第三百七十九話 いつもの朝の訓練

 ピピピピ、ピピピピ。


「うーん、よく寝たなあ。昨日は色々な人とお喋りしちゃった」


 懐中時計型魔導具のアラームがなったので、僕はうーんと背伸びをしました。

 昨日の歓迎会の途中から僕の色々な話を聞きたいご婦人に囲まれてしまったので、僕は今まで何があったかをずっと話していました。

 僕の周りにいたご婦人達も、僕の話が聞けて満足だったみたいです。

 さて、いつもだったらこの後は自主練習なんだけど、実はネストさんが僕がどんな訓練をしているのか見たいそうです。

 ですので、僕はシロちゃんを起こして着替えてから、屋敷の庭に向かいました。


「レオ君、おはよう!」

「待っていたよ」


 庭に行くと、軍服に着替えてやる気満々なネストさんとダンビルさんの姿がありました。

 まだ早朝なのに、とっても良い笑顔をしていますね。

 ではでは、さっそく訓練を始めちゃいましょう。


「最初は、いつも魔力の循環と操作の訓練から始めています。この訓練は毎日続けると効果があるって、魔法を教えてくれたセルカーク直轄領の守備隊のお姉さんが教えてくれました」

「魔法も毎日の基礎訓練が大切というわけか。レオ君に魔法を教えた守備隊員は、優秀なものだったんだな」


 僕がセルカーク直轄領でセレンお姉さんに教えて貰ったことは、未だに毎朝必ず行っています。

 ネストさんも基礎訓練の大切さを分かっていて、ダンビルさんもふむふむと頷きながら僕が魔力の塊の大きさを変えるのを見ていました。


「次に、剣の練習を兼ねて魔法剣を発動させます。アマード子爵領の親方さんに貰った剣を使っています」

「これはとても良いダガーだ。相当腕の良い職人だな」

「ナイフもとても綺麗ですね。レオ君の為に、一生懸命に作った剣と分かります」


 僕とシロちゃんは、ネストさんとダンビルさんに親方さんから貰った魔鉄とミスリルの混合金属でできた剣を見せました。

 二人は色々な角度から剣を見ていて、感嘆の声を漏らしていました。

 剣を返して貰ったところで、僕とシロちゃんはいつもの形を始めました。


「えい、やあ!」


 ひゅん、ひゅん。


「うむ、とても良い形だ。剣も毎日訓練しているのだな」

「しかも、魔法剣を発動しながら行っています。相当高度な技ですよ」


 僕とシロちゃんの形を見て、二人ともとても感心していました。

 木剣を使って形をする時もあるけど、魔法の訓練にもなるので大抵は魔法剣を発動させて訓練しています。

 サンダーランド辺境伯領の時みたいに剣技だけで魔物を倒す事も実際にあったし、剣ももっと上手くなりたいな。


「旅のある日は、大体このくらい練習しています。余裕のある日は、まだ上手くできない魔法の練習をしたりします」


 という事で、今度は飛翔魔法の訓練を行います。

 まだ高速移動だったり、方向転換とかが上手くいかないんですよね。


 ふわっ。


「はあっ? 人が宙に浮いたぞ!」

「そ、そんな。飛翔魔法は伝説の魔法ではなかったのですか?」


 僕とシロちゃんが飛翔魔法を使うと、ネストさんとダンビルさんがとんでもなくビックリしちゃった。

 やっぱり人が宙に浮くのって、とんでもなくビックリしちゃうんだね。

 そんな中、僕とシロちゃんは数分間飛翔魔法の訓練を行いました。

 今日はいっぱい治療をしないといけないから、魔力は取っておかないとね。

 こんな感じで、今日の魔法の訓練は完了です。

 僕達は、タオルで汗を拭いてから朝食を食べる為に食堂に向かいました。


「あなた、ダンビル、お帰りなさい。レオ君とシロちゃんの魔法の訓練はどうでしたか?」

「レオ君とシロちゃんも、席に案内するわ」


 食堂では、イストワールさんとシャンティさんが僕達を待っていました。

 イストワールさんは、僕とシロちゃんの訓練結果にとっても興味を持っていました。


「いやはや、想像していたものを遥かに超えていた。大したものだよ」

「伝説といわれていた魔法を、いとも簡単に扱っていました。私が今までに見た魔法使いは、一体何だったのだろうかというレベルでした」

「あら、レオ君とシロちゃんってそんなに凄かったのね。やっぱり、二つ名持ちの魔法使いって凄いのね」


 席に着いたネストさんとダンビルさんが興奮した口調でイストワールさんに返答していたけど、僕としてはいつも通りの訓練をしただけなんだけどね。

 そして、僕とシロちゃんの興味は、目の前におかれた美味しそうなハニートーストに注がれていました。

 うん、朝から元気になりそうな朝食を食べられそうだね。

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