第五百二十六話 不安な時はみんなで寝ましょう

 そして、いつもの服に着替えてからギルバートさんと一緒に屋敷に戻ると、慌てた様子のクリスちゃんとマヤちゃん、そしてユキちゃんが僕のところに駆け寄ってきました。


「おにいさま、どこかに行っちゃうのですか?」

「いっちゃうの?」

「アオーン!」


 二人と一匹の後ろから苦笑いを浮かべているモニカさんとターニャさんがいるので、きっと完全に理解できていないみたいですね。

 ウェンディさんとアレックスさんも呼んで、応接室で何があったかを説明することになりました。


「王国と帝国の国境があるサンダーランド辺境伯領で、大規模な軍事衝突が起きた。そのために、少なくない怪我人が発生している。そのために、レオ君を含む治療班が結成されて現地に向かうことになった。あくまで後方支援だから、戦闘が行われているところに直接行くわけではない」


 ギルバートさんの説明を、全員が真剣に聞いていました。

 クリスちゃんとマヤちゃんはまだ深いところまで理解できていないみたいだけど、僕がサンダーランド辺境伯領に行くことだけは理解できたみたいだ。


「もちろん、戦闘がいつ終わるかは不明だ。ただ、長期戦になった場合は交代のものが現地に向かう。レオ君だけでなく、他の兵もそうなるだろうな」

「じゃあ、おにいさまも帰ってくるのね」

「そうだ。サンダーランド辺境伯領に行ったっきりにはならない。レオ君は、王都に帰ってくるよ」


 ギルバートさんが語りかけるように説明すると、クリスちゃんとマヤちゃんもようやく安心しました。

 ただ、本当に今回の衝突がいつ終わるか分からないんだよね。


「早ければ、明日朝には現地に向かうことになるだろう。そればかりは仕方ないな」

「「えー」」


 二人の声の揃ったブーイングに、モニカさんとターニャさんも思わず苦笑しちゃいました。

 でも、二人の気持ちもだいぶ回復したみたいですね。

 そして、ギルバートさんがあることを話したら一気に盛り上がっちゃいました。


「そうそう、レオ君が正式に宮廷魔術師に選ばれた。まあ実力と実績からいったら順当だね。サンダーランド辺境伯領から帰ってきたら、おかえりを兼ねてお祝いをしよう」

「「お祝いする!」」


 ということで、この先の予定まで決まったのでみんなも良い表情になりました。

 夕食もちょっと豪勢なものが出たけど、クリスちゃんとマヤちゃんは寝る前になるとやっぱり不安になっちゃったみたいです。


「おにいさま、一緒に寝よーよ」

「ねるー」

「アオン」


 二人はともかくとして、ユキちゃんは僕と一緒にサンダーランド辺境伯領に行くんだよ。

 ぬいぐるみを持った二人を見てどうしようかと思っていたら、ターニャさんが助け舟を出してくれました。


「今日は、みんなで一緒にねましょう。レオ君もいらっしゃい」

「「わーい」」

「アオン!」


 ということで、ターニャさんの部屋に移動してみんなで寝ることになりました。

 でも、二人と一匹はベッドにもぐり込むとあっという間に寝ちゃいました。


「「「すー、すー」」」

「ふふ、きっとホッとしたら眠くなっちゃったのね。レオ君も明日は早いんだから、ゆっくりと寝てね」


 ターニャさんが僕のことを優しく撫でると、僕も直ぐに眠っちゃいました。

 何だか、これがお母さんって感じなんだね。

 こうして、僕はみんなと一緒に温かいベッドで眠りました。

 明日から大変だけど、一時の安らぎタイムなのかもしれませんね。

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