第百九十二話 またまた勲章を貰う事になりました

 事件から一週間が経ったある日、僕達は守備隊の施設にいました。

 村であった事件の事で、報告があるそうです。


「忙しい所、来てもらって悪かったね。直ぐに終えるから」


 守備隊長さんが手短に話すと言うので、僕達はこの後依頼を入れています。

 僕はポーション作りだけどね。


「盗賊の供述から、盗賊団のアジトも抑えた。かまいたちのゼンが魔法袋を持っていて主な物はその中に入っていたが、他にも沢山の金品が出てきた。どのくらいの資産があるかはまだ計算中だが、君達から言われた被害者救済に先に充てさせて貰うよ。国とも協議をして、色々と決めていくよ」


 やっぱりあのおばあさんの護送される際の態度が効いて、盗賊は素直に自供したそうです。

 盗賊団によって被害を受けた人も多いので、僕達は盗賊が集めた資産は被害者救済に使ってくれと守備隊長さんに言っていました。

 これは、全員で決めた事です。


「それとは別に、盗賊団にかけられていた懸賞金は君達に支払う。分け前については、レオ君が一番多くなるけど問題ないか?」

「実際にレオ君がいなければ、私達では対応できなかったです」

「一番活躍した人に分配するのは、基本中の基本ですから」


 僕としてはユリアさんとイリアさんの功績もとても大きいと思ったけど、二人は頑として譲らなかったんだ。

 村人を治療したシロちゃんの分け前もあるので、シロちゃん専用のお金入れに入れておきます。


「また、代官から勲章を授かる事になった。授与式は来週だが、今回は関係者は少ないから気楽にして欲しい。服装も今着ているもので良いだろう」


 盗賊団を捕まえて村を救った功績は、とても大きいんだって。

 流石に断るのもおかしいので、勲章を貰う事にしました。

 うーん、僕はこの街にきてから一気に勲章が増えてきちゃったなあ。


「取り敢えず、これで終わりだね。ああ、一番重要なのを伝え忘れた。あの盗賊団は今回の件がなくても、過去の犯罪で既に死刑が決まっているんだ。捜査が続いているから、死刑執行はまだ先だけどね」


 護送される際に、おばあさんは既に死刑を覚悟していたんだよね。

 だから、僕に色々と話をしたんだね。

 被害にあった人が沢山いるから死刑を止めてくれなんて言えないし、僕にはそれを言う資格もないもんね。

 悪い事はしちゃ駄目って、改めて実感したよ。

 話し合いはこれで終わったので、僕達はそれぞれの仕事に向かいました。

 僕は、宿に戻ってポーション作りです。


「はあ、色々あり過ぎて疲れてしまいましたわ」


 夜になって寝る時に、僕はナナさんと少し雑談していました。

 ナナさんは、盗賊団を捕まえてから自分が置かれている環境が変わってお疲れ気味です。

 シロちゃんは、既にベッドに入って寝ています。


「ナナさん達をスカウトしたい冒険者も沢山いましたね」

「私達はまだ初心者の枠を出ていないので、ユリアさんとイリアさんの下を離れる気はありませんわ。お金も、キチンと貯めておきますわ」


 ナナさん達に声をかけている冒険者は、殆どがナナさん達が手にした大金目当ての冒険者です。

 だから全て誘いは断っているし、しつこいと通報もしていました。

 時間が経って落ち着かないと、しつこい人は出てくるよね。


「僕の場合は、他の人の勧めもあってアマード子爵領に行っちゃいました。ナナさん達も、場合によっては他の所に移動するのも手だと思いますよ」

「実は夏のハイシーズンが終わったら、直ぐにアマード子爵領に行こうと思っているの。ユリアさんとイリアさんも、早めに動いた方が良いと言っていましたわ」


 実質、あと三ヶ月程で移動する事を検討しているそうです。

 今やっている別荘の仕事はキチンとするそうで、依頼主からも感謝されているそうです。


「僕は次は別の街に向かう予定ですけど、薬師がいつ来るかによって出発の時期がずれそうです」

「レオ君の場合は殆ど指名依頼みたいですから、仕方ない所もありそうですわね。既に凄腕の魔法使いだけありますわ」


 薬師が決まらなくてもポーションを購入すれば良いってシェファードさんは言ってくれたけど、この街は人口も多いし薬師がいた方がいいよね。

 こればっかりは僕一人だけじゃ解決できない事だし、どうしようもないもんね。


「さあ、明日も早いからそろそろ寝ましょう」

「そうですね。ナナさん、おやすみなさい」

「おやすみ、レオ君」


 僕は、ナナさんに挨拶をしてからベッドに潜り込みました。

 中々世の中上手くいかないね。

 そんな事を思いながら、僕は眠りにつきました。

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