫妻も、ハンカチで目尻を押さえています。
結婚に至るまで、他の貴族の妨害があったりとこちらも大変なことがあった。
そして、セルゲイさんとライサさんはゆっくりとお辞儀をしながらバージンロードを進んでいきます。
ドアのところに来ると僕たちに向き直り、一礼すると改めて大きな拍手が二人に送られました。
これで結婚式が終わりかと思ったら、まだまだやることがあるそうです。
来賓も含めて、全員教会の外に出ました。
「では、これからブーケトスではなくブーケプルズを行います」
「「「ブーケプルズ?」」」
ブーケトスもブーケプルズも全く分からない僕たちは、思わず首を傾げちゃいました。
すると、僕たちの様子を見たオリガさんが、僕たちに説明をしてくれました。
「あのね、新婦が持っているブーケを次に受け取った人が結婚出来るって言われているのよ。それで、新婦が後ろ向きでブーケを投げて未婚の女性が奪い合うのがブーケトスよ」
「な、なんだか凄いイベントですね……」
「実際に、血で血を洗うようなこともあったわ。冒険者が絡むと特にね」
うん、どんなものか聞かなかった方が良かったかも。
クリスちゃんとマヤちゃん、それにユキちゃんは思わずお互い抱き合ってブルブルと震えちゃったよ。
ウェンディさんも、顔が青くなっちゃった。
「それで、この教会は坂の上にあるから過去に勢い余って坂を転げ落ちた人もいるのよ。だから、代わりにブーケに繋がった紐を誰が引くかというブーケプルズに変わったのよ。だから、安全だからみんなも参加して良いのよ」
「じゃあ、クリスも参加する!」
「マヤも!」
小さい子でも安全というので、ウェンディさんだけでなく二人もついていきました。
何気に、ユキちゃんも参加していますね。
「ふふふ、私も参加しようかしら?」
「お母さん、それはやめて。お父さんが可哀想よ」
うん、僕もナディアさんの意見に賛成です。
オリガさんが参加したら、ユリスさんがいないことになっちゃうよ。
娘が母親を抑える感じで、娘の方がブーケプルズに参加していきました。
既に恋人がいる人も参加して良いらしく、ダリアさんも参加していきました。
でも、なんだか、独身女性のオーラが殺伐として凄いんですけど。
あまりの迫力に、男性陣が気圧されていますよ。
そんな中、準備が無事に完了しました。
「それでは、紐を引いて下さい」
「ああ、駄目だった!」
「どうして引けないのよ!」
おお、ブーケを取れなかった人の恨み怨念が凄いことになっていました。
なんというか、そこまでのものなのかって思っちゃうよ。
ちなみに、クリスちゃんたちもブーケはゲットできませんでした。
そんな中、ブーケをゲットしたのはこの人でした。
「あっ、当たった」
「おめでとうございます。ブーケをゲットしたのは、ベールガールを務めたナディアさんです。皆さん、大きな拍手を」
ナディアさんは、まさか自分がブーケをゲットするとは思ってなかったみたいです。
ちょっと困惑した表情の中で、ライサさんからブーケを受け取っていました。
うん、男性陣から大きな拍手を送られているけど、ブーケを逃した独身女性陣からはもの凄い目で見られていました。
もちろん、クリスちゃんたちやダリアさんたちは笑顔で拍手をしていました。
なんにせよ、これでブーケプルズは無事に終了ですね。
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