第百九十四話 ピンブローチ作りがレベルアップしたよ

 今日は魔導具修理工房でのお仕事だけど、以前に言われていた商会内でピンブローチを作ります。


「ジュンさん、僕とシロちゃんは何をやれば良いですか?」

「工房ではなく、店内でピンブローチを作っていればいいわ」


 あれ?

 普通にピンブローチを作るなら何で工房で作らないんだろかなと思ったら、ある理由がありました。


「実際にレオ君やシロちゃんが作っているのかと、疑問に思っているお客様がいるのよ。実は別の人が作っていて、名前だけを借りているのではとかね」


 あっ、そうか。

 そもそも僕みたいな子どもがピンブローチを作っているなんて思わない人もいるだろうし、シロちゃんなんてスライムだもんね。

 小さいテーブルとイスも用意してくれているし、早速作業開始です。


「うーん、今日は何をイメージして作ろうかな?」


 直感でささって作るシロちゃんと違って、僕はイメージしながら作るんだよね。

 せっかくだから、コバルトブルーレイクをイメージした物を作ろうと。


 ポチポチポチ。


「おっ、レオじゃないか。何しているんだ?」


 急に声をかけられて顔を上げたら、冒険者のおじさんが不思議そうな顔をして僕の事を見ていたよ。


「こんにちは、今日は店内でピンブローチを作っているんです」

「そっか、前にもアクセサリー作っているって言っていたな。頑張れよ」


 おじさんは僕に手を振ると、目的の物を買う為にお店の奥に入っていきました。

 初めて会った知り合いがおじさんってのも、ちょっと不思議だね。

 さて、続きをやろうっと。


 プチプチプチ。


 今度は、お花をイメージして作ろうっと。


「シロちゃんは、風をイメージしたピンブローチなんだね。わあ、とっても綺麗だね」


 シロちゃんが出来上がったピンブローチを僕に見せてくれたけど、薄い緑色を使ってとっても綺麗なんだ。

 シロちゃんが得意げにピンブローチを見せていると、今度は別の人から声がかかりました。


「わあ、スライムがなにかしている!」


 僕達の所にやってきたのは、僕よりもちょっと小さい綺麗な服を着た男の子でした。

 ピンブローチ作りよりも、シロちゃんに興味津々だね。

 まんまるのお目々を輝かせて、シロちゃんの事を見ているよ。

 シロちゃんは、男の子の前でちょっとした魔法を見せてあげたよ。


「わあ、凄い凄い!」


 魔力の玉を動かしているだけだけど、男の子は手を叩いて喜んでいたよ。

 スライムが魔法を使うのは、とても珍しいからね。


「ああ、ここにいたのね。ほら、こっちにおいて。って、レオ君?」

「はい、僕はレオです」


 とても綺麗な服を着た女性が、男の子を探しながら僕達の所にやってきたよ。

 うーん、どっかで見た事のある女性だね。


「あっ、この前勲章授与式で会った人ですね」

「ええ、そうよ。覚えていてくれてありがとうね。これが、噂のレオ君が作っているピンブローチ、とても良く出来ているわ」

「キレーだよね!」


 女性は、僕とシロちゃんが作ったピンブローチを手にとって褒めてくれました。

 男の子も、ニコニコしながらピンブローチを褒めてくれます。


「レオ君、これは売り物かしら?」

「あっ、はい、そうです。作ったら、アクセサリー売り場に展示しています。値段は、店員さんに聞いて貰えると」

「そう、ありがとうね。早速二つ購入させて貰うわ。お仕事、頑張ってね」

「ばいばーい」


 僕とシロちゃんは、手を振りながら女性と男の子を見送りました。

 早速、購入してくれて良かったね。

 よーし、頑張るよ!


 プチプチプチ。


「あの、すみません」


 おや?

 今度は、若い男性が僕の所にやってきたよ。

 ちょっと悩んでいるみたいだけど、何かあったのかな?


「あの、彼女にピンブローチをプレゼントしたいんだけど、デザインをリクエストしても良いかな?」

「はい、大丈夫です。一生懸命作りますね」

「じゃあ、暖かい優しい感じのピンブローチで」


 彼女さんに贈るピンブローチなら、僕もシロちゃんも頑張って作らないと。

 イメージも教えてくれたから、良く考えて作らないとね。

 えーっと、こうして、あーして、っと。

 出来た!

 シロちゃんも出来たみたいだよ。


「こんな感じで出来ました。どうですか?」

「凄い、二つともイメージ通りのピンブローチだ。ありがとうね」


 男性がとっても喜んでくれて、ホッと胸を撫で下ろしたよ。

 でも、誰かの為に作るのって難しいけど、出来上がると達成感もとってもあるね。

 僕とシロちゃんは、手を振りながら男性を見送りました。

 今回は、とっても良い経験になったね。

 こうして、僕とシロちゃんは夕方までピンブローチ作りを続けていました。


「レオ君、お疲れ様。凄い好評だったね」

「リクエスト通りに作ったりと、とっても勉強になりました」

「ただアクセサリーを作るだけじゃなくて、相手のリクエストを再現するのはとても難しいのよ。販売状況を見ながらだけど、来週も店内で制作して見ましょうね」


 今日はとっても勉強になったなあ。

 ジュンさんみたいに凄いアクセサリーは作れないけど、いつかは使ってみたいなあ。

 僕とシロちゃんは、ちょっとほっこりした気持ちで宿に帰りました。

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