第二百十一話 盗賊を捕まえちゃったよ

 サンダーランド辺境伯領への旅も、五日目になりました。

 昨夜は伯爵様と話し疲れて早く寝ちゃったので、いつもよりも少し早めに起きちゃいました。


「レオ君、昨夜はとても楽しい話を聞かせて貰った。アマード子爵がレオ君の事を自慢しておったが、儂もこれでアマード子爵に自慢できるな」


 伯爵様はニコリと笑いながら、僕に握手をして見送ってくれました。

 サッパリとした、豪快な人だったね。

 さて、今日も馬車旅は続くので僕は馬車便に乗り込みます。

 

 カラカラカラ。


「今日は晴れているけど、少し肌寒いね」


 段々と秋から冬に向かっているので、朝のうちはちょっと寒いです。

 でも、日中になると温かくなるんだよね。

 僕は、服装の調節が出来る物を着ています。


「今日は、馬車に乗る人が多いですね」

「この先にある、伯爵領で二番目に大きな街を目指しますので」

「暫くは森沿いを進みますので、引き続き注意が必要ですわ」


 この先にある街の教会に行く為に、昨日も一緒だった二人の若いシスターさんと一緒です。

 他にも沢山の人が馬車に乗っていて、全員で八人が馬車に乗っています。

 若い夫婦に、商人っぽい人もいるね。

 僕は、主にシスターさんと話をしながら周囲の警戒を続けていました。


 ガサガサ、ガサガサ。


 あっ、前の茂みに何かがいて揺れているよ。

 探索魔法をかけると反応が三つあったけど、オオカミよりも大きそうだね。


 ガサガサ、ガサガサ。


 いきなり襲ってくる可能性もあるから、僕は魔法障壁の準備をしました。


 ガサッ!

 シュイーン、ガン!


「おりゃ……ブベラ!」

「ガハッ」

「あた! な、何だこれは」

「「「キャー!」」」


 あっ、茂みから一気に襲ってきたのは盗賊だったよ。

 馬と馬車目掛けて突っ込んできたけど、僕の展開した魔法障壁に突っ込んじゃった。

 特に女性の乗客からは悲鳴が上がっていたけど、三人の盗賊のうち二人は顔面から魔法障壁に突っ込んで鼻血を出しながら気絶しちゃったよ。

 残った一人も腕を押さえているから、ほぼ戦闘不能みたいだね。


 ザッザッ。


「ちょっと、行ってきます」

「俺も行くぞ。とはいえ、既にボロボロだな」

「レオ君、気をつけてね」

「怪我しないでね」


 馬車は一旦止まって、少し後方にいる三人の所に僕と御者さんが向かいました。

 シスターさんが心配そうにの声をかけてくれるけど、御者さんの言う通り残った盗賊もボロボロです。


 シュイーン、バシッ。


「な、何だこれは?」

「はいはい、煩いから黙ってな」


 シロちゃんがホーリーバインドを使って残りの一人を捕縛すると、御者さんが三人を縄で拘束しました。

 もう、これで大丈夫ですね。


「今、馬車に接続出来る車輪付きの檻を作りますね」


 ズゴゴゴゴ。


「あっ、ああ……何だこれは……」

「いやはや、これは凄いな。じゃあ、馬車に連結するぞ」


 そして、コバルトブルーレイクの村で捕まえた盗賊を運ぶのと同じ様に、車輪付きの檻を土魔法で作ります。

 御者さんがビックリしながらも馬車に檻を縄で固定してくれていて、意識がある盗賊は言葉を失っていました。


「じゃあ、街に着くまで眠って下さいね」


 もわーん。


「な、何を……ぐう」


 意識がある盗賊が乗客に何かしない様にと、僕は闇魔法の睡眠魔法で眠らせました。

 ナナさんに闇魔法を教える為に、いっぱい補助魔法を覚えたんだよね。

 これで、出発準備完了です。

 僕と御者さんは、馬車に戻りました。


「すみません、お待たせしました」

「全然待ってないですよ。やはり、レオ君は凄い魔法使いですわ」

「私達は、またもや黒髪の天使様の偉業を目撃してしまいましたわ。この幸運を、神に感謝します」

「「「黒髪の天使様!?」」」


 あっ、シスターさんが僕の二つ名を言ったら、乗客がとても驚いちゃったよ。

 そして街に着くまでの間、またもや馬車の乗客から色々な質問がありました。


「では、この盗賊は我々で引き取ります。賞金首の場合は、冒険者ギルド経由で報奨金が入ります」

「お願いします」


 街に入る時に道中の経緯を説明すると、盗賊は伯爵領の兵に引き取られました。

 因みに、盗賊は道中良く寝ていたのでとっても静かでした。

 馬車乗り場に着いて今夜の宿はどうしようかなと考えていたら、同乗していたシスターさんが僕に声をかけてきました。


「レオ君、道中私達を守ってくれてありがとうね」

「お礼に今夜は教会の施設に案内したいのだけど、どうかな?」


 道中のお礼も兼ねて、僕を教会の施設に案内してくれるそうです。

 断るのも失礼かなと思って、僕はシスターさんの申し出を受け入れました。

 シスターさんの後をついて行き、この街の教会を目指しました。


「黒髪の天使様、一度ならず二度も教会のシスターを助けて頂き感謝申し上げます。狭い場所ですが、ゆっくりとお休み下さいませ」


 教会に行くと、シスターさんから話を聞いた女性の司祭さんが僕を歓迎してくれました。

 教会の施設で夕食も出してくれて、とっても有り難かったです。

 でも、二日連続で宿に泊まらなくて良いのかなって、ちょっぴり思ったりもしました。

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