第四百七話 驚きが止まらないオーガスタさん

 翌朝、僕はオーガスタさんと一緒に魔法の訓練をする事になりました。

 魔力循環とかは何も問題なかったんだけど、魔法剣を使った形をするとオーガスタさんの表情が驚愕のものに変わった。


「えい、やあ!」

「こ、これはとんでもない事をしていますよ……」

「だろうな。私から見ても、とんでもないと思います」


 魔法剣を発動させるのも大変なんだけど、更に剣の形をするのもすごいらしいです。

 そしてバッツさんに言われた通り、相手を意識して剣も振るいます。

 更に飛行魔法の訓練をすると、オーガスタさんは信じられないものを見たという表情に変わりました。


 ヒューン、ヒューン。


「し、信じられない。飛行魔法は失われた魔法とも言われているのに。兄は無謀な戦いを挑んだのか……」


 やっぱり飛行魔法は、本当にレアな魔法らしいです。

 でも、僕がコバルトブルーレイク直轄領にいた時は、飛行魔法は使えなかったんだよね。

 こうして朝の訓練をして、僕はオーガスタさんと共に馬車に乗って軍の施設に向かいました。

 最初は、マイスター師団長さんの執務室に向かいます。


「優秀な治癒師が来てくれて、私としてもとても助かるよ」


 マイスター師団長さんがオーガスタさんを握手をしながら出迎えてくれたけど、オーガスタさんは少し複雑な表情をしていた。

 何かあったのかな?


「その、レオ君の朝の訓練を見たのですが、魔法使いとしての自信がことごとく打ち砕かれました……」

「ああ、うん、その気持ちはよく分かる。レオ君は参考外にしてくれ。気持ちが持たなくなるぞ」


 あの、その言い方は流石に僕も傷つくんですけど。

 僕は、そんな化け物みたいな存在ではないですよ。

 僕とシロちゃんの抗議は華麗にスルーされて、さっそくコレットさんと共に治療施設に行くことにしました。

 今日はスカラさんも治療施設にいるそうで、一緒に治療を教えてくれるそうです。


「スカラさん、以前兄が大変ご迷惑をおかけしました」

「わざわざありがとうね。もう部隊のメンバーは大丈夫だからね」


 オーガスタさんは、兄と同じ部隊だったスカラさんにも謝罪をしていました。

 スカラさんも以前あった時よりもずっと強くなっていたので、笑顔で対応していました。

 ではでは、さっそく治療を行いましょう。

 まずは、大部屋で僕がどんな治療をしているのか見てもらいます。


 シュイーン、ぴかー。


「これで、腕の骨折は良くなりましたよ。お大事にして下さい」

「流石は黒髪の魔術師だな。こうもあっさりと骨折を治すとは」


 大部屋に入院している人は相変わらず骨折している人が多いので、僕やシロちゃん、それにユキちゃんでも問題なく対応できます。

 スカラさんも、このくらいの怪我だったら余裕で対応できると思うけどなあ。


「レオ君が、入院患者とにこやかに対応しているのがとても好印象です。兵の心も癒しているみたいですね」

「良い所に気が付いたね。レオ君は各地で治療を経験しているから、沢山の人と接している。その経験もあるのでしょう」


 オーガスタさんの感想に、スカラさんが意見を付け加えていました。

 僕も、前は治療時にここまでゆっくりお話する事はなかったよ。

 それに、急いで治療する場面じゃないもんね。

 ではでは、今度は個室に移動します。

 殆どの人はスカラさんでも対応できるけど、一人だけ右手の指を失った人が入院しているそうです。


「しかし、指を失った人の対応なんて、一体どうすれば良いのですか?」

「ふふふ、見てみなさい。凄い物が見れるわよ」


 個室に移動したオーガスタさんは、何が起こるのか全く分からなかった。

 でも、何が起こるのかを知っているスカラさんは、ちょっとワクワクした表情を見せていた。

 じゃあ、さっそく治療を開始しましょう。


 シュイン、シュイン、シュイン、ぴかー!


「な、何という魔力なのか!」

「うーん、やっぱりレオ君の魔力は凄いわね」


 僕とシロちゃんが魔力を溜めて魔法を放つと、個室の中が眩しく輝きました。

 指三本の再生だから、そんなに魔力は使っていないんだけどね。

 手応えはバッチリだし、目の前にも良い結果が起きていました。


「す、凄い。指が再生している……」

「回復魔法と聖魔法の特性を組み合わせているのよ。今は魔力の大きいレオ君とシロちゃんしかできないけど、理論的には他の人でも可能だから軍の治療部隊でも研究をしているわ」

「は、はあ……」


 オーガスタさんは、僕とシロちゃんが入院患者の指を再生した事に加えて、この治療方法を軍でも研究していると聞いて思わず唖然としていました。

 理論的には、魔力の特性が分かればそんなに難しい事じゃないんだよね。

 こうして、午前中はみんなで手分けをして治療を進めていました。

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