第百九十五話 色々な人がピンブローチを買いに来ます

 その後も、たまに僕は店内でピンブローチ作りをしていました。

 すると、若い男性からリクエストを受ける事が何度かありました。

 ピンブローチを買うのは女性が圧倒的に多いんだけど、何故かなって思っていたらジュンさんが理由を教えてくれました。


「実はね、男性が告白をする時にアクセサリーを贈るのが流行っているのよ。高いアクセサリーを贈る人もいるけど、レオ君の作るピンブローチは手頃な値段だから購入しやすいのよ。しかも、リクエストにも応えてくれるから若い男性から注文が入るんだね」


 あっ、そういえば女性をイメージしたリクエストが多かったけど、意中の女性をイメージしたんだね。

 僕の作ったピンブローチで、告白が上手くいけばいいな。

 僕もシロちゃんも、思わずほっこりとなったよ。

 そういう事ならと、僕もシロちゃんも気合を入れてピンブローチを作らないとね。

 ふんすって気合を入れて、今日も頑張ります。


「レオ君、こんにちは」

「頑張っているね」


 と、気合を入れた所で僕に声をかける女性が。

 顔を上げると、ユリアさん達が僕の作ったアクセサリーを手に取りながら僕に話しかけてきました。


「こんにちは、お買い物ですか?」

「そうよ、今日は依頼が早めに終わったからね」

「この商会は何でも揃うし、レオ君もいるかなと思ってきたのよ」


 買い物ついでに、僕に会いに来てくれたんだ。

 すると、ユマさんが興味津々で僕に話しかけてきました。


「確か、リクエストを聞いて作ってくれるんだよね?」

「はい、因みにユマさんはどんな感じが良いですか?」

「明るい感じのが良いな。元気になるやつで」


 いつも元気いっぱいな、明るいユマさんらしいリクエストだね。

 僕とシロちゃんは、ユマさんのリクエストに沿ったピンブローチを作り始めました。

 オレンジ色のビーズとかも使ってみようかな?

 付けると元気が出る様なピンブローチを目指します。


 ポチポチポチ。


 よし、出来た。

 シロちゃんも、出来上がったみたいだね。


「ユマさん、こんな感じでどうですか?」

「わあ、凄い凄い! 二つとも、イメージ通りだよ」


 ユマさんは、出来上がったピンブローチを手に取りながらとっても喜んでいます。

 やっぱり作った物で喜んで貰うって、とっても嬉しいね。

 シロちゃんも、嬉しそうにふるふると震えていました。


「私達もピンブローチを買うわね」

「普通に良い出来だから、どれにしようか迷いますわ」


 ハナさんとナナさんだけでなく、ユリアさんとイリアさんも気に入ったピンブローチを購入してくれました。


「じゃあ、私達は先に宿に帰るわね」

「レオ君、お仕事頑張ってね」

「ありがとうございました」


 僕もシロちゃんも、にっこりしながら皆を見送りました。

 よーし、頑張って続きを作らないと。


 ポチポチポチ。


「あの、すみません……」


 またもや話しかけられたので顔を上げると、僕よりも少し上っぽい女の子が僕の前に立っていました。

 女の子は、何だか迷っている表情をしているね。


「どうしましたか?」

「これで、ピンブローチ買えますか? お母さんの誕生日プレゼントを買いたいの……」


 涙目の女の子が手に持っていたお金は、ちょっと足らない金額でした。

 うーん、どうすれば良いんだろう?

 あっ、こういう時は大人に相談しよう。

 ちょうど、ジュンさんが僕の様子を見にやってきたよ。


「なるほどねー、お母さんにプレゼントを買って上げたいのね」

「うん……」


 とっても不安な女の子に、ジュンさんが優しく話しかけました。

 そしてジュンさんは、僕に向き直りました。


「レオ君、良く確認してくれたね。こういう場合は、未来の投資としてその金額で受けるか、素材を安い物に変えて作るかだね。今日は普通に作って良いわよ」


 ジュンさんは、僕の頭を撫でながら話をしてくれました。

 良かった、ピンブローチを作って良いんだね。

 すると、女の子の目の前でシロちゃんがピンブローチを作り始めました。


「わあ、スライムがピンブローチを作っているよ!」


 不安そうだった女の子の表情が、一気に明るくなりました。

 ここは、シロちゃんにお任せですね。

 シロちゃんは、誕生日プレゼントをイメージしてあっという間にピンブローチを作りました。


「ありがとー!」


 女の子は、ジュンさんに包装して貰ったピンブローチを大事そうに持って帰りました。

 僕もシロちゃんも、女の子に大きく手を振りました。


「ジュンさん、アクセサリーって色々な人が買いにくるんですね」

「そうよ、だから職人も一生懸命アクセサリーを作るのよ」


 今日は色々なお客さんが商会に来たから、とっても勉強になったよ。

 ピンブローチもポーションも、頑張って作ろう。

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