第百九十六話 コバルトブルーレイクの街に薬師が来る事に
段々と夏に向かっていくある日の事、僕は朝から代官邸にいました。
僕に、報告する事があるそうです。
ちょうど冒険者ギルドにポーションを納品したばかりで、急ぎの用事はありません。
うーん、盗賊団の事は僕達が関わる所は全て決着したし、他に何かあるのかなって思いながら応接室でシロちゃんと一緒に待っていました。
カチャ。
「レオ君、待たせて済まないね。座ってくれ」
少し待つと、シェファードさんが応接室に入ってきました。
お互いにソファーに座って、早速シェファードさんが話し始めました。
「話と言うのは、コバルトブルーレイク直轄領の薬師の事だ。実はこの街に来る薬師が決まったんだよ」
「えっ、本当ですか!」
遂に、コバルトブルーレイク直轄領の薬屋の店主が捕まって以降不在だった薬師が決まったんだね。
「王都にある薬屋の弟子が、結婚して独立する事になったんだ。その夫婦が、コバルトブルーレイク直轄領に来る事になったんだよ」
「夫婦で来るという事は、ずっと街に住んでくれるんですね」
「本人達はそのつもりだ。この街の薬屋を、そのまま使って貰うぞ」
わざわざ王都からコバルトブルーの街に来るんだから、きっと良い人なんだろうね。
「既に王都を出ていて、一週間もかからずにこの街に着く。レオ君も、彼らが街に着く時に私と一緒に立ち会ってくれ」
「分かりました」
用件はこれだけかなと思ったら、更に追加の依頼がありました。
「レオ君には悪いけど、半月位はふたりの様子を見てやってくれ。これは、私からの依頼として処理しておくよ」
「じゃあ、週三で薬屋さんに顔を出しますね」
「それで良いだろう。すまんが、頼むよ」
僕も、二人が早く街に馴染める様に頑張ってお手伝いしないと。
僕もシロちゃんも、拳を握りしめてふんすってやる気になったよ。
シェファードさんからの話はこれで終わりなので、僕は代官邸を後にして薬草採取をしに防壁の門の所までやってきました。
プチプチプチ。
「遂に、薬師がこの街に来るんだね。シロちゃん、一体どんな人がやってくるかな?」
僕はシロちゃんと薬草を集めながら、どんな人が来るかなとちょっとワクワクしていました。
でも、薬屋さんが復活するという事は、僕が新しい街に行くのに懸念していた事が解決するって事だもんね。
ユリアさんとイリアさん達はあと一ヶ月でアマード子爵領に行くみたいだし、もしかしたら僕も同じタイミングで出発するかもね。
ユリアさんとイリアさんとも相談して、色々準備しないと。
そんな事を思いながら、僕は薬草採取を続けました。
「そっか、遂に薬屋も復活するのね」
「レオ君思っている通り、準備は早めにしても問題ないわよ」
その日の夜、早速僕はユリアさんとイリアさんに今後の事を相談しました。
ユリアさんとイリアさん達は、既に少しずつ出発に向けての準備を進めているそうです。
「このコバルトブルーレイク直轄領の周辺で大きい領地が、サンダーランド辺境伯領よ。帝国と国境を接しているわ」
「軍も沢山駐留しているし、治療の依頼は間違いなくあるわ。あと、領都も大きくて、様々な人がいるわよ」
ユリアさんとイリアさんのお勧めってのもあるので、次の目的はサンダーランド辺境伯領で決定だね。
今度ジュンさんやシェファードさんや守備隊長さんに会う時に、色々とお話しようっと。
「因みに、王国と帝国は休戦中だからいざこざは起きていないわ」
「小競り合いくらいはあるだろうけど、その程度だからいきなり戦争が起きる事はないと思うよ」
うーん、人が傷つくのは嫌なんだよね。
僕が盗賊とかを倒す時も、殺さない様に気をつけているし。
人によっては殺しにきているのだから反撃して殺しても文句は言われないという人もいるけど、やっぱり僕は殺すのは嫌だなあ。
戦争が起こらないのが、皆にとっても一番良いよね。
「コバルトブルーレイク直轄領からサンダーランド辺境伯領までは、馬車便で十日はかかるわ」
「流石に野宿する事はないけど、長距離の移動だから準備はしっかりとしないとね」
野宿しないで済むなら、僕は長旅でも全然平気だよ。
でも、今度テントを立てる練習とかもした方が良いかもね。
これでユリアさんとイリアさんとの話は終わったので、僕は部屋に戻りました。
「レオ君も、目的地に旅立つ予定が決まりつつあるのね」
「でも、それまではナナさんとの魔法の訓練は続けますよ」
「ありがとう。私も魔法の本を購入したし、自分で訓練出来る様に頑張るわ」
部屋にいたナナさんにも、僕の今後の予定を伝えました。
ナナさんも今は自分で考えて魔法の訓練をし始めたし、きっと僕がいなくても大丈夫だね。
「私も、師匠に胸を張れる様な魔法使いを目指すわ」
「ナナさんは、もう凄い魔法使いですよ。なんて言ったって、僕の初めての弟子なんですから」
「ふふ、黒髪の魔術師の初めての弟子だなんて、私にも大層な称号が付いたわね」
お互いにちょっとクスクスしたけど、僕はナナさんを一人前の魔法使いにできてホッとしているんだ。
ナナさんともう少しだけお喋りしてから、僕はベッドに潜りました。
新たな目標が出来て、僕も少しワクワクしているよ。
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