第二百十話 伯爵様が興奮しちゃった

「申し訳ないですが、詰め所にお館様がおりますのでご説明頂けないでしょうか?」


 防壁の門を警備している兵が僕達に申し訳なく言っているけど、ここはキチンと説明をした方が良いよね。

 僕とシスターさん達は馬車から降りて、兵の先導で防壁の門の近くにある兵の詰め所に向かいました。

 そして、兵の詰め所にある会議室っぽい所の前に着きました。


 こんこん。


「失礼いたします。お館様、街道に現れたというレイスですが既に倒されたとの報告があがりました」

「なにー!」


 おお、兵がドア越しに中にいる人に説明をしたら、とってもビックリした声が聞こえてきたよ。

 大きな声に、僕とシロちゃんは思わずビクッとしちゃったよ。


「本件につきまして、シスター長様の御一行がご説明頂けるというという事で御同行頂きました」

「そうか、入ってくれ」


 入室の許可が出たので、僕達は部屋の中に入りました。

 すると、部屋の中には兵と打ち合わせをする豪華な鎧を着た男性がいたよ。

 豪華な鎧を着た男性は筋肉ムキムキのスキンヘッドで、しかも大柄ってのもあってか如何にも軍人って感じの人だったよ。

 

「シスター長、長旅で疲れている所申し訳ない」

「伯爵様、私どもも事の重大さは把握しております。こうして無事に伯爵領に着いた事は、奇跡と言えましょう」


 あっ、この筋肉ムキムキの人が伯爵様なんだね。

 守備隊長みたいに、前線で戦う兵かと思っちゃったよ。


「幸いにして、レイスが街道に現れてこちらに気付く前に魔法で倒す事が出来ました。私の聖魔法では撃退する事はできても、退治する事は不可能でしたでしょう」


 おおー、年配のシスターさんは聖魔法が使えるんだね。

 だから、他のシスターさんも聖魔法に詳しかったんだ。

 それに、年配のシスターさんは邪悪な気配とかを感じる事が出来るみたいだし、探索魔法に近い魔法を使えるのかもしれない。


「しかし、それならどうやってレイスを倒されたのか?」

「それは、ここにいる黒髪の天使様であるレオ君がたまたま馬車に同乗しておりまして、レオ君が強力な聖魔法を使ってあっという間にレイスを浄化しましたわ。私どもは、とてもワクワクしながらレオ君の魔法を見ておりましたわ」

「な、なんと、あの黒髪の天使様で黒髪の魔術師たるレオ君が同乗していたとは」


 年配のシスターさんがニコニコしながら僕がレイスを浄化した事を話していたけど、伯爵様は目を開くほどに驚いていたよ。

 そして伯爵様は、ビックリしたまま僕に話しかけてきました。


「君が、かの有名なレオ君か。確かに黒髪の幼い子だな」

「ゆ、有名かどうかは分からないけど、僕はレオです」

「うむ、冒険者カードも間違いないし、何よりも冒険者カードの裏に記載されている戦績が物凄い。ははは、男子として、いつかはこれ程の武勇を上げてみたいものだな」


 伯爵様は、大笑いしながら僕が差し出した冒険者カードを返してくれた。

 とっても豪快な人ってだけあって、笑い方も豪快だね。


「レオ君は、初級聖魔法のターンアンデッドでレイスを浄化してしてしまいましたわ。噂以上の凄い魔法使いで、私は感激してしまいましたわ」

「シスター長がそういうのでしたら、間違いはないだろう。是非とも、武勇伝をもっと聞きたいものだな」


 いつの間にか、僕の褒めあいになっちゃったよ。

 えーっと、レイスの件はもう終わりで良いよね?

 すると、伯爵様は僕にビックリする事を言ってきました。


「レオ君、是非とも我が家に泊まっていってくれ。レオ君の武勇伝を、もっと聞きたくなっぞ!」


 えー!

 何だか、完全に予定外の事になっちゃったよ。

 でも折角の申し出だから断るのも悪いし、僕は伯爵様が用意した馬車で伯爵様の屋敷に向かう事になりました。


 どーん!


「あ、あの、とっても豪華な夕食ですけど……」

「ははは、レオ君は伯爵領を救ったのだ。遠慮しないでくれ。それに、レイスの討伐料は冒険者ギルド経由でキチンと支払うぞ」


 屋敷の食堂に案内されると、まさに貴族の料理って感じの豪華な夕食が出てきました。

 しかも、シロちゃんにもお肉の塊が出てきたよ。


「すみません、良くわからないままにレイスを倒しちゃったんですけど、そんなに大変な魔物だったんですか?」

「ゾンビはしつこいだけで燃やせば倒せるのだが、レイスは生前の能力を引き継いでいる事が殆どで尚且つ能力が上がっているんだ。しかも奴は生前魔法使いらしく、これまでも何人もの人があのレイスに殺されたのだよ」


 おお、伯爵様がレイスについて教えてくれたけど、とっても危険な存在だったんだね。

 レイスが攻撃してくる前に倒せて、本当に良かったよ。

 すると、伯爵様が更にヒートアップしながら僕の事を聞いてきたよ。


「儂も武人の端くれだと思っているが、改めて戦績を見たけどレオ君は本当に凄いな。ゴブリンキングは、どうやって倒したんだい?」

「えっと、このスライムのシロちゃんが酸弾を使ってゴブリンキングの顔を攻撃して、怯んだ隙に魔力を溜めたエアーカッターで一撃で倒しました」

「なんと、一撃でゴブリンキングの首をはねたのか。レオ君の連れているスライムも、かなりの強さだな」


 その後も、盗賊団を倒した事とかアマード子爵の先代様を助けた事とか、色々な話を聞かされちゃいました。

 伯爵様はとっても良い話が聞けたととっても満足した顔をしていたけど、僕とシロちゃんはずっとハイテンションな伯爵様を相手にしたのでとっても疲れちゃいました。

 客室に案内されたら、直ぐにベッドに入って眠っちゃいました。

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