第百九十三話 新たな勲章授与式です

 依頼をこなしながら、勲章の授与式の日になりました。

 冒険者の服装でも良いと言われたけど、僕は前の勲章授与式の服に着替えてユリアさん達も綺麗な服装に着替えました。

 何かあった時用に、持っていたんだって。

 僕達は、宿まで来た代官邸からの馬車にのりこみました。


「うー、緊張してきたよ」

「だね。まさか、この服を直ぐに着る時がきたとは」

「念の為にと用意して、本当に良かったですわ」


 ナナさん達はガチガチに緊張しているけど、僕も昔は偉い人の前だととても緊張していたもんね。

 ユリアさんとイリアさんは前にチャーリーさんにも普通に話をしていたし、緊張していなくて流石だね。

 そして、馬車は代官邸に到着しました。


「あれ? 馬車が沢山停まっているよ?」

「「「えっ!?」」」


 ふと庭を見たら、前回の授与式ほどじゃないけど、それでも沢山の馬車が停まっていました。

 馬車の数を見て、ナナさん達は顔色が悪くなっちゃいました。

 取り敢えず、シェファードさんに話を聞いてみよう。

 僕達は、代官邸の応接室に案内されました。


「急に参加者が増えて悪いね。避暑に来た貴族が、王都で有名なレオ君を是非見たいと集まったんだよ。これでも、かなりの人を断ったんだよ。集まった人は皆良い人だから安心してね」


 シェファードさんは、少し苦笑しながらも人が集まった理由を教えてくれました。

 というか、僕のせいなの?

 これは、何だか色々な人に申し訳ないです。

 しかも、チャーリーさんとクリスちゃんとターニャさんがいた前回の授与式とは違って、知らない人ばっかりだよ。

 うわあ、僕も緊張してきちゃったよ。


「今日は授与式の後は、簡単な立食パーティーになっている。軽食が中心だし、気軽に楽しんでくれ」


 いやいや、気軽にはできないと思うよ。

 流石のユリアさんとイリアさんも、緊張が表情に出ていたよ。


「緊張するのは早めに終わらせよう。では、行くとしよう」


 シェファードさんが苦笑をしながら立ち上がり、僕達も立ち上がりました。

 そして、この前授与式を行った場所に移動しました。


「では、勲章授与式を始める」


 うわあ、会場には沢山の人が集まっていたよ。

 前回よりも少ないって言っているけど、大して変わらない様に感じるよ。

 しかも、既に勲章を貰っている僕が一番前だよ。

 シロちゃんが僕の頭の上に乗っているけど、だ、大丈夫かな?


「では、大規模な盗賊団に襲われた村を救い、更には怪我人の治療も行った五人へ勲章を授与する」


 パチパチパチ。


 僕達に順番に勲章が付けられると、会場から拍手が起こりました。

 これで終わりには、何故かなりません。


「続いて、賞金と共に勲章もかけられていたかまいたちのゼンを単独撃破したレオ君に、勲章を授与する」


 パチパチパチ。


 あのおばあさんには、賞金とは別に勲章もかけられていたんだって。

 だから、僕には別の勲章が与えられるんだって。

 これで、勲章が四つになっちゃったよ。

 服が勲章だらけになっちゃった。


「これで勲章授与式を終了する。この後、授与者を囲みながら軽食を楽しんでくれ」


 あっ、あっという間に勲章授与式が終わっちゃったよ。

 誰と話せば良いかと思ったら、シェファードさんが話しかけてきたよ。


「今回は、村を救ってくれてありがとう。偽依頼がどうだか言われているが、元は村の治安を守れなかった私の責任でもある。本当に助かった」


 シェファードさんは、僕達に感謝すると共に謝罪してきました。

 コバルトブルーレイク直轄領の責任者だから、責任を感じているんだね。


「殆ど知らない人ばかりだと思うから、私が皆の案内をしよう」


 そして、シェファードさんがアテンドまでしてくれるそうで、とっても助かります。

 前の勲章授与式の時は、シェファードさんに加えてチャーリーさんも案内をしてくれたもんね。

 ちょっとホッとしながら、僕達は来賓と挨拶しました。

 そんな中、知り合いの人と出会いました。


「レオ君、お久しぶりね。勲章授与、おめでとう」

「あっ、フランソワーズ男爵夫人様、ありがとうございます」


 商会で出会って僕の作ったピンブローチを買ってくれたフランソワーズ男爵夫人が、勲章授与式に参加していました。

 ニコニコと僕に笑顔を向けてくれて、胸元には僕が作ったピンブローチがありました。


「あっ、僕の作ったピンブローチをつけてくれたんですね。とっても嬉しいです」

「折角のレオ君の晴れ舞台だから、勿論着けてこないとね」


 フランソワーズ男爵夫人が僕の作ったピンブローチを撫でていると、他の女性もフランソワーズ男爵夫人の所に集まってきたよ。


「黒髪の天使様がピンブローチを作っていると噂になっていたけど、本当でしたのね」

「良く出来ていますわ。普通にパーティーで着ける事ができますわね」


 他の女性も、僕の作ったピンブローチを褒めてくれたよ。

 お陰で、和やかな雰囲気になったね。


「レオ君がアクセサリーを作っているのは知っていたけど、こんなにも綺麗なピンブローチを作っているんだね」

「まだ、ピンブローチしかできないですよ。今度、皆さんにプレゼントします」

「とっても嬉しいけど、お客さんとして買うのも楽しみなのよ。でも、ありがとうね」


 ユリアさんとイリアさんにも言ったけど、ピンブローチを作ってプレゼントしたいな。

 こうして、勲章授与式も何とか終わったよ。

 普通の冒険者生活に戻って、頑張らないとね。

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